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想像界の還流-境界領域における生態想像力の往還をめぐる比較文化史的研究(2024-2027)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B)

山中由里子

目的・内容

研究の概要

本研究は、近代以前の一神教文化圏と漢文化圏の人々が、身体と環境/世界/宇宙の連関を如何に想像することによって、常軌を逸脱する状況や人知の及ばない物事を理解しようとしてきたかを領域横断的に考察することを目的とする。このために、自然環境と人間の間の往還的な関係性において発動される想像力を「生態想像力」という概念で捉えたエコクリティシズムの理論的枠組みを応用し、特に、異なる身体観・宇宙観の接続点、あるいはパラダイムの転換点といった文化や時代の境界領域に焦点をあて、医学書・博物誌・天文書など、身体観や宇宙観を顕著に反映した具体的なテクストの比較を行い、文化の遷移帯における想像界の還流の実態を解明する。

研究の目的

近代以前のイスラーム世界や東アジアの場合において、不可思議な物事のつじつまを合わせるために人々が想像してきた何らかの力の介在を、おしなべて「超自然」という言葉でくくってしまってよいのだろうかという問題提起をし、本研究では具体的なテクスト分析を通して、「自然vs脱/超自然」あるいは「自然vs文化」という対置構造の枠組みでなく、自然環境と人間の間の、より往還的な関係性において発動される生態想像力が構築してきた自然理解のシステムを明らかにする。
また、生態想像力が生み出した驚異や怪異が自然知の重要な一部であった「霊的・非合理的自然観」から、近現代の「数量的・合理的自然観」に遷移し、科学の対象から排除され娯楽化してゆく過程について、ヨーロッパや日本を参照軸としながら、未だに研究が不十分である中東イスラーム世界と中国を中心とする東アジア漢文化圏における近世以降の脱魔術化の過程を特に詳細に検証する。

活動内容

KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)
「想像界の還流-境界領域における生態想像力の往還をめぐる比較文化史的研究」(課題番号24K00058)
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24K00058