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野生性と人類の論理―ポスト・ドメスティケーションを捉える4つの思考 ★

館外での出版物

2021年4月26日刊行

卯田宗平(編)

東京大学出版会
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

本書は人類にとって動植物の野生性とは何かを問うたものである。本書では、養蜂や鷹狩り、狩猟、鵜飼、水田植物、タケなどに注目し、人類社会と動植物の野生性とのかかわりを4つに類型化することで新たな解釈枠組みを示した。

おすすめのポイント、読者へのメッセージ

  • 本書は、養蜂のミツバチや鷹狩りのタカ、狩猟の猟犬、鵜飼のウ、スイギュウ、イベリコブタ、腸内細菌、アユなどユニークな事例に着目し、人類社会と動植物の野生性とのかかわりを初めてまとめた学術書です。
  • 具体的には、世界各地の事例を「野生に向かう力の利用」「野生性と扱いやすさのバランス調整」「ドメスティケート後の改変」「意図しないドメスティケーション」というタイプに分け、現象を理解する枠組みを提示しました。
  • 各事例は、長期フィールドワークの経験をもち、その分野の気鋭の研究者による記述であり、文系・理系を問わず、各章の分析レベルも高い。
  • これまでジャレド・ダイアモンドら欧米の研究では、人類による動植物の家畜化や栽培化の事例から、対象を社会にとりこむ技術を明らかにしてきた。一方、本書は、逆に動植物をとりこまない、とりこみすぎない事例にも着目し、人類による動植物の野生性利用の実態を世界で初めて体系化しました。

目次

序 章 ポスト・ドメスティケーションという思考――鵜飼研究からの展開(卯田宗平)

 

第一部 野生に向かう力の利用
第一章 野生を飼いならすことの難しさ
 ――インドネシア西ジャワ州におけるコピルアク生産の事例から(須田一弘)
第二章 あえてドメスティケートしないこと
 ――ミツバチ養蜂戦略の違いから家畜と野育を考える(竹川大介)
第三章 博物館の展示場で生き物文化を考える
 ――ミツバチと人の関係から(池谷和信)
第四章 アンチ・ドメスティケーションとしての「野生」
 ――双主体モデルで読み解くバカ・ピグミーとヤマノイモの関係(安岡宏和)

第二部 野生性と扱いやすさのバランス調整
第五章 慣れと狩りの「心の理論」
 ――鷹猟における関係性の構築と葛藤(竹川大介・南香菜子)
第六章 駆け引きすることの有効性――九州の狩猟犬の事例から(藤村美穂)
第七章 スイギュウの「再ドメスティケーション」
 ――フィリピンのカラバオの乳用化とポリティカルな力学(辻貴志)
第八章 リバランスの論理
 ――育てたウミウがみせる個性と鵜匠たちによる介入の事例から(卯田宗平)

第三部 ドメスティケート後の改変
第九章 立地条件の克服と養殖技術の開発
 ――「半天然アユ」の誕生とニーズ(井村博宣)
第一〇章 食用ドジョウの過去・現在・未来
 ――水田環境の悪化が招いた品種改良の進展(中島 淳)
第一一章 つくられた野生――エノキタケ栽培がたどった道(齋藤暖生)
第一二章 人為と人工のあいだの家畜動物
 ――イベリコブタに求められる自然を考える(野林厚志)

第四部 意図しないドメスティケーション
第一三章 イヌのドメスティケーションをニューギニア・シンギング・ドッグから考えてみる(小谷真吾)
第一四章 意図せざるドメスティケーション
 ――人間と細菌のかかわりを手がかりに(梅﨑昌裕)
第一五章 ドメスティケーションの実験場としての水田
 ――水田植物の採集と栽培の事例から(小坂康之・古橋牧子)
第一六章 農耕空間と親和的な「野生」植物のドメスティケーション
 ――タケと東南アジアの焼畑(広田 勲)
第一七章 ドメスティケーションの背景としての民俗自然誌的技術
 ――生産技術の文明論的序説(篠原 徹)

終 章 いま,野生性を問うことの意義――成果と展望(卯田宗平)