山邊恵介(YAMABE Keisuke)
在学生の研究内容
山邊恵介(YAMABE Keisuke)

所属
人類文化研究コース
指導教員
主任指導教員:中川理/副指導教員:松尾瑞穂
研究題目
フランスにおける障害者の労働と生に関する人類学的研究
研究キーワード
労働、障害、フランス、ろう、全体論的アプローチ
研究の概要
私はフランスをフィールドとして、障害のある人々、特に「ろう」の人々の側から、労働や仕事について人類学的に理解することを目指しています。産業社会以後、「労働」や「仕事」の捉え方は多様化し一義的に捉えることが困難になってきました。しかし今なお、社会や国家、また個人の生活において、それらは重要な活動であると考えられています。私の研究は曖昧で重要な「働くこと」について、働くことができないとされてきた「障害を持つ人々」の側から理解しようとするものです。中でも雇用可能性が高いとされる聴覚障害のある、「ろう」の人々に注目しています。
私の研究は、次の二点を特色とします。⑴人文社会科学の分野で厚い研究蓄積をもつ「労働」や「仕事」の概念を、人類学の全体論的アプローチとフィールドワークに基づいて、働く人々が形作る生の全体における「働くこと」の価値を明らかにする点、⑵労働不能とされてきた障害を持つ人々が、多様性や機会均等を謳う現代フランス社会の中で普通に働くことを推奨される際に生じる葛藤や交渉から、障害を持って生きることのあり様を明らかにする点です。
「労働」や「仕事」は、ありふれた言葉であり、概念であり、活動です。私は、この対象を理解するために、人文・社会科学の中でも様々な関係の中で働く人々自身の価値づけを重視してきた人類学的研究と、近代的な社会や権利について、その周縁に位置しているとみなされる障害がある人々から考えてきた障害に関する諸研究の成果を手がかりにしています。私の研究は、周縁性を鍵とする二つの領野の交差とフィールドワークから「労働」や「仕事」、「働くこと」の輪郭を明らかにするものです。