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バスケタリーと線状物に関する人類学的研究――植物生態と民族技術に着目して

研究期間:2024.10-2027.3

代表者 上羽陽子

キーワード

バスケタリー、植物生態、民族技術

目的

本研究の目的は、「バスケタリー」とその使用材料(編み材・結束材)に注目しつつ、ヒトによる植物利用の一側面を人類史的な視点から明らかにすることである。バスケタリーとは、植物等の部位を加工してたわみやすい線状物を製作し、それを材料として、編み技法で作られたもの一般を意味する。従来の民俗学等では、このカテゴリーを編組品と呼び、籠・箕・笊・筌・魚籠などのかご類を重視してきたが、本研究では、罠、敷物、壁材、家、橋、舟も含めたより包括的な製作物をバスケタリーとして定義して、焦点を当てる。
具体的には、1)バスケタリーとその使用材料となる線状物を生み出すための民族技術について、複数の地域を対象に植物生態による利用の違いと、それに見合った技術選択の相関関係を生産構造と社会関係から比較・検討する、2)編み材・結束材に注目し、束ねる、固定する、吊す、捕獲するといった人類が食料獲得と生産を目的としてつくりだしてきた線状物を取りまく動態を検討し、これらの課題にテキスタイル研究・文化人類学・生態人類学・民俗学・考古学・民族植物学・森林科学・地域研究・宗教学による多様な視座をもちいて取り組む。

2025年度

<令和7年度>バスケタリーとその使用材料となる線状物について人類史的にアプローチする。各メンバーおよび特別講師を含めて毎回2名程度の発表者と数名のコメンテイターを依頼して進めていく。本年度は、研究会を4回予定している。内1回は館外開催として、バスケタリーの生産現場を訪問し、素材の見極めおよび製作技術を視察し、それらを踏まえて、素材確保の問題、技術継承の問題に関する議論を現地在住の生産者と研究者を交えておこなう。各回での議論を深化させ、当初設定した研究枠組みのなかで柱となるテーマの抽出をおこなう。

【館内研究員】 平野智佳子、飯田卓、河西瑛里子
【館外研究員】 竹田晋也、今石みぎわ、牛久晴香、中谷文美、小坂康之、金谷美和、山岡拓也、印東道子、本間一恵、伊藤征一郎、渡部圭一


2024年度

<令和6年度>研究会を2回開催する。初回は研究代表者の上羽が研究会の趣旨および従来のバスケタリーをとりまく研究概況を説明し、本共同研究が目指す研究枠組みについて提示する。また、目指される研究枠組みについて、参加メンバーと意見交換をおこなう。第2回目は、本共同研究と関連する科学研究費補助金の研究プロジェクト(B)に参加したメンバーが報告をおこなう。初年度は以上の活動を通じて、目指される研究枠組みの共有化をはかり、翌年度以降の研究会の礎づくりをおこなう。

【館内研究員】 平野智佳子、飯田卓、河西瑛里子
【館外研究員】 竹田晋也、今石みぎわ、牛久晴香、中谷文美、小坂康之、金谷美和、山岡拓也、印東道子、本間一恵、伊藤征一郎、渡部圭一
研究会
2024年12月1日(日)10:30~17:00(国立民族学博物館 第2演習室 ウェブ開催併用)
上羽陽子(国立民族博物館)「バスケタリーと線状物に関する人類学的研究――植物生態と民族技術に着目して」
質疑応答
全員「各自の研究紹介および今後の予定の検討」
2025年2月23日(日)10:30~17:30(国立民族学博物館 第1演習室 ウェブ開催併用)
山岡拓也(静岡大学)「タケ仮説と現生人類の道具資源利用」
小坂康之(京都大学)「ラオスにおけるタケの分布と利用」
全員「各自の研究紹介および今後の予定の検討」
2025年3月24日(月)10:30~17:30(国立民族学博物館 第1演習室 ウェブ開催併用)
上羽陽子(国立民族博物館)「国立民族学博物館におけるバスケタリーと線状物に関する収蔵資料について」
質疑応答
全員「国立民族学博物館におけるバスケタリーと線状物に関する熟覧調査」
研究成果

初年度となる2024年10月〜2025年3月は、研究会を3回開催した。初回は研究代表者の上羽陽子が研究会の趣旨および従来のバスケタリーをとりまく研究概況を説明した。さらに、本共同研究が目指す研究枠組みについて提示し、参加メンバーと意見交換をおこなった。また、参加メンバー全員が自身のバックグラウンドと本共同研究に関連した研究関心を発表し、今度取り組むべき課題について共有をした。
第2回目は、タケをキーワードにして山岡拓也と小坂康之が研究発表をおこなった。原生人類におけるタケによる道具資源利用、ラオスをはじめとする世界各地のタケの分布と利用を通じて、植物利用における道具資源としてのタケの重要性について議論をおこなった。第3回は国立民族学博物館収蔵品の熟覧調査しつつ、バスケタリーおよび線状物の用途や機能、使用素材や製作技術について議論し、知見を深めた。これらを通じて、翌年度以降の研究会の土台づくりをおこなった。