2019年度地域研究コンソーシアム年次集会一般公開シンポジウム 「グローバル化時代の文化力――〈地域知〉のマネージメント」

日時 | 2019年11月2日(土) 13:30 – 17:10 |
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場所 | 国立民族学博物館 第4セミナー室(本館2F) |
主 催 | 国立民族学博物館、地域研究コンソーシアム |
参加 | 一般公開(参加無料/事前申込不要) |
概要
グローバル化の時代と言われて久しい。交通システムや情報技術の世界的展開は、かつては僻地と呼ばれていたような地域においても先端的な知識のアクセスを容易にしたり、あるいは逆にローカルな地からの積極的な情報発信を可能にするなど、ダイナミックで双方向的な情報の流通が一般的なのもとなりつつある。そうしたなか〈地域知〉についてのマネージメントのありようが鋭く問われているといえる。本シンポジウムでは、文化をベースとする情報がいかなる文脈の中で形成され、どのようなかたちで発信され、そしてどのような影響力をもつのか、〈地域知〉のマネージメントという視点から考えていきたい。
プログラム
司会 丹羽典生
13:30 – 13:35 | 開会挨拶 吉田憲司(国立民族学博物館長) |
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13:35 – 13:40 | 趣旨説明 韓敏(国立民族学博物館) |
13:40 – 14:10 | 講演①『アルテ・ポプラル展――ラテンアメリカの〈地域知〉を表象する試み』 鈴木紀(国立民族学博物館) |
14:10 – 14:40 | 講演②『イタリアの食にかかわる運動にみる「地域」』 宇田川妙子(国立民族学博物館) |
14:40 – 15:20 | 休憩 + 展示場案内 |
15:20 – 15:50 | 講演③『家廻り行事を通じて伝達される〈地域知〉――日本と韓国の事例より』 神野知恵(国立民族学博物館) |
15:50 – 16:20 | 講演④『「中華」の再生産――「漢服北京」の活動を中心に』 周星(愛知大学) |
16:20 – 16:30 | 休憩 |
16:30 – 17:00 | コメント・質疑応答 |
17:00 – 17:10 | 閉会の挨拶 |
発表要旨
『アルテ・ポプラル展――ラテンアメリカの〈地域知〉を表象する試み』
鈴木紀(国立民族学博物館)
アルテ・ポプラルは「民衆の芸術」を意味するスペイン語である。ラテンアメリカ諸国では、民衆の文化的創造力を表現する文脈でこの概念が用いられるが、「民衆」の意味は国によって異なる。本発表では、国立民族学博物館で開催される企画展「アルテ・ポプラル――メキシコの造形表現のいま」の準備作業を振り返り、メキシコらしさを表象するために、他のラテンアメリカ諸国における「民衆」をめぐる〈地域知〉の検討が必要であったことを述べる。
『イタリアの食にかかわる運動にみる「地域」』
宇田川妙子(国立民族学博物館)
近年ローカルフードへの関心が世界的に高まっている。そこでは、環境問題、地域振興など多様な問題意識や利害のもと、民間組織をはじめ、国や地方自治体、国際機関、それを商機とする市場、メディア、最近ではSNS など、さまざまなアクターや媒体が関わり、そのなかで「ローカル」な食が「(再)創造」されている。そうした動きの先駆けの一つ、スローフード運動を生んだイタリアを事例として、食という現場から〈地域知〉のダイナミズムの一端を問題点も含めて明らかにする。
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『家廻り行事を通じて伝達される〈地域知〉――日本と韓国の事例より』
神野知恵(国立民族学博物館)
韓国各地では現在も旧正月に家々や商店を訪ねて農楽を演奏する「地神踏み(チシンパルキ)」が行われている。また、日本でも正月や盆、地域の祭礼の際に家々で芸能の奉納を行う「門付け」を各地で見ることができる。家は人々の生活や人生の拠点であり、その家でより良い暮らしを送りたいと願う気持ちがある限り、そうした家廻りの行事は効力を発揮し続けるといえる。本発表では、家廻り行事を通じて地域コミュニティ内での情報や知恵の共有、人間関係の強化、地域アイデンティティの構築などが実現されている点に注目し、〈地域知〉の伝達という側面から家廻り行事の重要性や可能性について述べる。
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『「中華」の再生産――「漢服北京」の活動を中心に』
周星(愛知大学)
先進諸国の地域研究における中国の位置づけは、常に国際社会との対極におかれる一地域に過ぎないが、この図式に基づいて中国を理解しようとする時、中国自らの「中華思想」とよく衝突する。帝国時代の「中華思想」は国民国家としての中国に放棄されたように見えるが、時折温存され、復活し、再生産されることによって、中国の国際観や民族観に影響し続けると言える。「漢服北京」という民間組織の活動から、「中華」の再生産が国レベルのみならず、民間レベルにおいても行われることを明らかにする。