モンゴル遊牧論の再構築-家畜の<探索>に着目して(2024-2028)
科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(A)
小長谷有紀
研究の概要
モンゴル高原では、歴史的に大型家畜の去勢オスが役畜として軍事力の基盤を提供してきた。現代の牧畜においても去勢オスの割合は大きい。
とりわけ大型家畜の去勢オスの群れは宿営地付近で放牧されないため、人びとはしばしば畜群を見失い、そのたびに<探索>に出かけて、しばしば日常的な日帰り放牧よりも時間コストをかけている。これまで等閑視されがちであった宿営地にいない家畜に的をしぼり、その喪失と探索という切り口から、人びとの動物行動学エソロジー的知識を収集するとともに、家畜の自律性に依存する牧畜システムという視点から、遊牧論を再考する。
研究の目的
モンゴル高原の牧畜体系は群れに占める去勢オスの割合が大きいという特徴を有し、大型家畜(ウマ、ウシ、ラクダ)の去勢オス群は宿営地付近で放牧されない。このため、人びとはしばしば畜群を見失い、そのたびに<探索>に出かけて、しばしば日常的な日帰り放牧よりも時間コストをかける。こうした遊牧の根幹にかかわる<探索>は、家畜行動に関する民俗知識に基づいていると考えられる。これまで等閑視されがちであった宿営地にいない家畜(日帰り放牧されない家畜)に的をしぼり、聞き取り調査によって遊牧民の認識を明らかにする。さらに、動物行動学、植物生態学、地形学の観察を組み合わせていわゆる科学的知見と照合する。その成果を、Traditional Ecological Knowledge(伝統的環境知識)として構成すると同時に、人と家畜の関係という視点から、新しい遊牧論を提示する。
活動内容
KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)
「モンゴル遊牧論の再構築-家畜の<探索>に着目して」(課題番号24H00130)
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24H00130