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地域研究に関する学術写真・動画資料情報の統合と高度化(2016-2021)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』

吉田憲司


目的・内容

日本の研究者による世界各地での現地調査の際に撮影された写真や動画などの画像資料は、世界諸地域の調査当時の実態を記録した貴重な研究資源であるとともに、日本の学術史を反映する学術遺産でもある。本研究支援事業の目的は、地域研究に関わる進行中の科研費プロジェクトで、その研究にとって過去に蓄積された画像資料のデジタル化・共有化が大きな貢献をなすものを技術的に支援し、研究の格段の進展を促すことにある。この事業を通じて、日本の国内外の学術調査に関わる写真・動画資料を集積したデータベース「地域研究画像デジタルライブラリ」を構築し、地域研究のさらなる発展に資するプラットフォームとして整備する。本事業の実施にあたっては、進行中の科研費採択課題実施者を対象に広く公募をおこなう。採択されたプロジェクト(以下、「公募プロジェクト」とよぶ)に対しては、当該公募プロジェクトの所蔵する写真・動画資料をプラットフォームにおいてデジタル化・データベース化し、地域研究に有用な日英の基本情報(テキスト)を付加して返却することで、データの整理と公募プロジェクト内での共有化を進める。こうしたデータをプラットフォームに逐次集積することにより、最終的には地域研究画像資料の国際的共有化をはかることとする。

活動内容

2021年度活動報告(研究実績の概要)

前年度にひき続いて支援対象プロジェクトの募集を2回行い、公募支援件数の拡大に取り組んだ。その結果、20件の応募があり17件を採択した。具体的には、デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、カテゴリーA[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化とテキスト情報の入力支援を必要とするもの]を2件、カテゴリーB[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化を必要とするが、テキスト情報の入力は申請者自身がおこなうもの]を4件、カテゴリーC[フィルムやガラス乾板などの資料を含まず、すでにデジタル化されている画像のデータベース化だけを必要とするもの]を11件、計17件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・研究支援協力者)ならびに技術支援員が資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
令和3年度は、約26,000点のデータに基本情報を付与しサーバに登録した。現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。
その他の実績として、令和3年12月4日(土)にオンラインにて、事業全体を総括する公開シンポジウム『研究ツールとしての画像デジタルライブラリ』を開催した。フィールド調査を通じて写真資料を活用してきた研究者がその動機や社会的意義を紹介するとともに、文化財科学を専門とする研究者がデジタル写真資料の研究への援用方法を報告し、5年あまりにわたる活動がどのようにそれぞれの研究活動に活用されているかをあらためて確認することができた。

2020年度活動報告(研究実績の概要)

応募回数を年1回から2回に増やした結果、30件の応募があり19件を採択した。具体的には、デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、カテゴリーA[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化とテキスト情報の入力支援を必要とするもの]を4件、カテゴリーB[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化を必要とするが、テキスト情報の入力は申請者自身がおこなうもの]を5件、カテゴリーC[フィルムやガラス乾板などの資料を含まず、すでにデジタル化されている画像のデータベース化だけを必要とするもの]を10件、計19件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・研究支援協力者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
令和2年度は、約24,000点のデータに基本情報を付与しサーバに登録した。現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。
その他の実績として、令和2年5月17日(土)にオンラインにて、公開セミナー『埋もれた写真を掘り起こすーデータベースを用いた整理術の開発と応用ー』を開催した。その中で、研究活動の一環として写真資料の整理にたずさわってきた研究者が整理の動機や社会的意義を紹介するとともに、その支援をおこなっている研究者がデータベース構築の足どりを説明、また実際に構築されたデータベースを紹介するなどし、事業の広範な認知を得ることができた。

2020年度活動報告(現在までの進捗状況)

本年度は、まず昨年度同様に4月の年度当初から、公募を開始し、6月末にはカテゴリーAは2件、カテゴリーBは3件、カテゴリーCは6件の択課題を決定することができた。加えて9月1日~10月9日の期間で2次募集を行い、カテゴリーAは2件、カテゴリーBは2件、カテゴリーCは4件を採択した。その結果、年間合計でカテゴリーAを4件、カテゴリーBを5件、カテゴリーCを10件、計19件の課題を採択し、デジタル化およびデータベース化を進めた。約24,000点のデータに基本情報を付与しサーバに登録する作業が終了し、「公募開始→審査→採択からワークショップの開催→デジタル化・データベース化作業」という確立した一連の流れの中で、スムーズに支援事業を展開できた。

2019年度活動報告(研究実績の概要)

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、計20件の応募のうち、カテゴリーA[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化とテキスト情報の入力支援を必要とするもの]を5件、カテゴリーB[写真資料(ガラス乾板、ネガ、ポジなど)のデジタル化を必要とするが、テキスト情報の入力は申請者自身がおこなうもの]を5件、カテゴリーC[フィルムやガラス乾板などの資料を含まず、すでにデジタル化されている画像のデータベース化だけを必要とするもの]を5件、計15件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・研究支援協力者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、約51,000点のデータに基本情報を付与しサーバに登録した。現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。
その他の実績として、下記のような活動を実施した。
2019年5月25日(土)に国立情報学研究所に於いて、シンポジウム『地域コミュニティのメディアテーク』を開催し、本事業で主な支援対象としている研究者が世界各地で調査する際に撮影した写真や動画などの画像資料が持つ価値とともに、市井の人たちの手記が持つ学術的価値と、そうした写真をデジタルアーカイブズとして蓄積することの意義を考えた。

2019年度活動報告(現在までの進捗状況)

本年度は、カテゴリーAを5件、カテゴリーBを5件、カテゴリーCを5件、計15件の課題を採択し、デジタル化およびデータベース化を進めた。本年度は、昨年度に引き続き、4月の年度当初から公募を開始し、6月末には採択課題を決定することができた。約51,000点のデータに基本情報を付与しサーバに登録する作業が終了し、「公募開始→審査→採択からワークショップの開催→デジタル化・データベース化作業」という確立した一連の流れの中で、スムーズに支援事業を展開できた。

2018年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、カテゴリーA(画像の数が1件5,000点程度を対象とする)を5件、カテゴリーB(1件500~1,000点程度を対象とする)を6件、計11件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・連携研究支援者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、デジタル化・約18,000点、データベース化・約32,000点の作業を実施し、現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。  その他の実績として、下記のような活動を実施した。
2018年5月19日(土)に一橋大学一橋講堂に於いて、シンポジウム『デジタル写真データベースが拓く学術活動の未来―蓄積された画像資料をいかに活用するのか―』を開催し、地域研究の分野で、過去に蓄積された画像資料のデジタル化・共有化のための研究支援の重要性を訴えるとともに、支援プログラムが個々の研究の進展に及ぼした効果を検証し、今後の学術のありかたを議論した。シンポジウム終了後には、平成30年度の支援プログラムへの応募を検討している科研費代表者を対象として、個々の質問に答える相談会も実施した。

2017年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、カテゴリーA(画像の数が1件5,000点程度を対象とする)を4件、カテゴリーB(1件500~1,000点程度を対象とする)を4件、計8件の課題を採択した。採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究支援代表者・研究支援分担者・連携研究支援者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り、具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、デジタル化・約18,000点、データベース化・約23,000点の作業を実施し、現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。 その他の実績として、下記のような活動を実施した。
①2017年10月7日(土)・8日(日)に国立民族学博物館に於いて、国際シンポジウム『変容する世界のなかでの文化遺産の保存』を開催し、研究支援分担者による発表を通じて、プロジェクトの趣旨を周知徹底するとともに、地域研究画像データベースの活用例について紹介し、本プラットフォーム事業を通じた写真資料の共有化による地域研究の展開の可能性について議論した。
②2017年12月16日(土)に横浜情報文化センター・情文ホールに於いて、国際シンポジウム『アラビア半島の文化遺産保護の現状と展開 サウジアラビアを中心として』を共催で開催し、研究支援分担者がパネリストとして国立民族学博物館での本事業の取り組みについてディスカッションをおこなった。

2016年度活動報告

デジタル化支援、地域研究情報ドキュメンテーション支援として、5件の課題を採択し、採択されたプロジェクトに対しては、プラットフォーム委員会委員(研究代表者・分担者)ならびに技術支援員が支援対象となる写真コレクションの所在地に赴き、資料の点検をおこなうとともに、支援対象者と直接面談して、著作権処理に関する打ち合わせのほか、各プロジェクトの実情に合わせた本プラットフォームの利用形態の調整をおこなった。また、採択者への事業内容の周知徹底を図り具体的な支援計画を立案するために、採択された公募プロジェクトに対するワークショップを開催した。
本年度は、デジタル化・約12,000点、データベース化・約24,000点の作業を実施し、現在、各採択科研プロジェクトにおいて、メンバーの間で画像を共有化し、科研課題の研究の推進・展開を図っている。 その他の実績として、下記のような活動を実施した。
①2016年6月13日(月)に京都大学(稲森財団記念館)に於いて、公開フォーラム『写真が開く地域研究』を開催し、プロジェクトの趣旨を説明するとともに、地域研究画像データベースの活用例について特に技術支援の在り方を中心に検討し、本プラットフォーム事業を通じた写真資料の共有化による地域研究の展開の可能性について議論した。
②本プラットフォームで整理した写真データと研究成果を用いて、中部大学民族資料博物館で2016年12月5日~2017年3月8日に展示「アフロ・ユーラシア 内陸乾燥地文明展 黒アフリカ・イスラーム文明から考える」の開催、2017年1月から2月にかけ、奈良と東京で、写真展「世界遺産ナンマトル-太平洋の巨石文明の痕跡を求めて-」(関西外国語大学、NPO法人パシフィカ・ルネサンス主催、東京文化財研究所協力)が開催されるなど、科研プロジェクトの成果公開とそれによる成果の検証が可能となった。