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時空間を融合する:GISと数理モデルを用いた新たな言語変化へのアプローチ(2018-2023)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))

菊澤律子

目的・内容

フィジー語諸方言の大規模データ(約300方言、約5800語)を対象とし、言語の時間的な変化と空間的な伝播との関係を解明する。また、その結果と非言語情報(地形や地点間の移動距離など)との相関を検証し、言語変化をヒトの移動やモノのやりとりなどの人間の活動と関連付けて包括的にとらえる。
フィジー語諸方言の発達史としては、時系列変化を反映する直線的な分岐モデルと空間拡散を反映する方言鎖の存在が提唱されているが、これらを比較し統合する手法はない。ここでは、地理上の位置を言語変化の交叉点とみなし、地理情報システム(GIS)を用いて時空間の両側面を関連付け、具体的な発達過程を解明する。研究を進める中で方法論を確立し、他言語データへの応用を目指す。データの解釈、GIS応用のためには、南太平洋大学(フィジー)とマシー大学(ニュージーランド)と協業、言語学、統計学、地理学、文化人類学のチームで研究を進める。

活動内容

2023年度実施計画

2022年度事業継続中

2022年度活動報告(研究実績の概要)

本研究では、フィジー語300方言を対象に、言語の時間的な変化と空間的な伝播との関係を明らかにする手法に関する研究をツール開発と併行して進めている。
本年度の実績は以下の通り。
1) 完成した一般公開用ウェブシステムのプロトタイプのデータの正確性に関する検証を済ませた。 2) 完成版を利用した手法開発の可能性について検討し、そのための準備を進めた。 3) 手書き地図データ約5800語分(ジオリファレンス作業終了)のデータを1) と統合する作業を開始した。現在100件程度入力済みである。4) 3) のデータに基づく分析方法について検討し、入力の優先順位と進行方法を確定した。 5) 関連する他機関の科研プロジェクトとの協働に関する議論を開始した。

2022年度活動報告(現在までの進捗状況)

コロナの影響で海外との対面ミーティングや現地調査によるデータ追加が不可能になった部分が停滞している。また、そのため後ろ倒しとなったことで、別事業との時期が重なったことから、想定より速いスピードで進めることも不可能となっている。ただし、各自の単独レベルで進められる研究やデータ整備については、期間中もできる範囲で進めている。

2021年度活動報告(研究実績の概要)

本研究では、フィジー語300方言を対象に、言語の時間的な変化と空間的な伝播との関係を明らかにする手法に関する研究をツール開発と併行して進めている。
今年度の成果は以下の通り。
1) 南太平洋大学(フィジー)とマシー大学(ニュージーランド)の研究者との協働により完成した、ブラウザを用いた言語分析用研究ツール、および般公開用
のウェブシステムのプロトタイプを整備し、地理情報を完成させた。
2) 手書き地図データ約5800語分(ジオリファレンス作業終了)のデータを1) のデータベースとの関連付ける手法を具体化して、作業を開始した。
3) 地理情報の完成を受けて、100語リストの言語データの要確認情報を整理した。

2021年度活動報告(現在までの進捗状況)

・対面での打合せができなくなったため、オンラインでの共同作業に慣れていないメンバーの貢献が難しくなった。
・コロナの影響により現地調査ができなかったため、全体と並行してすすめるはずだったデータの取得が2年間、停滞している。
・関連する他の複数の(コロナの影響による)研究事業変更が重なったため、代表者を含む主要メンバーの時間を割り振りが難しくなった。

2020年度活動報告(研究実績の概要)

本研究では、フィジー語300方言を対象に、言語の時間的な変化と空間的な伝播との関係を明らかにする手法に関する研究を、そのためのツール開発と併行して進めている。今年度の成果は以下の通り。
1) 南太平洋大学(フィジー)とマシー大学(ニュージーランド)の研究者との協働により、ブラウザを用いた言語分析用研究ツール、および般公開用のウェブシステムのプロトタイプを完成した。
2) フィジー語方言のデータ整備を進め、100語、300地点のデータベースの問題点の修正を進めた。
3)手書き地図データ約5800語分(ジオリファレンス作業終了)のデータを1) のデータベースとの関連付ける手法についての検討し、作業を進める準備を終えた。

2020年度活動報告(現在までの進捗状況)

システム開発や論理分析については予定を先取りして進んでいたが、予備分析を進める中でデータの整合性が当初の評価より低く、分析ツールとしての精度をあげるためには追加の言語データが必要であることが判明した。この作業を2020年度に現地調査を含めて進める予定でいたが、コロナ禍のため、手元でできるデータ整理に切り替え、進めている。

2019年度活動報告(研究実績の概要)

本研究では、フィジー語300方言を対象に、言語の時間的な変化と空間的な伝播との関係を明らかにする手法に関する研究を、そのためのツール開発と併行して進めている。今年度の成果は以下の通り。
1) 南太平洋大学(フィジー)とマシー大学(ニュージーランド)の研究者との協働により、ブラウザを用いた言語分析用研究ツール、および般公開用のウェブシステムのプロトタイプを完成した。https://svcs-glegis.maps.arcgis.com/apps/webappviewer/index.html?id=3f82a75b09e140e3a48a8bffda24d22b
2) 昨年度に作成したフィジー語方言のデータ整備を進め、100語、300地点のデータベースの充実させ、問題点の検証を行った。
3)手書き地図データ約5800語分のジオリファレンス作業を終了した。またジオリファレンス済みのデータをどのように1) のデータベースとの関連付ける手法についての検討し、作業を進める段取りを行った。
4) ニュージーランド・マシー大学で国際シンポジウムおよびワークショップ「Fijian Languages Symposium」を開催した。
詳細 https://www.minpaku.ac.jp/research/activity/news/rm/20200131

2019年度活動報告(現在までの進捗状況)

システム開発や論理分析については予定を先取りして進んでいる。ただし、予備分析を進める中でデータの整合性が当初の評価より低く、分析ツールとしての精度をあげるためには追加の言語データが必要であることが判明した。この作業を組み入れて計画を練り直し、2019年度末から2020年度初頭において、フィジーべの渡航も含めて進める計画になっていた。また、手書きマップ読み込み作業を年度末に進める予定で資金を確保していたが、いずれも、コロナの影響で先の見通 しがたてにくい状況となっている。

2018年度の活動報告

本研究では、フィジー語300方言を対象に、言語の時間的な変化と空間的な伝播との関係を明らかにする手法に関する研究を、そのためのツール開発と併行して進めている。初年度の成果は以下の通り。
1) 南太平洋大学(フィジー)とマシー大学(ニュージーランド)の研究者との協働により、ツール開発研究の第一段階をほぼ終了した。具体的には、フィジー語方言のデータ整備を進め、100語、300地点のデータベースを作成した。また、ブラウザを用いた言語分析用研究ツール、および般公開用のウェブシステムの開発について、仕様を検討し、来年度末までのプロトタイプ作成の仕様を固めた。2)手書き地図データ約5800語分のジオリファレンス作業を始め、2分の1終了した。またジオリファレンス済みのデータをどのように1) のデータベースとの関連付ける手法についての検討を始めた。3) フィジーでの国際シンポジウム「フィジーの諸言語と地図:フィジー語GIS(地理情報システム)プロジェクト中間報告シンポジウム」およびサテライト・ワークショップを開催した。
詳細 http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/news/rm/20190326
これには、フィジー文化経済社会信託機構にて言語データ分析に関する研究会・見学会・機構スタッフとの学術交流(2019年3月25日)、南太平洋大学言語学科にて国際シンポジウムを開催(2019年3月26日)、南太平洋大学地理学科にて地理情報分析に関する研究会開催(2019年3月27日)を含む。