展示
▶ 特別展「ラテンアメリカの民衆芸術」:鈴木紀
本プロジェクトは、令和5年(2023年)3月9日から5月30日まで開催した特別展「ラテンアメリカの民衆芸術」のための企画、収集、設計、施工、広報、会場管理、関連事業の企画運営等を3 年計画で行うものである。民衆芸術(英語のfolk art、スペイン語、ポルトガル語のarte popular)とは手工芸品の美的価値を強調する文脈で用いられる概念であり、歴史的に多様な文化が混淆してきたラテンアメリカ地域では、さまざまな民衆芸術が存在する。特別展では、主に国立民族学博物館が収蔵する資料を活用する。
▶ 特別展「交感する神と⼈――ヒンドゥー神像の世界」:三尾稔
令和3年度から資料選定や資料収集ならびに展示構想などの準備を行ってきた上記の特別展示を令和5年9月14日から12月5日の間、本館特別展示館で開催した。またこれに合わせて同名の図録を編集・出版した。
▶ 特別展「日本の仮面――芸能と祭り」:笹原亮二
国内各地には、さまざまな仮面がさまざまなかたちで用いられ、重要な役割を果たしている芸能や祭りが伝わっている。こうした各地の仮面と芸能と祭りの多様性は、仮面が用いられる芸能や祭りの歴史的な展開及び、それらの全国各地への伝播・定着とその後の地域社会における伝承を通じて形成されてきたとみることができる。本特別展では、こうした多様性に富んだ仮面のありようを、民博の所蔵資料を初め、各地の社寺や地域コミュニティ、博物館や資料館などが所蔵する様々な仮面の展覧を通じて紹介する。
▶ 企画展「北アメリカ北西海岸先住民のアート――シルクスクリーン版画を中心に」:岸上伸啓
北アメリカ北西海岸地域の自然と人びと、歴史を紹介した後に、ハイダやツィムシアン、クワクワカワクゥ、ヌー・チャー・ヌルス、コースト・セイリッシュらの北西海岸先住諸民族のユニークなスクリーン版画および最近のジークレー版画を展示した。また、北西海岸先住民社会の変化と版画との関係を検証し、北西海岸先住民版画がどのように変化してきたか、同版画が北西海岸先住民社会の中でどのような役割を果たしてきたかを検討し、その成果を提示した。
▶ 企画展示「水俣病を伝える」:平井京之介
1990年代以降、熊本県水俣・芦北地域では、非営利団体や行政を中心として、水俣病の歴史を伝える活動が活発におこなわれてきた。本プロジェクトでは、それらの活動に使われてきたモノや写真、ビデオ映像、展示パネル、教材等を通じて、水俣地域での水俣病の歴史を伝える活動とそれに取り組んでいる人びとを紹介する。
▶ 巡回展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」(福岡市博物館): 山中由里子
本展は、令和元年に国立民族学博物館で開催された特別展「驚異と怪異」の一部を巡回したもので、民博の民族資料を中心に、開催館所蔵の資料や九州各地から借用した資料など、ローカルな民俗資料も追加した。人魚、龍、怪鳥など世界と日本のさまざまな幻獣や怪物たちを紹介して、人間の想像力の面白さに迫った。
▶ 巡回展「ユニバーサル・ミュージアム――さわる!“触”の大博覧会」(岡山・KURUN HALL):廣瀬浩二郎
2022年10月より巡回展開催に向けて岡山放送の担当者と打合せを開始。12月初めに本館と岡山放送とのあいだで協約書を締結。12月中旬から下旬にかけて各出展作家と交渉し、出展作品を決定。2023年1月より関連イベントの企画、チラシ作成の具体的な打合せを始める。3月31日内覧会実施。4月1日~5月7日まで巡回展開催。5月末日までに出展作品を次の巡回展開催館である直方谷尾美術館に郵送(一部の作品は作家に返却)。
▶ 巡回展「ユニバーサル・ミュージアム――さわる!“触”の大博覧会」(福岡・直方谷尾美術館):廣瀬浩二郎
2024年7月~9月に開催予定の巡回展「ユニバーサル・ミュージアム」(直方谷尾美術館)について担当者、出展作家と打合せを行った。2023年4月~5月開催の岡山巡回展終了後、資料・作品を直方に輸送するので、スケジュール、費用分担等に関して岡山放送と直方谷尾美術館のあいだで調整した。協約書締結に向けた諸課題も解決し、直方展開催準備は順調に進んでいる。
▶ 巡回展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」(国立アイヌ民族博物館):山中由里子
本プロジェクトは、令和元年に国立民族学博物館で開催された特別展「驚異と怪異」の一部を中国に巡回するもので、民博の民族資料を中心に、ローカルな民俗資料も追加する。人魚、龍、怪鳥など世界と日本のさまざまな幻獣や怪物たちを紹介して、人間の想像力の面白さに迫る。
▶ 共催展示「九州山地の焼畑文化」(五木村歴史文化交流館):池谷和信
令和4年春には民博の企画展として五木村との共催で『焼畑:佐々木高明の見た五木村、そして世界へ』を行った。そこでは佐々木氏の撮影した写真や道具を中心にして、国内外での焼畑文化を紹介した。本展示では、民博と五木村との共同開催の形として五木村を軸にして九州山地全体の焼畑文化を五木村において紹介することを目的とした。本展示は同時に、九州山地の事例から日本やアジアの食と農と森のあり方の未来を考える試みであった。
▶ 国際連携展示「驚異と怪異――想像界の生きものたち」(中国巡回):山中由里子
本プロジェクトは、令和元年に国立民族学博物館で開催された特別展「驚異と怪異」の枠組みを中国の博物館数館において展開するための準備である。展示構成やコンセプトは民博で開催した特別展の枠組みを踏襲し、当館の民族資料に中国側の資料も追加し、人魚、龍、怪鳥など、さまざまな幻獣や怪物たちを紹介して、人間の想像力の面白さに迫る。
▶ 特別展示「吟遊詩人の世界」(仮題)の予備調査:川瀬慈
令和6年(2024年)度秋に開催予定の本館特別展示『吟遊詩人の世界』に向け、本プロジェクトの文化資源共同研究員と綿密な協議や、資料熟覧を重ねた。並行して特別展の全体構成を決め、各自が担当する展示セクションの資料を選定した。同時に、図録の構成や章立てを定め、執筆を開始した。
▶ 企画展「客家と日本」(仮題)の準備:奈良雅史
令和5年度は、日本における客家団体から寄贈していただいた標本資料の受け入れ手続きを進めてきた。加えて、9月にはプロジェクトメンバーの奈良、河合、横田で展示予定の標本資料を貸していただく台湾客家文化発展センターを訪問し、当該企画展の展示構想について説明を行ない、今後の協力関係を協議するとともに、企画展のために借用する具体的な資料の確認と選定を進めた。さらに、それを受けて12月には本館と台湾客家文化発展センターとのあいだで展示協力協定を締結した。また、7月と11月にはプロジェクトメンバーおよび日本の客家団体メンバーを交え、企画展に関連する内容の研究会および企画展開催に向けた打ち合わせを実施し、より具体的な展示内容の検討を進めてきた。
▶ 企画展示「アラビア書道のグローバルな展開―日本・西欧・中東のはざまで―」(仮題)の準備:相島葉月
2021年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されたアラビア書道(fann al-khatt al-‘arabi)は、イスラーム世界を代表するヴィジュアルアートの伝統として知られている。当初はアラビア文字を読み易く書くための技術であったが、モスクやクルアーンなどを装飾するための芸術として発展した。アラビア書道はイスラームの芸術表現と結び付けられがちであるが、現代アートとして作品制作に取り組む欧米や日本出身の非ムスリム作家も多数存在する。また、その題材もイスラームや西アジアの文化にとどまらず多岐にわたり、表現の手法も日々あらたなものが生まれている。国立民族学博物館西アジア展示場には、パリ在住のイラク人作家であるハサン・マスウーディによるアラビア書道作品が展示されているが、この度66 点の作品が当館に寄贈された。2021 年度の文化資源計画事業では日本におけるイスラーム書道の第一人者である本田孝一の作品、2022 年度の文化資源計画事業ではカイロ在住のポーランド人書道家のイザベラ・ウフマンの作品を収集した。本プロジェクトでは、この三人のアラビア書道作家の作品を通じて、ヨーロッパを介した日本と中東に関する文化的知識のグローバルな潮流を考察する。
▶ 特別展「民具のデザイン――生活文化の造形」(仮称)準備:日髙真吾
2025年3月開催の特別展「民具のデザイン−生活文化の造形」(仮称)準備をおこなった。2023年度は、特別展開催に向けた準備期間として位置づけ、本特別展の中心的な役割を果たす武蔵野美術大学の加藤幸治教授をはじめ、本特別展時の母体となる武蔵野美術大学展示パック「民具のデザイン図鑑」の関係者と国立民族学博物館において、資料熟覧及び展示内容について意見交換をおこない、展示内容をまとめることができた。
▶ 特別展「シルクロードの商人(あきんど)語り-サマルカンドの遺跡と遙かなるユーラシア交流-」(仮称)準備:寺村裕史
特別展に向けて、ウズベキスタン共和国のサマルカンドに於いて現地共同研究者も交えての実行委員会を開催し、借用資料の詳細ならびにリスト作成、民博収蔵資料からの展示候補資料の検討などを実施した。また、日本に於いては、ウズベキスタン文化芸術財団の担当者と打合せをおこない、特別展への共催あるいは協賛について前向きな交渉を進めることができた。
▶ 特別展「船(舟)と人類――アジア・オセアニアと海の暮らし」(仮称)準備:小野林太郎
今年度は2025年度に開催予定の特別展の準備として、まず展示する標本資料の候補選択とそれを基に実行委員メンバーによる検討を実施し、未公開となる東・東南アジアの舟、オセアニアにおける筏やアウトリガーカヌー、クラカヌーなどの貴重な資料を展示候補として選択した。また展示や図録デザインの担当候補の検討を進め、展示候補となる資料の現状確認も進めている。