令和6年度文化資源計画事業一覧
資料関連
▶ 標本資料「カンボジアの影絵人形」の寄贈受入:山中由里子
本事業は、故・寺田吉孝名誉教授が2009年にカンボジアで入手した影絵人形2点を寄贈受入したものである。影絵人形は本館にも多数収蔵されているが人魚系の影絵は収蔵されておらず、収蔵資料の充実を図ることができた。本資料はこれまで、本館特別展および巡回展「驚異と怪異」にて展示公開されており、今後も利用が見込まれる資料であり、また東南アジアの芸能や想像力に関する研究資料として共同利用に寄与することが期待できる。
▶ 標本資料「米国先住民アーティストJeremy Arvisoのコンテンポラリー作品」の寄贈受入:伊藤敦規
本事業では、2024年4月に国立民族学博物館を訪問した米国先住民現代美術作家Jeremy Arviso氏より託されたイアリング1点の寄贈を受け入れた。本館における米国先住民資料の収蔵数は多いが現代美術作品は少なく、2020年代の先住民表現を知る貴重な資料として既存の民族誌資料との比較が可能となり、資料研究の可能性が増すことが期待できる。
▶ 標本資料「チベット・ポン教禳災儀礼(じょうさいぎれい)儀礼具」の寄贈受入:南真木人
本提案は、チベットに古くから伝わる民間信仰ポン教の禳災儀礼に用いられる儀礼具を、名誉教授である長野泰彦氏より寄贈受入し、研究資料として保存・活用することを目的とした寄贈受入である。これらの儀礼具は通常、儀礼後に焼却されるため現存が極めて稀であり、チベットの民間信仰(ポン教)の実態を示す貴重な物質文化資料であることから本資料の受入は学術的にも意義が大きい。今後、チベット宗教や儀礼文化に関する共同研究や教育活動への貢献が期待される。
▶ 標本資料「客家土楼模型」の寄贈受入:奈良雅史
本事業は、東京藝術大学建築学科が1986年に現地調査を行い制作した、客家の伝統的集合住宅「土楼」の模型2点(円楼・方楼)と付属資料として実測図18点の寄贈を受け入れたものである。土楼は客家文化を象徴する建築であり、現在は土楼の観光化が進む中、当該資料は居住空間として使用されていた時代の貴重な記録である。客家研究に加え、中国民居や民族建築の研究資料としても価値が高く、今後の共同利用や展示に大きく貢献することが期待される資料である。
▶ 標本資料「カザフスタンの女性用衣装、酒瓶」の寄贈受入:藤本透子
本事業では、中央アジア関連資料の充実と展示を目的に、カザフスタン製の女性用上着と酒瓶を受け入れた。酒瓶は、従来展示していた酒瓶がロシア製であると来館者から指摘を受け撤去されたことに伴い代替資料として在日カザフ人協会の高橋純一郎氏より寄贈された。女性用上着は、来歴が判明しているカザフ女性の葬送・追悼に関する資料であり、共同で研究を行っているアルマトゥ市の東洋学研究所のZ.タブンバエヴァ氏より寄贈された。
▶ 標本資料「ホピ民族の織機および制作道具等」の寄贈受入:伊藤敦規
本事業では、2023年11月に本館での映像民族誌制作のために招聘したホピのテキスタイル作家アッキマ・ホンヤンプティワ氏が本館で使用した織機、織物用の道具と材料一式、関連資料および付属品一式の寄贈を受け入れた。映像民族誌に登場する資料を収蔵することで、資料の散逸を防ぐと同時に実物の展示や研究などが行えるようになる。また、既存の織物資料の制作の様子が再現可能なため、既存の資料の研究の可能性が増す。
▶ 標本資料「倉田洋二・ミクロネシアコレクション」の寄贈受入:藤井真一
本事業では、作家・海洋生物学者の倉田洋二氏が収集したミクロネシア地域の民族標本の寄贈を受け入れた。当該資料は、フィリピンやパラオで収集された民族資料で構成されており、本館では収蔵しておらず現在では入手が困難な資料も含まれている。寄贈を受け入れたことで本館のミクロネシア関連資料が充実し、土方久功アーカイブの補完が進むとともに、ミクロネシア地域の物質文化の変遷や地理的特色に関する研究が促進されることが期待でき、今後の広範な利活用が見込まれる。
▶ 標本資料「ウズベキスタンの毛織物」の寄贈受入:藤本透子
本事業で受け入れた資料は、ウズベキスタン共和国カシュカダリヤ州で製作された毛織物2点である。2026年春の特別展の館外実行委員である宗野ふもと氏(筑波大学)が長期調査したウズベキスタン共和国カシュカダリヤ州で製作販売されていたものを、宗野氏をとおして提案者が入手した。2026年春の特別展「シルクロードの商人語り-サマルカンドの遺跡とユーラシア交流(仮)」で展示する。
▶ 標本資料の撮影等業務:末森薫
本事業は、標本資料を研究、展示、公開等に有効的に活用するために、標本資料の撮影、計測、およびそれらに付随する業務をおこなうものである。標本資料の視覚的な情報を画像として記録し蓄積することで、大学共同利用機関としての基盤を整備することを目的とする。
▶ 研究資料整理・情報化及び利用管理業務【標本資料関連】:企画課長
本事業は、本館が所蔵する標本資料に関する情報の作成及び資料の整理等を行うとともに、当該資料に関する情報サービス、展示準備・展示運営のための資料管理及び情報の作成・管理等を行うものである。
▶ 研究資料整理・情報化及び利用管理業務【データベース関連】:末森薫
本事業は、本館が所蔵する標本資料に関する情報の整理・作成等を行うとともに、標本資料に係るデータベースに掲載する情報の作成、整理、更新作業、「人類の文化資源に関するフォーラム型情報ミュージアムの構築」、「地域研究画像デジタルライブラリ/学術知デジタルライブラリ」に係るデータ整理業務を行うものである。
▶ 有形文化資源の保存・管理システム構築:日髙真吾
本計画事業の目的は、館蔵資料の保存と活用の両立を目的に、その保存・管理システムを緊急度の高さに応じて整備することにある。具体的には、①有形文化資源の保存対策立案では、総合的有害生物管理(IPM)の考えかたのもと、生物被害の防除・殺虫対策に関わる資料管理活動の計画、統括した。②資料管理のための方法論策定では、展示場や収蔵庫などの博物館環境の調査、解析、総括をおこなうとともに、収蔵庫再編成に関わる活動を助言、支援した。③資料の科学的調査法の推進では、本館の資料調査および他機関との共同利用を念頭に、物理的・化学的・光学的調査を実施した。
▶ 標本資料「アイヌ民族の裁縫作品(テケカラペ 山崎シマ子・山田弘美作品)」の勘定科目替え:伊藤敦規
本事業では、2024年10月に民族共生象徴空間(愛称:ウポポイ)で開催された第3回アイヌアートショーの出展作家山崎シマ子・山田弘美(刺繍サークル:テケカラペ)の作品(テーブルクロス1点、小物入れ1点、マタンプシ1点)の勘定科目替えをおこない、標本資料として受け入れた。本館未収蔵の作家・団体による現代作品を標本資料とすることで収蔵資料の幅が拡がり、共同利用の可能性が増す。
▶ 標本資料「ペルーのレタブロ(箱型祭壇)」の勘定科目替え:鈴木紀
提案者の科研費「ラテンアメリカの民衆芸術に関する文化人類学的研究」により入手した、Edilberto Jiménez Quispe作のレタブロについて、研究終了に伴い勘定科目替えを行い、標本資料として登録した。本資料は2024年作で、現代ペルーの人権弾圧を主題とする貴重な作品であり、本館が所蔵する既存コレクションとの差異も大きく、今後の研究・教育資源、共同利用に供する資料として活用が期待できる。
博物館社会連携
▶ ボランティア活動支援:上羽陽子
国立民族学博物館におけるボランティア活動者の受入要項に基づき、登録したボランティア団体であるMMP(みんぱくミュージアムパートナーズ)の活動支援をおこなった。
▶ ワークショップの実施ならびにワークシートの運用:上羽陽子
学術的成果を広く社会に還元し公開することを目的とし、本館の研究活動ならびにその成果としての展示の内容を活用したワークショップおよびワークシートの開発を、計画的に実施した。
企画展関連ワークショップを2種類3日間(全6回)、夏休みこどもワークショップ(1回)、年末年始イベント(全3回)を実施した。当館の教員や外部講師よるに講義、展示観覧および制作等の体験をとおして、参加者の文化人類学・民族学に対する社会の興味と関心を高めることができる内容とした。
ワークシートについては、ホームページにて公開し、使用希望者が自由にダウンロードできるように運用している。
企画展関連ワークショップを2種類3日間(全6回)、夏休みこどもワークショップ(1回)、年末年始イベント(全3回)を実施した。当館の教員や外部講師よるに講義、展示観覧および制作等の体験をとおして、参加者の文化人類学・民族学に対する社会の興味と関心を高めることができる内容とした。
ワークシートについては、ホームページにて公開し、使用希望者が自由にダウンロードできるように運用している。
▶ 音楽の祭日 2024 in みんぱく:福岡正太
「音楽の祭日」は、1982年にフランスで始まった「音楽の祭典」の精神にならった市民参加による共創型イベントである。プロ・アマ、ジャンルを問わず、本館での演奏を希望する個人・団体を公募して、くじで出演者を決定し、令和6年6月23日(日)にみんぱくインテリジェントホール(講堂)で開催した。市民の活動の場として博物館を開放する試みとして定着し、21回目も好評を博した。
▶ カムイノミ及び「アイヌ古式舞踊」演舞の実施:齋藤玲子
当館が所蔵するアイヌの標本資料に対して、安全な保管と後世への確実な伝承を目的に、祈りの儀礼(カムイノミ)を公開でおこない、あわせてアイヌ古式舞踊の演舞を、一般公開で実施した。
公益社団法人北海道アイヌ協会と調整をおこない、昨年度に引き続き帯広カムイトウウポポ保存会が主体となり、令和6年11月27日(水)に準備と打ち合わせ、11月28日(木)に儀礼を開催した。
公益社団法人北海道アイヌ協会と調整をおこない、昨年度に引き続き帯広カムイトウウポポ保存会が主体となり、令和6年11月27日(水)に準備と打ち合わせ、11月28日(木)に儀礼を開催した。
▶ 貸出用学習キット「みんぱっく」のメンテナンス:上羽陽子
みんぱっくは、運用期間を原則10年として制作されるため、運用期間中にモノ情報についての更新が必要となる可能性がある。みんぱっく「内容の見直し・引継ぎに関するルール」では、経年によるパックの軽微な情報更新について、毎年、企画課から各担当教員へ情報更新が必要かどうかのアンケート調査を行い、必要であれば「メンテナンス」として次年度の文化資源計画事業で実施することとしている。
上記ルールに基づき、各担当教員へアンケート調査を行った結果、「世界のムスリムのくらし①日常の中の祈り」パック担当山中教授より希望があり、モノ情報カード(G0123)の情報更新を行った。
上記ルールに基づき、各担当教員へアンケート調査を行った結果、「世界のムスリムのくらし①日常の中の祈り」パック担当山中教授より希望があり、モノ情報カード(G0123)の情報更新を行った。
▶ 貸出用学習キット「みんぱっく」の改訂版制作(イスラム教とアラブ世界のくらし):上羽陽子
学校機関や各種社会教育施設を対象とした貸出用学習キット「みんぱっく」は、パック制作後10年を耐用年数とし、また、時代に即した内容にするために改訂を行う必要がある。「イスラム教とアラブ世界のくらし」は平成14年に制作・運用開始し、その後、平成24年に菅瀬助教(当時)が担当教員に加わって1回目の改訂を行った。改訂後の運用11年目となる令和5年度からは、本パックの担当である菅瀬准教授、相島准教授が2回目の改訂に着手した。今年度は改訂2年目にあたり、「アラブのまちぐらし」とタイトルを変更してパックを完成させた。
▶ 博物館社会連携事業強化プロジェクト(事業費):岡田恵美
本プロジェクトの目的は、社会連携事業検討ワーキンググループ(以下、社会連携WG)が主体となり、本館の博物館社会連携事業について既存プログラムの改良と新プログラムの研究開発によって強化することである。第4期中期計画・中期目標において社会連携WGが掲げる、以下の課題(基幹活動)を遂行した。
① 高等教育に対する教育プログラムの立案および実施
② 教育研究機関との連携事業の実施と実用化
③ ワークショップ・ワークシートの開発
④ 貸出用学習キット「みんぱっく」の活用
① 高等教育に対する教育プログラムの立案および実施
② 教育研究機関との連携事業の実施と実用化
③ ワークショップ・ワークシートの開発
④ 貸出用学習キット「みんぱっく」の活用
▶ 「知的障害者の博物館活用に関する実践的研究――学習ワークショップ「みんぱくSama-Sama塾」」:信田敏宏
知的障害者を対象とした学習ワークショップ「みんぱくSama-Sama塾」を開催した。知的障害者にとっても分かりやすく、楽しめる博物館の活用モデルを目指し、知的障害者が博物館を活用する際に必要とされる支援や改善点などを検討しながら実施した。