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戦争の記憶と国家——帰還兵が見た殉教と忘却の現代イラン

館外での出版物

2021年9月30日刊行

黒田賢治(著)

世界思想社
【中東地域研究成果】

出版物情報

主題・内容

中東の大国イランで政治的に台頭してきた「軍」勢力の社会的支持基盤を、イラン・イラク戦争のある帰還兵に着目しながら、フィールドワークを通じて彼と彼の周辺で生起してきた事件・事物を手掛かりに検討した。

おすすめのポイント、読者へのメッセージ

イランや中東に馴染みのない読者にも歴史や国際関係の概要がつかめるだけでなく、国家による戦争と犠牲のレトリックやポピュラーカルチャーとの関係、さらには戦後を生きる人々の日常・非日常のポリティクスを幅広い読者層を対象に描いています。

目次

序 章

第1章 中東の大国イランにおける「軍」

はじめに
一、中東の大国イランの誕生
二、イラン・イスラーム共和体制の軌跡
三、支配体制を存続させてきたメカニズム
四、本書の調査概要

第2章 勝者のいない戦争

はじめに
一、 揺れ動く攻勢――防衛戦から勝者のいない戦いへ
二、イラン・イラク戦争と戦没者たち
三、語られる戦争と埋め合わせられない記憶

第3章 死の社会的転換装置としての「殉教」

はじめに
一、言説的伝統としての「殉教」
二、イスラーム共和制史観と「殉教者」認定
三、「聖域防衛の殉教者」
四、埋められない記憶に直面する二つの殉教者家族
五、「賢者の石」の限界

第4章 忘却と記憶の政治

はじめに
一、記憶と忘却と殉教者博物館
二、殉教者博物館という地域コミュニティ空間
三、「殉教者」の記憶化――記憶をひろい集める
四、記憶と忘却の政治

第5章 消費される「殉教文化」

はじめに
一、文化的コンテンツとしての「殉教」と消費者の多層性
二、「殉教文化」とポピュラー音楽の「大衆化」
三、娯楽を埋め込む戦争博物館

第6章 情動の政治と修復する未来

はじめに
一、二つの抗議運動にのめりこむ
二、情動の政治と日常の畏れ
三、プラースコー・ビルディングの火災の悲劇とロハスの目覚め

終 章