一般公開シンポジウム 「日本の商業捕鯨の現状を考える:環北太平洋地域研究の視点から」
開催日時 | 2023年5月28日(日)13:00~17:00 |
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開催場所 | 国立民族学博物館 第4セミナー室+オンライン併用 |
主 催 | 国立民族学博物館共同研究「環北太平洋地域の先住民社会の変化、現状、未来に関する学際的比較研究――人類史的視点から」(2020.10-2023.3) |
参 加 |
※ なお、オンラインでの参加希望の方は、電子メールinuit(アットマーク) |
趣旨
クジラとはクジラ目の海棲哺乳動物の総称であり、ネズミイルカやシロイルカのような小型のものからシロナガスクジラのような大型のものまで、約85種類が存在しています。クジラと人間との関係は5000年以上の歴史があります。その関係の中には、人間がクジラを捕獲し、それを資源として利用するという関係が存在しています。現在でも、環北太平洋地域のロシアチュコト半島とアラスカの先住民や、カナダとグリーンランドのイヌイットは大型クジラを捕獲しています。また、日本とアイスランド、ノルウェーにおいては商業捕鯨が行われています。今回のシンポジウムでは、日本の商業捕鯨に焦点を当て、広い視野から現状と将来について報告し、検討します。
世界の捕鯨の歴史の節目のひとつは、1600年代以降に欧米人らが世界各地の海域に鯨油資源を求めて進出し、捕鯨を行ったことだと言えます。この商業捕鯨は、漁場や捕鯨の方法、操業形態を変えながら、国際捕鯨委員会IWCで1982年に合意を見た大型鯨類13種の捕獲の一時的停止(モラトリアム)まで続きました。その後も、ノルウェー、アイスランド、日本は、多くの各国政府や環境団体、動物の権利団体の反対にあいながらも、商業捕鯨や調査捕鯨として捕鯨を継続してきました。このため1980年代以降、商業捕鯨の再開の可否は国際問題として取り上げられ、大きな政治的論争となりました。
年を経るごとに商業捕鯨の再開が難しくなる国際情勢の中で、日本政府は国際捕鯨取締条約から離脱することを決定し、2018年12月26日にIWCから脱退することを通告し、2019年6月30日に正式脱退しました。そして2019年7月から日本の排他的経済水域においてミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラの3種を対象とした商業捕鯨を再開しました。一方、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、捕鯨基地のひとつである宮城県石巻市鮎川は被災し、壊滅的な被害を受けてしまいました。また、2020年から猛威を振るったコロナウィルス感染症の拡大も捕鯨の実施や鯨肉の流通・販売にも大きな影を投げかけました。さらに、ノルウェーやアイスランドからの鯨肉の輸入が日本の商業捕鯨に及ぼす影響も懸念されてきました。
では、現在、日本の商業捕鯨はどのような状況にあるのでしょうか。今回のシンポジウムでは、次のような講演に基づいて、日本の捕鯨の現状と将来を考えてみたいと思います。
はじめにでは、岸上伸啓が世界と日本の捕鯨の現状について概説し、今回のシンポジウムの背景を説明します。基調講演では、森田勝昭が東日本大震災後の小型捕鯨の復興について講演します。その後、赤嶺淳が調査捕鯨から商業捕鯨へと移行した日新丸船団の軌跡について講演します。そして浜口尚が2024年以降のアイスランド捕鯨を展望します。アイスランドとノルウェーの捕鯨は、日本の捕鯨にも相互に関係していることが提示されます。これらの講演を受けて、石川創がコメントし、総合討論を行います。
プログラム
13:00 – 13:20 | 岸上伸啓(国立民族学博物館)「はじめに――世界の捕鯨をめぐる現状と趣旨説明」 |
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13:30 – 14:30 | 森田勝昭(甲南女子大学 名誉教授)講演1「東日本大震災と小型捕鯨~クジラ捕りが津波に遭ったとき~」 |
14:35 – 15:05 | 赤嶺淳(一橋大学)講演2「日新丸船団の軌跡 調査捕鯨から商業捕鯨へ」 |
15:10 – 15:40 | 浜口尚(園田学園女子大学短期大学部 名誉教授)講演3「2024年以降のアイスランド捕鯨を展望する」 |
15:50 – 16:20 | コメント 石川創(大阪海洋研究所) |
16:20 – 17:00 | 総合討論 |