南アジア展示
南アジア地域は、北部の山岳地帯から西はアラビア海沿岸、東はベンガル湾沿岸にいたるさまざまな自然環境のもと、多様な宗教や文化、生活様式をもつ人びとが共存しあう知恵を育んできました。経済発展が著しい現代においても、その知恵は保たれています。この展示では、宗教文化や生業・工芸の多様性、都市を中心とした活気あふれる大衆文化、またグローバル化のなかで花ひらく染織文化のすがたを紹介します。
展示セクション
●躍動する南アジア ●宗教文化-伝統と多様性
●生態となりわい ●都市の大衆文化
●染織の伝統と現代
主な展示品紹介
山車(だし)
- 標本番号:H0175972
- 地域:タミル・ナードゥ州チェンナイ インド
- 1991年収集
山車はヒンドゥーの神の乗り物である。南インド、チェンナイ(旧名マドラス、センナイともいう)のパールッタサーラティ寺院では、4月から5月の大祭のときに、主神パールッタサーラティを乗せた山車をひきだし周囲を巡行する。沿道の信者たちは、山車に乗った祭司を介して神に供えものをささげる。
カートとアクセサリー売り
- 標本番号:H0200113 ほか
- 地域:インド
- カート:1994年収集、アクセサリー:2014年収集
女性用腕輪や幼児用腕輪、シール状の額飾りや既婚の証としての化粧用具シンドゥールをはじめ、インドでは食料品や衣料品、家庭用品など、多くの身の回りの品が路上で売られている。
ジャガンナート神、スバドラー神、バララーマ神(右から)
- 標本番号:H0173502-H0173504
- 地域:オディシャー州プリー インド
- 1990年製作
インド東部のヒンドゥー教の聖地プリー市にあるジャガンナート寺院に祀(まつ)られている神格。部族神信仰に起源をもつと推測されるが、現在はクリシュナ神と同一視される。雨季にこの三神を巨大な山車に乗せた巡行儀礼がおこなわれる。
サリーをつけた聖母子像
- 標本番号:H0276922, H0276924
- 地域:タミル・ナードゥ州 インド
- 2014年収集
ウェーラーンガンニの癒しの聖母マリアは、非キリスト教徒からも篤(あつ)く信仰されている。
祭礼用人形飾り
- 標本番号:H0173610 ほか
- 地域:タミル・ナードゥ州チェンナイ インド
- 1990年収集
9月から10月におこなわれるヒンドゥー教の祭礼ナヴァラートリのとき、主に南インドでひな壇を作り、さまざまな人形を飾る風習がある。神像が中心ではあるが、ほかにも結婚式の参加者や楽士、動物、ときにはさまざまな聖人までが並べられている。
夏営地用テント(スパイダー・テント)
- 標本番号:H0275881
- 地域:ハ県 ブータン
- 1980年代製作
ブータン高地ではヤクを飼い、その乳、毛糞(ふん)、肉などを利用する。夏のあいだ、ヒマラヤ山麓で放牧するときにはヤクの毛で織った黒いスパイダー・テントに泊まる。乳からはバターを、残った脱脂乳からは乾燥チーズを作る。
儀礼用濁酒(どぶろく)入れ(バイラヴ神)
- 標本番号:H0276043
- 地域:バクタプル郡ティミ ネパール
- 2000年代製作
シヴァの忿怒(ふんぬ)の形相(けいそう)であるバイラヴ神がついた儀礼用の濁酒容器。ネワール人の絵師カーストのチトラカールが作る。粘土で仮面の下地を作る彼らにとって、バイラヴの彫刻はお手のものだ。
天秤(てんびん)
- 標本番号:H0188758
- 地域:カスキ郡ポカラ ネパール
- 1992年収集
金細工の店頭で、金(きん)の重さを量るのに用いる。客に見えないところで正確に量るには、より繊細な天秤を使う(「砂金採り」で展示中)。重さの最小単位はトウアズキ1粒(約0.12グラム)で、ラルと呼ばれる。100ラルが南アジアの伝統的な重さの単位1トラになる。
婚礼衣装
- 標本番号:H0228479 ほか
- 地域:インド
- 2002年収集
婚礼は1990年代から年々華美になり、有名デザイナーの作品も盛んに使われるようになっている。とくに、インド西部の藩王家、いわゆるマハラジャのファッションのデザインや素材を利用しながら、婚礼衣装として現代化したものが人気である。
クリケットのユニフォームと防具
- 標本番号:H0276774-H0276779
- 地域:インド
- 2014年収集
- コルカタ・ナイトライダーズ 寄贈
2008年に設立されたインドのプロクリケット・リーグのチーム、コルカタ・ナイトライダーズの公式ユニフォーム。
ホルン(ナラシンガ)
- 標本番号:H0276078
- 地域:ネパール
- 2013年収集
ネパールの広い地域で演奏される銅製のホルンの一種。ヒンドゥー教徒の結婚式や寺院儀礼で演奏をおこなう器楽アンサンブル(パンチャイ・バージャー)を構成する楽器のひとつである。
ラバーリーの衣装
- 標本番号:H0275778 ほか
- 集団:カシ・ラバーリー
- 地域:グジャラート州カッチ インド
- 2013年収集
【男性用:左】上衣(カミス)、下衣(ガンディ)、頭巾(ルマル)、肩掛け(カティヨ)の組み合わせは、西洋式のシャツやズボンが一般的になりつつあるインド西部において牧畜を主な生業としているラバーリーの特徴的な衣装。
【女性用:右】ブラウス(カンチャリ)、下衣(カリィユ)、被り布(ルディ)の組み合わせは、インド西部で多く見ることのできる衣装形態である。装身具や衣装の染め文様、刺繍文様で所属する集団や社会的階層などを判断することができる。
携帯用紡ぎ車
- 標本番号:H0275816
- 地域:グジャラート州 インド
- 2013年製作
マハートマー・ガーンディーによるインド独立運動の象徴ともなった紡ぎ車。組み立て式で、その形態からキターブ・チャルカ(本のかたちの紡ぎ車)とよばれている。
サリー(タテヨコ絣)
- 標本番号:H0106397
- 集団:サルビ
- 地域:グジャラート州パタン インド
- 1983年収集
パトラとよばれる絣(かすり)のなかでももっとも技術的に難しいタテヨコ絣による絹製サリー。インドネシア向けのパトラが生産され、さらにはパトラ文様のロウケツ染め布もジャワ島でうみだされた。