特別研究・国際シンポジウム「コロナ禍に対処する:ローカルな対処としての文化の免疫系の国際比較」
特別研究「コロナ禍に対するローカルな対処としての「文化の免疫系」に関する比較研究」 関連
日 程 | 2023年3月4日(土)~ 5日(日) |
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場 所 | 国立民族学博物館 第4セミナー室(本館2階) |
言 語 | 英語(日英同時通訳あり) |
参 加 | 申し込み不要/参加無料/定員50名(先着順) |
連絡先 | オンライン参加希望の方は、以下までメールください。 Zoomの招待状を送ります(オンラインは英語のみでの開催です)。 島村研究室 ess★minpaku.ac.jp (★を@に置き換えて送信ください。) |
趣旨
新型コロナウイルス感染症がほぼ同時に地球全体に広がるという事態は、我々、人類の社会に甚大な影響を及ぼしたことは言うまでもない。吉田憲司は、私たちが現在の生活を送るうえで当たり前と思って来た慣行やルール、言いかえれば、人類が近代に入って作り上げてきたあらゆる制度や規 範の成り立ちやありようが洗い出され、その意義と存在理由が改めて問われていると主張する。つまり、近代世界システム、グローバル化といった現象をはじめ、国民国家、民主 主義、国連や WHO, IOC などの国際機関、学校、病院、監獄、企業、物流、娯楽、情報メディアなどなどである。それは、人類に対して大きな課題を突きつけるものであると同時に、とくに現在「現代文明と人類の未来」を大きなテーマの一つとして研究を進めている国立民族学博物館にとっても大きな課題を突きつけるものとなっている。
一方、宗教学者の島田裕巳は、新型コロナウイルスの流行は宗教に致命傷を与えた、と主張する。というのも宗教は、信者が集まることによって成り立つものであり、その活動に大幅な制限が加えられるからである。しかし人類学が関心を持ってきたミクロかつローカルな文化実践に関しては、必ずしも人が集まるわけでもない。例えば、シベリアやモンゴルにおいてシャーマニズムは多くの人々が集まるような儀礼はしないものの、自然/社会的環境変化が引き起こす文化的外傷に対してコミュニティを守る「文化の免疫系」としての役割を果たしてきた。また非西欧世界では、いわゆる「自然主義」的な思考が希薄であるものの、コロナという目に見えない「非人間」への対処をなさざるを得ない状況にある。
こうした状況を踏まえ、世界中の諸地域で文化の免疫系とも呼べる様々な対抗策がなされていると考えられる。そこで本シンポジウムでは、コロナ禍に対してどのような「文化の免疫系」が発動しているか、その態様を国際比較考察することを目的とする。
感染症に対する対処法に関して、バイオメディシンの実施法を含めてローカルな差異があるといえる。そこで本シンポジウムでは「コロナ禍にいかに対処してきたか」という「対処法」を「文化の免疫系」と再定位し、いろいろな国や地域、あるいは現場での「ローカルな対処」の事例を集めていくことで、このパンデミックにいかに人間が対処しているのか、パンデミックが近代諸制度はもとより、人類文明に与えた意味を考察していきたい。
プログラム
第1日目 3月4日(土)
13:30 – 13:40 | 開会挨拶 吉田憲司(国立民族学博物館長) |
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13:40 – 13:50 | 趣旨説明 島村一平(国立民族学博物館) |
発表
14:00 – 14:40 |
中国における文化的免疫システム–COVID-19 への対応 韓敏(国立民族学博物館) |
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14:40 – 15:20 |
中国における COVID ゼロ政策のもとでの老人ホームの高齢者の窮屈だが活発な生活 パク・ヨリ (ミシガン大学) |
15:20 – 16:00 |
COVID-19の時代に家庭生活を再編すること:日本における移住と修繕の実践 北川真紀 (東京大学) |
16:00 – 16:20 | ティーブレイク |
16:20 – 17:00 |
コロナ禍における保健・医療従事者の排除と包摂 中本剛二(大阪大学) |
17:00 – 17:40 |
COVID-19の流行が大学生の生活と社会に与えた影響 渡邊 香(国立国際医療研究センター/国立看護大学校) |
第2日 3月5日(日)
10:30 – 11:10 |
バングラデシュにおける COVID-19 パンデミックと早婚の増加 イスラーム・ヌルル(UNFPA)、松岡悦子(奈良女子大学) |
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11:10 – 11:50 |
医薬品メシアニズム:アジアにおけるケーススタディ ラスコ・ポール・ギデオン(フィリピン大学ディリマン校) |
11:50 – 12:50 | 昼食 |
12:50 – 13:30 |
恐怖に対抗する信仰、ソーシャル・ディスタンスに対抗するコミュニティ: COVID-19パンデミック時のフィレンツェにおける宗教団体の資源と役割 カステラーニ・ベニアミノ・ペルッツィ(ピサ高等師範学校) |
13:30 – 14:10 |
韓国の病い「鬱火病」から「コロナレッド」への復活を探る 諸昭喜(国立民族学博物館) |
14:30 – 15:15 | ディスカッション |
15:15 – 15:30 |
閉会の辞 韓敏(国立民族学博物館) |