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社会・文化人類学における中国研究の理論的定位――12のテーマをめぐる再検討と再評価

研究期間:2019.10-2022.3

河合洋尚

キーワード

中国研究、人類学理論、学説史

目的

中国社会を対象とする人類学的研究は20世紀前半より本格的にはじまり、日本、欧米、中国国内の研究者によりさまざまな研究が展開されてきた。早期には「未開」社会とは異なる複合社会の研究を推進する舞台として期待され、1960年代になるとアフリカ研究との比較の対象として民族誌が著された。ところが、その後の中国研究は「独自」の路線で議論を進めるようになったため、同じ東アジア研究ですら対話が難しくなり、人類学において半ば「孤立」した立ち位置に置かれるようになっている。だが、中国をめぐる人類学的研究を振り返ると、国家‐社会関係論、ポリティカル・エコノミー論、個‐全体論、存在論など、現代人類学の先駆けともいえる議論が早期から展開されてきたことに気づかされる。本研究は、中国研究で多くの蓄積がなされてきた12のテーマ(親族、ジェンダー、コミュニティ、エスニシティ、宗教、風水、生態、食、芸術、観光、メディア、都市)をとりあげ、その理論史を整理することで、人類学一般の理論と対話をなすことを目的とする。

2021年度

中国を対象として展開されてきた個別の研究テーマをとりあげ、議論する。新型コロナウィルス感染拡大の関係で昨年度に扱えなかったトピックも含め、今年度は、コミュニティ、芸能、医療、食、環境、芸術、ジェンダー、国内外移動、メディア、博物館などを扱う予定である。また、本年度は最終年度であるため、これまでの発表内容を総括し、中国社会を対象とする人類学的研究を現代人類学理論のなかでいかに位置づけなおすことができるのか総合的に討論する。現段階では、早期から着手されてきた国家‐社会関係論、歴史研究、存在論的視点、そして文明論などをとりあげ、中国の人類学的研究を再評価する予定でいる。さらに、これらの議論や再評価を通し、今後の成果公開に関する具体的な方針を立てる。

【館内研究員】 韓敏、奈良雅史
【館外研究員】 阿部朋恒、稲澤努、川口幸大、川瀬由高、小林宏至、櫻田涼子、田中孝枝、中生勝美、丹羽朋子、藤野陽平、堀江未央、横田浩一、周星、清水拓野、伏木香織、磯部美里
研究会
2021年9月11日(土)10:00~18:00(ウェブ開催)
川瀬由高(江戸川大学)「中国民族誌学とコミュニティ論」(仮)
コメンテーター:塚原伸治(茨城大学)
清水拓野(関西国際大学)「中国戯劇の人類学的研究と中国戯劇人類学」(仮)
コメンテーター:西尾久美子(近畿大学)
磯部美里(国際ファッション専門職大学)「中国の医療人類学に関する研究動向――民族医学を中心に」(仮)
総合討論 今後の見通しなど


2020年度

中国を対象として展開されてきた個別の研究テーマをとりあげ、議論する。今年度は、親族、エスニシティ、宗教、風水、コミュニティ、観光など、相対的に研究の歴史が長く蓄積が多いテーマから着手していく。具体的には、まず、各テーマの担当者が、日本語・中国語・英語で蓄積された先行研究のレビューをし、どのような理論・視点・方法論が提示されてきたのかを口頭発表する。その後、研究地域や研究テーマが異なる研究者がコメントをし、各時代における人類学一般の理論との対比においていかなる理論・方法論上の意義もしくは新しさがあったかを議論する。特にポストモダン人類学や存在論人類学と類似する視点が中国研究でいつ頃からどのように提示されているのか、もしくは人類学一般ではあまりみられない「独自」の理論・方法をどのように再解釈するのかを、議論の焦点の一つとする。

【館内研究員】 韓敏、奈良雅史
【館外研究員】 阿部朋恒、稲澤努、川口幸大、川瀬由高、小林宏至、櫻田涼子、田中孝枝、中生勝美、丹羽朋子、藤野陽平、堀江未央、横田浩一、周星、清水拓野、伏木香織、磯部美里、大石侑香
研究会
2020年10月31日(土)14:00~18:30(国立民族学博物館 第4セミナー室 ウェブ会議併用)
趣旨説明&新規自己紹介
稲澤努(尚絅学院大学)「中国の『民族』とエスニックグループをめぐる研究動向」
コメンテーター:大石侑香(神戸大学)
川口幸大(東北大学)「親族」
コメンテーター:松尾瑞穂(国立民族学博物館)
2020年11月1日(日)10:00~16:00(国立民族学博物館 第4セミナー室 ウェブ会議併用)
奈良雅史(国立民族学博物館)「中国における宗教の人類学:成立宗教を中心とした研究動向」
コメンテーター:片岡樹(京都大学)
横田浩一(国立民族学博物館)「中国民俗宗教研究の動向」
コメンテーター:片岡樹(京都大学)
2020年12月12日(土)14:00~18:15(ウェブ会議)
周星(神奈川大学)「中国の文化遺産に関する人類学的研究」
コメンテーター:黄潔(愛知大学)
伏木香織(大正大学)「音楽人類学と民族音楽学」
2020年12月13日(日)10:00~15:30(ウェブ会議)
田中孝枝(多摩大学)「中国における観光の人類学の研究動向」
コメンテーター:山下晋司(東京大学名誉教授)
小林宏至(山口大学)「文化人類学と風水研究」
コメンテーター:中野麻衣子(東洋英和女学院大学)
総合討論
研究成果

2020年度は、中国を対象とする人類学的研究(以降、中国民族誌と表記)のうち、宗教、風水、観光、文化遺産、音楽という5つのトピックをとりあげ、その研究動向を示すとともに、それらの理論的意義について議論を展開した。5つのトピックのうち、宗教、風水、観光をめぐるレビューは、これまでも日本語、中国語または英語でなされている。ただし、発表担当者は、人類学理論一般との対話に焦点を当てることで、従来とは異なる角度からこれらの研究動向を再検討した。それに対して、文化遺産と音楽については、これまで断片的な紹介にとどまっており、全体像が描かれることが少なかった。したがって、この2トピックの研究動向の整理は、それ自体が新しさをもつものであった。これらのトピックの紹介と再検討を通して、中国民族誌学は早くから歴史や政治経済を視野に入れた研究を展開していたことを、改めて確認することができた。また、国・地域によって研究姿勢に若干の違いがみられ、一部は応用人類学的な思考を強くもっていることも、再確認した。さらには、風水研究の一部に存在論人類学の先駆けと思われる議論があるなど、中国民族誌学の理論的意義を新たに見出すことができた。

2019年度

本研究は、2年半の計画でおこなう。12のテーマを担当するのは、各々のテーマを専門とする人類学者であり、それぞれ次の2点に留意した研究発表をおこなう。第一に、各テーマにおける主要な議論・論争を軸とし、日本語・中国語・英語で刊行された文献の学説史をまとめること、第二に、その学説史を中国研究以外の関連文献と比較・検討し、各時代に応じた議論の意義と重要性を発見すること、である。後者はとりわけ1990年代以降の人類学の動向を意識し、複合社会研究としての中国研究でどのような理論・視点・方法論が提示されてきたのかを議論する。さらに、各々のテーマを個別化することなく全体的に捉えるため、中国の人類学的研究をめぐる通史、及び全てのテーマにかかわる総括の発表を入れる。これらを考慮して、研究会は毎回2日連続(実質的に年4回)の開催とし、以下のスケジュールで進める。

2019年度:[第1回]趣旨説明と全体の指針の提示(河合)、中国人類学の歩みと背景(中生)、都市・景観人類学(河合)。

【館内研究員】 韓敏、奈良雅史
【館外研究員】 阿部朋恒、稲澤努、川口幸大、川瀬由高、小林宏至、櫻田涼子、田中孝枝、中生勝美、丹羽朋子、藤野陽平、堀江未央、横田浩一
研究会
2019年11月30日(土)14:00~18:00(国立民族学博物館 第1演習室)
河合洋尚(国立民族学博物館)「趣旨説明」
参加者全員「共同研究員自己紹介・研究計画」
2019年12月1日(日)10:00~15:00(国立民族学博物館 第1演習室)
中生勝美(桜美林大学)「中国の人類学展望――学史と現状から」
河合洋尚(国立民族学博物館)「中国都市の人類学――都市性と都市景観をめぐる研究動向」