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令和5年度文化資源計画事業一覧

資料関連

▶ 標本資料「アラビア語・中国語併記コーラン」の寄贈受入:奈良雅史

本館常設展示場「中国地域の文化」では、これまでも寄贈資料と同様の文献図書資料を展示してきたが、展示資料の入れ替えや図書利用の制限など管理に労力がかかるものであった。そこで、この問題を解決するため、申請者が現地において収集した「アラビア語・中国語併記コーラン」を標本資料として寄贈受入した。

▶ 標本資料「宮田伊津美・中国少数民族資料コレクション」の寄贈受入に伴う事前調査:奈良雅史

本事業は、岩国市立博物館岩国徴古館の元館長・宮田伊津美氏が、1996年から2002年のあいだに主に中国西南部で個人的に収集した少数民族(一部、漢族を含む)の服飾品および生活用品を中心とした267点におよぶ民族資料コレクションの寄贈受入の事前調査である。氏のコレクションには、本館の中国地域関連資料において必ずしも十分に収集できていなかった民族の資料も多く含まれており、寄贈資料は本館の中国関連資料を補足するとともに、今後の研究活動および博物館活動に資するものとなることが期待されるため、本事業において資料が保管されている岩国徴古館において資料の状態や物量を確認するとともに、収集者である宮田氏に聞き取り調査を行ない、同氏のコレクションに関する情報を収集した。

▶ 標本資料「宮田伊津美・東南アジア少数民族資料コレクション」の寄贈受入に伴う事前調査:樫永真佐夫

本事業は、岩国市立博物館岩国徴古館の元館長・宮田伊津美氏が、1998年から2016年のあいだにタイ、ミャンマー、ラオスで個人的に収集した少数民族を中心とする服飾品および生活用品を中心とした約50点の民族資料コレクションの寄贈受入の事前調査である。氏のコレクションには、本館の東南アジア地域関連資料においてこれまで収集できていなかった民族の資料も含まれており、寄贈資料は本館の東南アジア地域資料を補足するとともに、今後の研究活動および博物館活動に資するものとなることが期待されるため、本事業において資料が保管されている岩国徴古館において資料の状態や物量を確認するとともに、収集者である宮田氏に聞き取り調査を行ない、同氏のコレクションに関する情報を収集した。

▶ 標本資料「カラコラムの乗馬用具、紡錘関係資料」の寄贈受入:吉岡乾

令和5年度に実施した本館常設展示場南アジア展示の展示更新のため、提案者が2014年から2017年の間にカラコラム山脈内(フンザ谷カリマバード村)で収集した8点の資料を寄贈受け入れした。本館では、カラコラム山脈で収集された資料は乏しいため、展示構成としても本館が所蔵する資料としても、その空白を補うことが可能となった。

▶ 標本資料「兵庫県姫路市の革作り道具」の寄贈受入:日髙真吾

本事業では、日本を代表する革作りの産地である兵庫県姫路市の青革製造業で使用する革作りの道具の寄贈受入を行った。これら革作りに関する資料は国内の博物館において収集例はほとんど見られず、本館において、我が国の革作りの道具として収集する社会的意義は高い。この寄贈受入により、革作りに関する民具研究、あるいは皮革産業に関する民俗学研究に大きく寄与することができる。

▶ 標本資料「高知県・いざなぎ流山の神棚および祭具一式」の寄贈受入:鈴木昂太

本資料は、高知県立美術館で開催された「佐藤健寿展 奇界/世界」(2022年6月18日~2022年9月11日)に際して、展示物の1つとしていざなぎ流太夫を長年務めてきた宗石力雄氏が作成したものである。この資料は、近年ほとんど開催されなくなった大祭用の山の神棚を展示用に作成したもので、いざなぎ流の祭儀に用いられる基本的な祭祀用具に加え大祭でしか用いない特別な祭具も含まれており、いざなぎ流太夫による祭祀の総体を示すものとして資料的価値が高い。

▶ 標本資料「ネパールの楽器」の寄贈受入:南真木人

本館が所蔵する南アジアの楽器関連資料の充実をはかるため、提案者と故寺田吉孝氏が2016年にネパールで製作を依頼し収集したカルナールというパンチャイ・バージャ用のホルン1点と、製作者かつ演奏者のラム・バハードゥル・ラサイリ氏から寄贈されたマウリ・バージャ(ミツバチ楽器)という縦笛2点(予備リード6点含む)を寄贈受け入れした。

▶ 標本資料「在日客家団体関連資料」の寄贈受入:奈良雅史

本事業では、元本館教員の河合洋尚准教授(東京都立大学)が、関東崇正会及び関西崇正会から譲り受けた在日客家団体より入手した、日本における客家団体が所蔵し活用してきた日本における客家の歴史および文化を知るうえで重要な資料を寄贈受入した。これら資料の寄贈受入により、中国地域および日本の資料の充実を図るとともに、より効果的な展示が行えるようになった。

▶ 標本資料「カラーヒット(グリーンランド・イヌイット)の「呪術用 護符(トゥピラク)」の寄贈受入:岸上伸啓新

本事業では、元国立科学博物館植物研究部長を務めた小林義雄博士(1907-1993)が、グリーンランドで1950 年~1960 年代に入手したカラーヒット(Kalaallit:グリーンランド・イヌイット)のトゥピラク9 点を寄贈受入した。トゥピラクは本館でもすでに19点を所蔵しておりアメリカ展示場でも展示しているが、本資料を受け入れることで、さらに資料の充実をはかることができた。

▶ 標本資料「宮田伊津美・中国少数民族資料コレクション」の寄贈受入:奈良雅史

令和5年度に文化資源計画事業として実施した「宮田伊津美民族資料コレクション」の調査の結果、本コレクションを寄贈受入することとなった。氏のコレクションにはそのほとんどの資料に収集地、収集年月日、使用民族、現地語表記が記載された資料カードが付されていることから、当時の状況を知るうえで貴重な資料であり、今後の研究活動および博物館活動に資するものとなることが期待されるコレクションとなった。

▶ 標本資料「北アリゾナ博物館からの寄贈提案」:伊藤敦規

本事業は、学術協定締結機関である北アリゾナ博物館(米国アリゾナ州フラッグスタッフ)から提案された、米国南西部先住民ホピ関連資料6点の寄贈の受入に関する内容である。
民博にはホピ製とされる資料が約500点収蔵されているが、その大半は精霊をモチーフにした木彫人形や銀細工や2021年以降に収集を開始したテキスタイル作品などが大半を占めるものの、ホピ保留地第二メサ地域で主に制作される巻き編み籠の収蔵点数は非常に少ない。今回の資料を受け入れることで、ホピ関連資料の充実をはかることができた。

▶ 標本資料「台湾原住民族関連資料」の寄贈受入:野林厚志

本事業は、台湾原住民族の木彫1点と貝製品1点の寄贈を受け入れ、共同利用可能な標本資料として本館に収蔵するものである。木彫は、寄贈者の高祖父が、台湾が日本の統治下にあった時代に、台湾原住民の知人から贈られたもので原住民の手による彫刻である。貝製品は、寄贈者の祖父が台湾で入手したものであり、昭和10年に入手したと記録が残っている。これらの資料を受け入れ、本館の台湾関連資料の充実をはかることができた。

▶ 標本資料の撮影等業務:末森薫

本事業は、標本資料を研究、展示、情報提供等に有効利用するために、標本資料の撮影、計測、及びそれらに付随する業務をおこなうものである。標本資料の正確かつ詳細な画像情報を記録し、標本資料を有効に活用するための基礎的データの蓄積を目的としており、大学共同利用機関として資料に付随する情報の公開等に供するデータを作成する基盤的な事業である。

▶ 研究資料整理・情報化及び利用管理業務【標本資料関連】:企画課長

本事業は、本館が所蔵する標本資料に関する情報の作成及び資料の整理等を行うとともに、当該資料に関する情報サービス、展示準備・展示運営のための資料管理及び情報の作成・管理等を行うものである。

▶ 研究資料整理・情報化及び利用管理業務【データベース関連】:末森薫

本事業は、本館が所蔵する標本資料に関する情報の作成及び資料の整理等を行うとともに、当該資料に関するデータベース掲載情報の作成、更新作業及び「人類の文化資源に関するフォーラム型情報ミュージアムの構築」、「地域研究デジタルアーカイブに」に係るデータ整理業務を行うものである。

▶ 有形文化資源の保存・管理システム構築:園田直子

本計画事業の目的は、館蔵資料の保存と活用の両立を目的に、その保存・管理システムを緊急度に応じて構築することにある。①有形文化資源の保存対策立案では、総合的有害生物管理(IPM)の考えかたのもと、生物被害の防除・殺虫対策に関わる資料管理活動を計画、統括した。②資料管理のための方法論策定では、博物館環境の調査、解析、総括をおこなうとともに、収蔵庫再編成に関わる活動を助言、支援した。③資料の科学的調査法の推進では、本館の資料調査および他機関との共同利用を念頭に、物理的・化学的・光学的各種調査を実施した。

▶ 標本資料「インド北東部サンタム・ナガの男性用斧ベルトと羽(レプリカ)」の勘定科目替え:岡田恵美

インド北東部ナガランド州東部キフェレ県に居住するサンタム・ナガに関する伝統的な資料であるベルトについて、本館の南アジア展示場の展示資料とするために勘定科目替えをおこなった。
男性が腰に巻いて、背中にダオと呼ばれる斧を差し込むためのベルト(現地サンタム語でノ・トロップ Noh Trüp)は、現地の職人に申請者が事前発注して入手したものである。現在では本資料を作る職人は数少なく、本館での保存やその展示は重要なものである。

▶ 標本資料「日本の仮面(釜神様)」の勘定科目替え:笹原亮二

2024年3月から開催する民博特別展「日本の仮面-芸能と祭りの世界」の準備の一環および研究資料として、提案者が特別展開催経費で購入した宮城県域から岩手県南部において、火難除けや窃盗除けとして家の中の大黒柱や台所などに飾られてきた「釜神様」について、勘定科目替えをおこなった。

▶ 標本資料「カナダ北西海岸先住民の版画」の勘定科目替え:岸上伸啓

本事業では、2021年度及び2022年度に実施した基盤研究(A)「北米アラスカ・北西海岸地域における先住民文化の生成と現状、未来に関する比較研究」(課題番号:19H00565)において研究資料として収集したカナダ北西海岸先住民版画(8枚)を、標本資料として勘定科目替えをおこなった。版画8枚のうち5枚はジークレー版画であり、残り3枚はシルクスクリーン版画である。これらはカナダ北西海岸先住民の版画の変化を知る上で重要な研究資料である。

展示

▶ コレクション展示「世界の狩猟具」(仮題) :池谷和信

2023年7月6日から8月8日まで展示をおこなった。
本プロジェクトは、民博が所蔵する世界の狩猟具に関するコレクション展示を通して、槍、弓矢、吹き矢、罠、銃などからなる世界各地の狩猟具の多様性を把握すること、現地で撮影した写真や動画とともに狩猟具(とくにカラハリ砂漠の弓矢とアマゾンの吹き矢に注目)を展示することで狩猟具の使い方を来館者に伝えること、狩猟からみえる人と動物とのかかわり方について理解を促すことを目的とする。なお、狩猟具の一部はすでに常設展示場にもみられ、今回の目的に合致する展示の該当箇所をパネルで案内することで常設展示場への来館者の誘導をすすめる。

博物館社会連携

▶ ボランティア活動支援:上羽陽子

国立民族学博物館におけるボランティア活動者の受入要項に基づき、登録したボランティア団体であるMMP(みんぱくミュージアムパートナーズ)の活動支援をおこなった。

▶ ワークショップの実施ならびにワークシートの運用:上羽陽子

学術的成果を広く社会に還元し公開することを目的とし、本館の研究活動ならびにその成果としての展示の内容を活用したワークショップおよびワークシートの開発を、計画的に実施した。
特別展関連ワークショップを3種類4日間(全4回)、企画展関連ワークショップを3種類3日間(全3回)、夏休みこどもワークショップ(1回)、年末年始イベント(全3回)を実施した。当館の教員や外部講師よるに講義、展示観覧および制作等の体験をとおして、参加者の文化人類学・民族学に対する社会の興味と関心を高めることができる内容とした。
ワークシートについては、ホームページにて公開し、使用希望者が自由にダウンロードできるように運用している。

▶ 音楽の祭日 2023 in みんぱく:福岡正太

「音楽の祭日」は、1982年にフランスで生まれた「音楽の祭典」にならい、毎年、夏至の日を中心に世界的に開催される音楽行事である。本館も「音楽の祭日」の趣旨に賛同し、社会連携の一環として「音楽の祭日2023 in みんぱく」を令和5年6月11日(日)にみんぱくインテリジェントホール(講堂)にて、会場参加の形式で開催した。

▶ カムイノミ及び「アイヌ古式舞踊」演舞の実施:齋藤玲子

当館が所蔵するアイヌの標本資料に対して、安全な保管と後世への確実な伝承を目的に、祈りの儀式(カムイノミ)を公開でおこない、あわせてアイヌ古式舞踊の演舞を、一般公開で実施した。
公益社団法人北海道アイヌ協会と調整をおこない、帯広カムイトウウポポ保存会が主体となり、令和5年11月29日(水)に準備と打ち合わせ、11月30日(木)に開催した。カムイノミ終了後には、今回の振り返りと次年度に向けた打ち合わせをおこなった。

▶ みんぱっくの改訂版制作(ソウルのこども時間):上羽陽子

学校機関や各種社会教育施設を対象とした貸出用学習キット「みんぱっく」は、パック制作後10年を耐用年数とし、また、時代に即した内容にするために改訂を行う必要がある。「ソウルのこども時間」は平成25 年に作成し運用を開始したもので、令和5年度で運用10年の改訂時期を迎えることから、本パックの担当である太田准教授を中心に、諸助教、神野特任助教(令和6年1月末退職)が改訂を行った。

▶ みんぱっくの改訂版制作(イスラム教とアラブ世界のくらし):上羽陽子

学校機関や各種社会教育施設を対象とした貸出用学習キット「みんぱっく」は、パック制作後10年を耐用年数とし、また、時代に即した内容にするために改訂を行う必要がある。「イスラム教とアラブ世界のくらし」は平成14年に制作・運用開始し、その後、平成24年に菅瀬助教(当時)が担当教員に加わって1回目の改訂を行った。令和5 年度は、改訂後の運用11年目となることから、本パックの担当である菅瀬准教授、相島准教授が改訂に着手した。

▶ 博物館社会連携事業強化プロジェクト:岡田恵美

本プロジェクトの目的は、社会連携事業検討ワーキンググループ(以下、社会連携WG)が主体となり、本館の博物館社会連携事業について既存プログラムの改良と新プログラムの研究開発によって強化することである。第4 期中期計画・中期目標において社会連携WG が掲げる、以下の課題(基幹活動)を遂行した。
1. 高等教育に対する教育プログラムの立案および実施
2. 教育研究機関との連携事業の実施と実用化
3. ワークショップ・ワークシートの開発
4. 貸出用学習キット「みんぱっく」の活用

▶ 「知的障害者の博物館活用に関する実践的研究――学習ワークショップ「みんぱくSama-Sama塾」」:信田敏宏

知的障害者を対象とした学習ワークショップ「みんぱくSama-Sama 塾」を開催した。知的障害者にとっても分かりやすく、楽しめる博物館の活用モデルを目指し、知的障害者が博物館を活用する際に必要とされる支援や改善点などを検討しながら実施した。