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日本手話言語の変質に関する研究 (2018-2023)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|挑戦的研究(萌芽)

川口聖

◆ 2019年4月より転入

目的・内容

本研究は、危機・少数言語としての日本手話言語の保護の必要性に焦点を当てることで、これまで日本手話言語はどのように変質されてきたかを把握し、その実態を明らかにすることを目的としている。具体的には、現代の日本は、自然言語としての日本手話言語(音声日本語とは異なる文法体系を持つ手話言語)と人工言語としての手指日本語(日本語の文法に合わせた手話、日本語対応手話とも言う)の二言語が両存しているが、様々なコミュニティの形態それぞれにおいて二言語がどのように使い分けられているかを明らかにする。さらに、これまでの手話に関わる言語政策の変容によって、日本手話言語にどのような影響をもたらしてきたかを数値化することで、日本手話言語の変質を明らかにする。

活動内容

2023年度実施計画

2022年度事業継続中

2022年度活動報告(研究実績の概要)

1.いわゆる「日本手話」と「手指日本語(日本語対応手話)」との違いについて、規範文法により、言語学的な説明ができないと結論付けた。日本のろう社会で自然発生した手話言語、記述文法としての「日本手話言語」は、手話禁止のろう教育が長く続いたとか、きこえる人の手話使用が増えたなどの歴史的かつ社会的背景により、日本語の影響を受けながら変質している。その実態を明示化するための新しい分類手法があると、学会発表した。
2.手話使用インフォーマント探しと古くからある手話映像データ集めについて、大阪市聴言障害者協会の伝統的手話保存活動チームの協力をいただきながら、何度か企画を立ててすすめる予定であったが、コロナ禍による影響で、チームメンバーが集まらないとか、会議室が使えないなど、計画通りにすすめることはできなかった。
3.手話言語学に関するワークショップを企画した。対面会議形式で何度か開催する予定だったが、コロナ禍のため、オンライン会議形式に切り替えて複数回開催することができた。また、所属学会で研究会を設立して、対面会議形式で一度開催し、意見や情報交換することができた。こうして、全国から参加者が集まり、手話言語学に関する様々な意見や情報などを伺うことができ、知見を深めた。
4.手話言語学研究に関する、国際的なワークショップや国際学会に参加する予定があったが、コロナ禍のため、中止延期になったとか、オンライン形式に切り替えて、講演のみの開催になるところが多くなった。こうして、国内の手話学会参加のみになり、そこで自分の研究を発表するとともに、手話言語学研究の最新動向などの知見を深めた。

2022年度活動報告(現在までの進捗状況)

1.手話使用インフォーマント探しに、思ったより時間がかかっている。これまでは対面形式による調査がほとんどだったが、コロナ禍により、対面形式ができなくなり、代替手法としてのオンライン形式による調査を模索した。しかし、オンライン形式に慣れていない、ろう者が思ったより多くいるため、想定以上の時間が要することがわかった。
2.古くからある手話映像データ集めに、そのデータが入っている媒体としてはVHSテープや8㎜テープが多く、それを再生するVHSビデオデッキがほとんどの電機メーカーでは生産中止になっているため、デジタルデータに変換する作業も必要になっている。また、手話映像データとして残していただいた、手話使用インフォーマントの承諾を得るのに、コロナ禍により、対面形式ができないためもあって、多くの時間を要している。
3.アノテーション協力者探しに、想定以上に時間がかかっている。ろう教育などの歴史的かつ社会的背景により、手話は言語であると気付いていない、手話は日本語を補助するためにあると思い込んでいるろう者が多いため、その彼らに、手話は言語であると理解させるとともに、手話言語を科学的に分析する意義を理解させるのに、多くの時間を要している。可聴者(きこえる人)の中から集う方法を考えられたが、国際的な手話言語学研究倫理により、ろう者主体の研究調査活動としてすすめる重要性に合わせるためにもある。
4.手話言語学に関する国際的な会合での情報収集は、コロナ禍の影響により、満足できるほどまでできなかった。国内で、オンライン形式のワークショップ参加者の意見や情報交換などにより、日本の手話言語に関する定義の見直しにおいて進展が見られた。

2021年度活動報告(研究実績の概要)

1.いわゆる「日本手話」と「手指日本語(日本語対応手話)」との違いについて、規範文法により、言語学的な説明ができないと結論付けた。日本のろう社会で自然発生した手話言語、記述文法としての「日本手話言語」は、手話禁止のろう教育が長く続いたとか、きこえる人の手話使用が増えたなどの社会的背景により、日本語の影響を受けながら変質している。その実態を明示化するための新しい分類手法があると、学会発表した。
2.手話使用インフォーマント探しと古くからある手話映像データ集めについて、大阪市聴言障害者協会の伝統的手話保存活動チームの協力をいただきながら、何度か企画を立ててすすめる予定であったが、コロナ禍による影響で、チームメンバーが集まらないとか、会議室が使えないなど、計画通りにすすめることはできなかった。
3.手話言語学に関するワークショップを企画した。対面会議形式で何度か開催する予定だったが、コロナ禍のため、オンライン会議形式に切り替えて7回開催することができた。また、所属学会で研究会を設立して、対面会議形式で一度開催し、意見交換することができた。こうして、全国から参加者が集まり、手話言語学に関する様々な意見などを伺うことができ、知見を深めた。
4.手話言語学研究に関する、国際的なワークショップや国際学会に参加する予定があったが、コロナ禍のため、中止延期になったとか、オンライン形式に切り替えて、講演のみの開催になるところが多くなった。こうして、国内の手話学会参加のみになり、そこで自分の研究を発表するとともに、手話言語学研究の最新動向などの知見を深めた。

2021年度活動報告(現在までの進捗状況)

1.手話使用インフォーマント探しに、思ったより時間がかかっている。これまでは対面形式による調査がほとんどだったが、コロナ禍により、対面形式ができなくなり、代替手法としてのオンライン形式による調査を模索した。しかし、オンライン形式に慣れていない、ろう者が思ったより多くいるため、想定以上の時間が要することがわかった。
2.古くからある手話映像データ集めに、そのデータが入っている媒体としてはVHSテープや8㎜テープが多く、それを再生するVHSビデオデッキがほとんどの電機メーカーでは生産中止になっているため、デジタルデータに変換する作業も必要になっている。また、手話映像データとして残していただいた、手話使用インフォーマントの承諾を得るのに、コロナ禍により、対面形式ができないためもあって、多くの時間を要している。
3.アノテーション協力者探しに、想定以上に時間がかかっている。聾教育などの社会的背景により、手話は言語であると気付いていない、手話は日本語を補助するためにあると思い込んでいる聾者が多いため、その彼らに、手話は言語であると理解させるとともに、手話言語を科学的に分析する意義を理解させるのに、多くの時間を要している。可聴者(きこえる人)の中から集う方法を考えられたが、国際的な手話言語学研究倫理により、聾者主体の研究調査活動としてすすめる重要性に合わせるためにもある。
4.手話言語学に関する国際的な会合での情報収集は、コロナ禍の影響により、満足できるほどまでできなかった。国内で、オンライン形式のワークショップ参加者の意見交換などにより、日本の手話言語に関する定義の見直しにおいて進展が見られた。

2020年度活動報告(研究実績の概要)

1.いわゆる「日本手話」と「手指日本語(日本語対応手話)」との違いについて、これまで示唆することがあっても、言語学的な説明がほとんどなされていなかった。そこで、手話禁止のろう教育が長く続いたとか、きこえる人の手話使用が増えたなどの社会的背景により、日本語の影響を受けて変質していることを注目して、その例を明示しながら、日本のろう社会で自然発生した自然言語、いわゆる「日本手話言語」として新しい分類手法があると、学会発表した。
2.手話使用インフォーマント探しと古くからある手話映像データ集めについて、大阪市聴言障害者協会の伝統的手話保存活動チームの協力をいただきながら、何度か企画を立ててすすめる予定であったが、チームメンバーが集まらないとか、会議室が使えないなど、コロナ禍による影響で、その計画通りにすすめることはできなかった。
3.手話言語学に関するワークショップをおこなった。前年度のと同様に対面会議形式で開催する予定であったが、コロナ禍による影響で何度か中止延期したため、オンライン会議形式に切り替えて4回開催することができた。こうして、全国から参加者が集まり、手話言語学に関する様々な意見などを伺うことができ、知見を深めた。
4.手話言語学研究に関する、国際的なワークショップや国際学会に参加する予定があったが、コロナ禍による中止延期となった。こうして、国内の手話学会参加のみになり、そこで自分の研究を発表するとともに、手話言語学研究の最新動向などの知見を深めた。

2020年度活動報告(現在までの進捗状況)

1.手話使用インフォーマント探しに、思ったより時間がかかっている。これまでは対面形式による調査がほとんどだったが、コロナ禍により、対面形式ができなくなり、代替手法としてのオンライン形式による調査を模索した。しかし、オンライン形式に慣れていない、ろう者が思ったより多くいるため、想定以上の時間が要することがわかった。
2.古くからある手話映像データ集めに、そのデータが入っている媒体としてはVHSテープが多く、それを再生するVHSビデオデッキがほとんどの電機メーカーでは生産中止になっているため、デジタルデータに変換する作業も必要になっている。また、手話映像データとして残していただいた、手話使用インフォーマントの承諾を得るのに、コロナ禍により、対面形式ができないためもあって、多くの時間を要している。
3.アノテーション協力者探しに、想像以上に時間がかかっている。聾教育などの背景により、手話は言語であると気付いていない、手話は日本語を補助するためにあると思い込んでいる聾者が多いため、その彼らに、手話は言語であると理解させるとともに、手話言語を科学的に分析する意義を理解させるのに時間がかかっている。可聴者(きこえる人)の中から集う方法を考えられたが、国際的な手話言語学研究倫理により、聾者中心の研究調査活動としてすすめる重要性に合わせるためにもある。
4.手話言語学に関する国際的な会合での情報収集は、コロナ禍の影響により、できなかった。しかし、オンライン形式のワークショップ参加者の意見交換などにより、日本の手話言語に関する定義の見直しにおいて進展が見られた。

2019年度活動報告

1.手話使用インフォーマントの探し方と古くからある手話映像データの集め方について、大阪市聴言障害者協会の伝統的手話保存活動チームの協力を得て、その協議を3回行った。1933年、小中学校等の教育現場で手話の使用が禁じられる前まで、手話教育を受けたことがある聾者、あるいは、1948年、聾学校の就学義務化が始まる前まで、無就学になってしまった聾者が使用している手話は、日本語の影響が少ないため、古くからある伝統的手話になっていると仮定して、その対象になる聾者の手話映像データを集めている。
2.手話使用者12人に対し予備調査を行った。口コミだけで、いきなり伝統的手話を使用するインフォーマントを見つけるのは困難であるため、予備調査として、聾者が多く集まるイベントに参加する何人かにビデオ収録を突然お願いして、その中から対象者を見つけて、改めて本調査としてのビデオ収録をお願いする方法をとることにした。大阪府で聾者が多く集まりそうなイベントを2つ選んで、そのイベント責任者に、事前に許可をいただいた。そして、参加者同士の手話会話を眺めながら、協力できそうな人を見つけて、承諾を得た上で、イベント会場外において、5分以下の手話スピーチをお願いした。
3.手話言語学に関するワークショップを1回行った。口コミだけで、手話のアノテーション作業に協力いただける人を見つけるのは困難であるため、手話言語学に興味を持たせるようなテーマを掲げて、ワークショップを行い、その参加者の中から見つける方法をとることにした。
4.手話言語学研究に関するワークショップや手話言語政策に関する国際会議や手話言語学研究に関する国際学会に参加した。手話言語学研究の最新動向や手話言語学研究倫理など、知見を深めた。

2018年度活動報告

1.手話使用インフォーマントの探し方と古くからある手話映像データの集め方について、その協議を5回行った。大阪市聴言障害者協会が、失われつつある、古くからある手話を保存する目的で、伝統的手話保存活動という事業を行っている。そのためのタスクチームに本研究に加わっていただき、約10人のメンバーと共にすすめている。そこで、1933年、小中学校などの教育現場で手話の使用が禁じられる前まで、手話教育を受けたことがある聾者、あるいは、1948年、聾学校の就学義務化が始まる前まで、無就学になってしまった聾者が使用している手話は、日本語の影響が少ないため、伝統的手話になっていると仮定して、その対象になる聾者の手話データを集めている。
2.手話使用者15人に対し予備調査を行った。口コミだけで、いきなり伝統的手話を使用するインフォーマントとして協力いただける人を見つけるのは困難であるため、予備調査として、聾者が多く集まるイベントに参加する何人かにビデオ収録を突然お願いして、その中から対象者を見つけて、改めて本調査としてのビデオ収録をお願いする方法をとることにした。大阪府では、聾者が参加できるイベントが数多く開催されており、その中から、聾者が多く集まりそうなイベントを3つ選んで、そのイベント責任者に、事前に許可をいただいた。そして、参加者同士の手話会話を眺めながら、協力できそうな人を見つけて、承諾を得た上で、会場外において、5分以下の手話スピーチをお願いした。
3.手話言語学に関する講演会を1回行った。口コミだけで、手話のアノテーション作業に協力いただける人を見つけるのは困難であるため、手話言語学に関するテーマを掲げて、講演会を行い、その参加者の中から見つける方法をとることにした。こうして、「言語の意味を知ろう~なぜ手話は言語なのか~」というテーマで講演会を開催し、16人の参加者を集めた。