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僕の帰る場所

日時:
2020年11月07日 @ 13:30 – 16:30 Asia/Tokyo タイムゾーン
2020-11-07T13:30:00+09:00
2020-11-07T16:30:00+09:00
場所:
国立民族学博物館 講堂
僕の帰る場所
開催日 2020年11月7日(土)
時間 13:30~16:30(開場13:00)
場所 国立民族学博物館 講堂
参加費 無料/要展示観覧券(一般 580円)
定員 160名
※事前予約の方は入場整理券を11:00から本館2階講堂前にて配付します。
主催 国立民族学博物館
お問い合わせ 国立民族学博物館 企画課 博物館事業係
TEL:06-6878-8210(土日祝を除く9:00~17:00)
FAX:06-6878-8242

みんぱくワールドシネマ 映像から考える<人類の未来>第49回上映会

僕の帰る場所 / Passage of Life

2017年/日本・ミャンマー/98分/日本語・ミャンマー語/日本語字幕付き

【開催日】2020年11月7日(土)13:30~16:30(開場13:00)
【監督】藤元明緒
【出演】カウン・ミャッ・トゥ ケイン・ミャッ・トゥ
【司会・解説】菅瀬晶子(国立民族学博物館准教授)
【解説】田村克己(国立民族学博物館名誉教授)

「映画解説」

祖国を離れて日本での平穏な生活を夢見るも、難民認定制度に翻弄される、ミャンマー人家族の葛藤の軌跡を見つめる人間ドラマ。東京郊外のアパートで暮らす母ケインは、日本に溶け込む小学生の兄カウンと甘えん坊の弟の子育てに奮闘しつつ、一向に難民申請の許可が下りない不安や、夫が不法滞在を理由に入国管理局に連行されるなど心労が重なり、病院に搬送されてしまう。夫を日本に残したまま、息子ふたりを連れて帰国したケインは、母と兄の家族が暮らす実家で健康を取り戻していくが、ミャンマー語も話せず文化の違いにとまどうばかりのカウンは、日本に帰りたい思いを募らせ家を飛び出す。本作で長篇デビューを飾る藤元明緒監督は、実の兄弟とその母親をキャストに迎え、前半は親世代の、後半は子ども世代の心情を軸に、仲のよい家族間にさえ齟齬が生じる移民を取り巻く複雑な側面を、一家の目線を尊重するべく誠実かつ細やかに描出。生きる場所や国籍がどこであれ、幸せを願い合える存在を拠りどころにすれば、心はいつでもひとつになれると、胸に染みわたる普遍的な家族劇に紡ぎ上げ、東京国際映画祭“アジアの未来部門”ではグランプリなど2冠に輝いた。(映画評論家 服部香穂里)

僕の帰る場所

正義なき、しかし情ある世界の片隅で

レバノンは今、映画ファンからちょっとした注目を浴びている国である。昨年公開された『存在のない子供たち』と『セメントの記憶』は、ともに国家から顧みられず、大都会ベイルートの繁栄の犠牲となったシリア難民たちの姿を、情け容赦なくカメラにおさめた秀作である。しかしながら、難民の待遇をめぐる問題はシリア紛争(2011年~)以前からずっとこの国でくすぶり、対立の火種となってきた。1948年以降この国に大量に逃れてきたパレスチナ難民は、レバノン市民権を得られず無国籍のまま、差別を受ける存在である。1975年から15年間続いたレバノン内戦は、まさにこの数年前、ヨルダンを追われてきたパレスチナ解放機構と、マロン派キリスト教徒を中心とする極右政党カターイブ(本作の主人公のひとりトニーが支持する、レバノン軍団の母体)の対立が発端となって起こった。内戦の傷は今も、人びとの心に深く刻まれている。
「この国の誰もが紛争に慣れすぎてしまった」。終盤、トニーの弁護士がいみじくも述べるように、レバノン人もパレスチナ人も、紛争にかかわる話題になると感受性が鈍磨したかのような一面をみせることを、わたしは調査中しばしば感じてきた。そのたびにうんざりしつつ、同時に今どき日本ではお目にかかることのない懐深い情をみせられ、結局その情にほだされて長年かの地に通っている。正義など中東のどこにもないと、誰もが言う。しかし正義なき世界を救う情は、まだパンドラの箱の底に残っている。そんなことを感じさせてくれる傑作である。(菅瀬晶子)

ミャンマーの明日を考える

私は、この映画を次の二つの観点から、とても興味深く鑑賞しました。一つは、主人公一家の、日本とミャンマーにおける生活の細部や言動の違いです。それが、家族間の軋轢や、カウン少年の苛立ち、戸惑いなどを生み出すことになりますが、異文化をまたいで生きていくことの難しさを映像をとおして語ってくれます。もう一つは、家族の在り方です。ミャンマーは人と人とのつながりが大切にされますが、それが最も濃密に表れ展開するのが家族という場です。今ミャンマー社会は、「転換期」にあるといえます。映画上映会の翌日となる11月8日は、アウンサンスーチーさんの「民主化」政権を問う総選挙です。この映画は、単に政治だけでなく、社会の在り方を含めたミャンマーの明日を考える機会を与えてくれます。(田村克己)

映像から考える<人類の未来>国立民族学博物館 菅瀬晶子

映画がこの世に誕生して、120年あまり。最初は日常生活の一端を切り取ったものでした。いまや日本では年間に1300本に迫る数の映画が公開され、その内容も多種多様です。世界のさまざまな地域で、現在進行形で起きている問題を扱う作品も年々増えてきました。問題意識を喚起する手段として、映画は実に有効なのです。
みんぱくワールドシネマでは、所属する研究者の個別研究や現在進められている研究プロジェクトの内容に沿った映画を選び、その内容を研究者が解説することによって、最新の研究成果と映画のより深い理解を観客のみなさまと共有することを目的としています。紛争、差別、環境変動などを超えて、異なる価値観を持つ人びとはどう共存してゆくべきか。終映後、あらたな視座がみなさまの中に生まれれば、さいわいです。

申込方法

※ 定員に達しましたので、申込受付を終了しました。