比婆荒神神楽の社会史――歴史のなかの神楽太夫(2024)
科学研究費助成事業による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書)
鈴木昂太
目的・内容
研究の目的
学術図書『比婆荒神神楽の社会史――歴史のなかの神楽太夫』を刊行し、2011年より広島県庄原市で断続的に実施してきた現地調査に基づく一次資料とその研究成果の公開、および、民俗学・歴史学(芸能史)・演劇学などにより取り組まれてきた神楽研究に対する新たな理論的視座と研究方法の提示することである。
研究の内容
本書は、広島県庄原市東城・西城町(旧奴可郡)に伝わる比婆荒神神楽を研究対象とし、この神楽の近世初期から現在に至るまでの歴史的変遷を社会史の視座から描き出すものである。
本書では、歴史と当事者性に配慮した神楽研究を試みるため、神楽を舞う「人(神楽太夫)」に注目し、神楽の歴史を社会の中で生きる芸能伝承者の活動史として描きだしていく。こうした社会史の視座から、社会状況・時代背景の変化の中で、神楽に関わる人々がどのように思考し、行動して、現在まで伝承してきたのかという神楽の歴史的変遷を明らかにする、そして、神楽の変化と不変のさまを分析することで、長期間の伝承を可能にした要因はなにかという問いに答えることを課題として設定した。
この課題を明らかにするため、本書は大きく三部構成とし、結論では神楽の変化を生み出す創意工夫こそが「伝承の原動力」であることを明らかにした。