鵜と人間―日本と中国、北マケドニアの鵜飼をめぐる鳥類民俗学 ★
館外での出版物

出版物情報
- 出版社:東京大学出版会 出版社ホームページはこちら
- 定価:12,650円(税込)
- ISBN:978-4-13-056313-0
- 判型:A5版
- 頁数:484頁
- 科研プロジェクト成果(研究期間:2011年~2021年)
*動物保護時代における文化システムとしての鵜飼の全面解明と「最適継承ルート」の共創(基盤B)
*ポスト家畜化時代の鵜飼文化とリバランス論-新たな人・動物関係論の構築と展開(基盤C)
*中国二大淡水湖における生活・生業転換の同質性と異質性:1949-2010(スタート支援)
主題・内容
日本と中国、東欧の北マケドニアにおける鵜飼を取りあげた類のない作品。鵜と人間というテーマを突き詰め、より普遍的な視点から、動物利用の論理やドメスティケーションの生起をめぐる新たな解釈を示した。
おすすめのポイント、読者へのメッセージ
本書の特徴は大きく3つある。
- 先行研究がほとんどない鵜飼い漁を取りあげ、そこから「飼い慣らしすぎない」という動物利用の論理を導きだす。欧米の研究者らがこれまで見過ごしてきた人間の態度を明らかにし、これがより広範な事例に適用可能であることを示した。
- 鳥類民俗学という本書独自のアプローチによって、飼育下のウミウの行動と生態を世界で初めて明らかにした。鳥類民俗学とは、民俗学や鳥類学、動物行動学など多分野の成果にもとづいて鳥と人との関係を解明する独自の方法論のこと。
- 日本と中国、北マケドニア共和国の地域間比較により、ドメスティケーション(動物の生殖介入)が生起する条件を明らかにした。本書では、「捕まえやすいから生殖に介入する」という先行の議論に対して、「捕まえにくいから生殖に介入する」と解釈を反転させた点に独創性がある。
目次
まえがき――なぜ生殖に介入しないのか
序 章 いま、なぜ鵜飼なのか
第一章 鵜飼研究の到達点
――何がどこまでわかっているのか
第二章 なぜ鵜飼が誕生したのか
――野生種を飼い慣らす技術から考える鵜飼誕生の条件
第三章 前例なきウミウの産卵と鵜匠による手さぐりの応答
――宇治川の鵜飼における二〇一四年のできごとから
第四章 ウミウの繁殖生態の変化と「技術の収斂化」
――宇治川における四年間の繁殖作業を手がかりに
第五章 野生性と扱いやすさのリバランス論
――育てたウミウの個性と鵜匠による介入の強弱
第六章 日本の鵜匠がウミウの生殖に介入しない理由
――ウミウ産卵の要因をめぐる地域間比較研究
第七章 なぜ中国の漁師はカワウを繁殖させるのか
――中国雲南省大理ぺー族自治州の洱海における繁殖技術と生殖介入の動機から
第八章 鵜飼が生業として成りたつ条件
――北マケドニア共和国ドイラン湖におけるマンドゥラ漁の事例から
終 章 鵜と人間、かかわりの原理
あとがき――一点突破