日本人によるオセアニアコレクションの形成とモノの来歴――東大資料とみんぱくコレクションを中心に
研究期間:2024.10-2027.3
代表者 土井冬樹
キーワード
オセアニア資料、日本人、モノの来歴
目的
本研究の目的は、みんぱくのコレクション及び東大資料の来歴を明らかにし、世界的なオセアニアコレクションの形成の中に日本の状況を位置付けることである。ここでいう来歴とは、オークションで購入や誰かからの寄贈というものではなく、そのものがどこで収集されたのか、どうやって収集されたのか、なぜそれが収集されたのかといった個々の歴史である。それらを明らかにしながら、時代によるコレクションの変遷及び収集の態度の変化を具体的に示す。
東大資料は、多くが19世紀後半から20世紀中頃に収集され、みんぱくの資料は戦前に収集されたものも一部あるが、多くが設立後に収集されている。これらのコレクションの来歴を調査し、日本人の収集が、たとえば植民地支配をしていたイギリスやその他の国の収集と比べてどう異なり重なっているのか比較する。そうすることで、日本人が形成したオセアニアコレクションの特徴を明らかにし、世界的なオセアニアコレクションの形成の歴史の中に日本の状況を位置付けることを目指す。
2025年度
2025年度の研究会は、年間を通して4回の開催を考えている。まず、第1回に、来歴調査をどのように行うのか、その成果がいかに博物館およびソースコミュニティの人たちに資するのかについて、招待講師に発表をお願いする。それぞれの事例で博物館がどのようにソースコミュニティと関わりを得ているのかについて情報を得ることで、今後の共同研究の成果の還元可能性を検討する。
それを踏まえた上で、第2回以降、研究会メンバーの担当する地域の事例を発表してもらう。加えて、研究会の前後に、みんぱくの収蔵庫でモノや記録の熟覧も行う。少なくとも東大資料についてはその目録が残されており、何が記録され、どのような情報がまとめられているのかなどの詳細を確認することができる。収集者や寄贈者の名前が記録されていることもあるため、来歴を辿るきっかけを掴める可能性もある。これらを通じて、オセアニア地域における日本人による収集の歴史について包括的に把握することを目指す。
【館内研究員】 | 丹羽典生、平野智佳子 |
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【館外研究員】 | 四條真也、紺屋あかり、臺浩亮、長島怜央、木村彩音 |
2024年度
2024年度は、2回の研究会を予定している。まず参加研究者と研究関心について共有するとともに、共同研究の趣旨および方向性をすり合わせ、みんぱくの東大資料の熟覧を行う(第1回:11月予定)。それぞれのコレクションに関わる資料を収集、整理し、資料的な特徴について、みんぱくコレクションと東大資料について報告する。また、来歴調査をする意義について、博物館とソースコミュニティとがどのような関係性にあるのか、地域によってどのように違うのか脱植民地化の観点から検討する(第2回:1月予定)。
【館内研究員】 | 丹羽典生、平野智佳子 |
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【館外研究員】 | 四條真也、紺屋あかり、臺浩亮、長島怜央、木村彩音 |
研究会
- 2024年12月15日(日)13:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室 ウェブ開催併用)
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土井冬樹(天理大学)・趣旨説明
土井冬樹(天理大学)・オセアニア関連の東大資料:帝国日本とモノの収集
平野智佳子(国立民族学博物館)・博物館はいかに来歴調査を進めることが可能か――民博収蔵のオーストラリア先住民の物質文化を事例に
今後の研究活動に関する打ち合わせ
- 2025年2月8日(土)13:00~18:00(国立民族学博物館 第3演習室 ウェブ開催併用)
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臺浩亮(東京都市大学)・「民族資料の『来歴』を記述する」ための一試論――ニューギニアに由来する慶應大資料・東大資料を事例として
土井冬樹(天理大学)・脱植民地化と来歴調査――アオテアロアにおける実践と東大資料を事例に
今後の研究活動に関する打ち合わせ
研究成果
2024年度は、2回の研究会を実施した。研究の焦点を合わせることを狙いに、まず、みんぱくがどのような資料を持ちまた委託されているのかについての概説的な情報を共有した。その上で、来歴調査をもって、先住民社会と博物館とがいかに関われるのか、関われないのか、考古学・物質研究の立場から来歴がいかに語られてきたのかについて議論した。研究会を通して、来歴調査を経て明らかにされるものは、収集者の過去だけではなく、制作過程の変化や、過去から現在までの展示における意味づけの変化なども含められること、加えてどのように記録されてきたのか検討することも重要であること示された。これらの作業は、今後、日本のオセアニアコレクションの特徴を検討する上でも重要な比較点となろう。今後は具体的な来歴をもとに議論を深めていく予定である。