東アジア展示<中国地域の文化>
中国地域では、広大な面積と高低差のある地形が生み出す多様な自然環境のもと、さまざまな民族文化が育まれてきました。漢族が人口の90%以上を占め、平野部を中心に全国に居住しています。大陸の55の少数民族は、おもに西南、西北、東北地方の高地や草原に居住しており、台湾には漢族のほか先住のオーストロネシア系民族が居住しています。また、世界各地に、中国を故郷とする華僑・華人がくらしています。多様な生活環境から生み出されたさまざまな民族の文化を、歴史や地域性をふまえ、生業、装い、楽器、住居、工芸、宗教と文字、漢族の婚礼や祖先祭祀、台湾の原住民族、華僑・華人をテーマに紹介します。
展示セクション
●生業 ●民族楽器 ●チワン族の高床式住居 ●装い ●工芸
●台湾原住民族 ●宗教と文字 ●華僑・華人● 継承される伝統中国
主な展示品紹介
製麺機
- 標本番号:H0207855
- 地域:山西省 定襄県
- 民族:漢
- 1997年収集
小さな孔(あな)から麺たねを押し出して、そのまま沸騰したお湯や油にいれて麺のかたちに成形するための道具。リョクトウやソバといったグルテンが含まれない麺作りに用いられることも多い。
ひょうたん笛(葫蘆絲)
- 標本番号:H0237918
- 地域:雲南省 昆明市
- 民族:タイ(傣)
- 制作者:德全
- 2007 年制作
かつてひょうたん笛はしゃべる楽器と呼ばれていた。タイ族の男性は夜になるとさまざまな詩を演奏しながら村を歩き、恋心をよせる女性の家のそばでは自作の詩を奏でた。女性や家族は演奏から男性の人柄を評価したという。
チワン族の高床式住居(再現)
- 地域:広西チワン族自治区靖西県
- 2014年制作
居間の奥には祭壇が設けられ、祖先や神祇の名が墨書された紅紙が貼られている。前門と祭壇を中心軸に据える配置、漢字使用や対聯・門神を貼る行為には漢族の影響が見て取れる。
チャン(羌)族の装い
- 標本番号:H0100732
- 地域:四川省 茂県
- 1982年収集
内側に羊の毛のついたベストと刺繍靴は、各地のチャン族にほぼ共通する装いである。展示しているチャン族の衣装は、年齢・性別を問わず黒と白がアクセントになっており、特に黒地に白糸、白地に黒糸で施す刺繍が特徴的である。
鷹爪杯【インザォベイ】(鷹の爪を用いた酒杯)
- 標本番号:H0230201
- 地域:四川省 凉山自治州
- 民族:イ(彝)
- 2003年収集
黒、黄、赤の三色を用いた、幾何図案の漆器は四川涼山イ族の特徴である。鷹の脚のついた酒杯は、昔支配者のみが使用していたが、いまは、民族の工芸として知られている。
パイワン族の衣服(女性用)
- 標本番号:H0274450
- 地域:台東県
- 民族:パイワン(排湾)
- 2012年製作
婚礼や収穫祭といった儀礼の場で着用される女性の衣装。太陽と蛇と壺は首長家が誕生した伝承に登場、刺繍のモチーフによく用いられる。基調となる赤、黄、緑の色は着用するものを守護する色。
チベットの持仏入れ容器
- 標本番号:H0064743
- 地域:チベット自治区
- 民族:チベット(蔵)
- 1910年代収集
信仰する持仏をこれに入れ、首から提げて携帯する。容器にはチベット仏教の8つの吉祥の印が彫刻されている。小窓の中からのぞく仏像は女性尊格のターラー(多羅)菩薩。
南方獅子
- 標本番号:H0229942
- 地域:北京市
- 2003年制作
獅子舞は邪気を払い福を招くとされ、華僑・華人にとって年中行事や冠婚葬祭に欠かすことのできない伝統芸能である。獅子を身に着け実演することで華人アイデンティティを高める若者も多い。
花嫁の輿
- 標本番号:H0254556
- 地域:安徽省 宿州市
- 民族:漢
- 制作者:徐子松
- 2007年制作
12世紀南宋時代から輿は花嫁を迎える乗り物として使用され始めた。4人担ぎと8人担ぎとの2種類がある。この輿は4人で担がれる。傘や楽隊が先導し、嫁入り道具を入れた箱の行列がつづく。