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民博アーカイブに基づく人類学史研究

研究期間:2024.10-2027.3

代表者 中生勝美

キーワード

人類学史、オーラル・ヒストリー、アーカイブ

目的

人類学史といえば、海外では正規科目として採用され、学会なども組織されて、著名な人類学者の伝記も刊行されている。しかし、海外の人類学史研究は、欧米中心であり、日本の研究は全く触れられていない。国立民族学博物館には、アーカイブが収集され、日本の人類学史を研究するうえで、貴重な情報があつまっている。本共同研究は、そうした資源を活用して、日本の人類学史の研究を、海外の研究動向を吸収しつつ進めることを目的とする。海外の人類学史の研究動向を参照するためにも、国立民族学博物館は、日本で最も人類学の資料を網羅的に収蔵する共同利用機関であり、人類学史を研究するためには、所蔵資料の活用が不可欠である。

2025年度

2025年度は、6月末に東京の桜美林大学新宿キャンパスにて研究会を開催し、午前中に外部講師として明治大学の山田亨教授を招聘し、岡正雄文書の整理公開や1960年に実施されたアラスカ調査団の活動、とりわけその時に収集した遺骨の返還状況を報告してもらう。午後から場所を移動し、国立日本映像アーカイブにて、鳥居龍蔵をモデルに1935年に作成された映画「緑の水平線」を鑑賞後、この映画について議論をする。11月中旬に、2025年から新たに加わった泉水英計のブラジル人類学史、角南聡一郎の日本考古学史の発表、およびゲストスピーカーとして南山大学の高柳ふみ講師から、ドイツの博物館におけるベニン像返還問題を中心とした博物館事情について報告してもらう。2026年2月に、2025年から新たに加わった加賀谷真梨によるオハイオ州立大学のアーカイブについての発表、ゲストスピーカーとして佐藤若菜准教授を招聘して、台湾の博物館における中国雲南少数民族の物質文化の収蔵状況について報告してもらう。また、科研での出張したメンバーに、適宜研究の進捗状況を報告してもらう。

【館内研究員】 伊藤敦規、齋藤玲子
【館外研究員】 田中雅一、David Weiss、塚原東吾、上田信、谷口陽子、江川純一、泉水英計、角南聡一郎、加賀谷真梨


2024年度

初年度は、初回顔合わせの時に各自の問題意識と、この研究会での研究テーマに関する概略を全員が発表する。特に科研分担者は、夏休みの調査成果について詳しく報告をする。初年度は2回に分けておこなう。

【館内研究員】 伊藤敦規、齋藤玲子
【館外研究員】 田中雅一、David Weiss、塚原東吾、上田信、谷口陽子、江川純一
研究会
2024年11月2日(土)10:00~18:30(国立民族学博物館 大演習室 ウェブ開催併用)
中生勝美(桜美林大学)「研究会の趣旨説明、人類学史の研究状況説明、研究計画の確認」
齋藤玲子(国立民族学博物館)「アイヌ研究の現状――近年の動向とアーカイブズ資料の可能性」
David Weiss(九州大学)「岡正雄『古日本の文化層』の混成性ー民族学における日独交流の一例」
田中雅一(国際ファッション専門職大学)「SOASのCFHアーカイヴとナガ民族プロジェクトについて」
総合討論
2024年11月3日(日)10:00~15:30(国立民族学博物館 大演習室 ウェブ開催併用)
江川純一(明治学院大学)「エルネスト・デ・マルティーノの南イタリア研究」
谷口陽子(明治学院大学)「ミシガン大学のアーカイブから見た日本研究」
総合討論
2025年2月1日(土)10:00~18:20(国立民族学博物館 大演習室)
中生勝美(桜美林大学)「研究会の進捗状況、人類学史の研究動向、共同研究者の近況」
伊藤敦規(国立民族学博物館)「1950年代のアイヌ民族綜合調査の再検討」
塚原東吾(神戸大学)「人類学と科学史に関するいくつかの話題:ロンダ・シービンガーの最近の議論」
総合討論
2025年2月2日(日)10:00~16:30(国立民族学博物館 大演習室)
上田信 (立教大学)「梅棹忠夫の『文明の生態史観』再考」
飯嶋秀治(九州大学)「Strehlow archives:オーストラリアとドイツのアーカイブ視察から」
総合討論
研究成果

本年度は、初年度なので、共同研究の目的を研究代表者の中生から説明し、それぞれの共同研究者から、現在の研究テーマとこの研究会でできることを報告ししてもらった。共同研究者の半数は、中生が研究代表をする科研「アーカイブ資料に基づく第二次世界大戦前後の人類学史の再検討」基盤研究(B)の研究分担者なので、国内外のアーカイブ調査を前提とした研究計画を報告してもらった。共同研究者ではない科研分担者も、できるだけ出席してもらい、情報提供や議論に加わってもらった。来年度後半に、科研にて経費を負担して海外の研究者3人をコメンテーターとして招聘し、民博にて国際シンポジウムを開催する予定を周知した。その為には来年の夏には、英文で原稿を準備しておく必要があることを確認した。