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越境する〈発火点〉——インドネシア・ミュージシャンの表現世界

館外での出版物

2020年10月15日

金悠進 著

風響社
【松下幸之助国際スカラシップ留学研究助成成果】

出版物情報

  • 出版社:風響社 出版社ホームページはこちら
  • 定価:880円(税込)
  • ISBN:9784894892873
  • 判型:A5・縦組み
  • 頁数:70頁
  • 松下幸之助国際スカラシップ留学研究助成成果(研究期間:2017年~2019年) 
    インドネシアの都市における日常的文化実践と改革派リーダーの政治的台頭

主題・内容

インドネシアの音楽家ハリー・ルスリの代表アルバム『発火点』との出会いがすべてだった。それは、ロックと伝統音楽を融合させた1970年代の楽曲でありながら、現代インドネシア社会の様々な断面を切り取る、「導きの書」でもあった。

おすすめのポイント、読者へのメッセージ

もしハリー・ルスリに出会わなければ、インドネシアの研究を続けることはできなかったかもしれません。それぐらい、大好きで愛おしく、そして厄介きわまりない人物について、初めて書いてみました。

書評等での紹介

インドネシアの音楽家ハリー・ルスリの代表作「発火点」と出会い、虜になった著者が、現地に滞在し調査をした成果が物凄い熱量で収められている。彼の音楽を通して、インドネシアを対象化することが本書を貫くテーマとなっているが、ハリー・ルスリは「逸脱事例」だという著者の発言が示すように、その複雑性や多様性は、インドネシアの文化一般論の範疇にとどまるものではない。しかし、関係者への丁寧な取材から書き起こされる文字からは、著者のハリー・ルスリへの、インドネシア文化史の隅へ決して追いやろうとしない気概と愛を感じられて、勝手に胸が熱くなるのだった。「音」を「文字」にすることの、その捉えきれない葛藤を素直に表明しているあたりも素晴らしい。自分にとっては、学術書とファンジンの間のような不思議な音楽書。(菅原慎一)
「わたしのこの一冊―大切なことはすべて音楽書が教えてくれた」(2022年9月20日)
http://turntokyo.com/features/the-best-book-of-mine/

目次

越境する〈発火点〉

一 なぜバンドンか
1 二人の人物との「出会い」
2 エリートと民衆

二 「インドネシア音楽」を対象化する
1 地方都市バンドンからみる
2 インドネシア音楽史からの逸脱

三 ハリー・ルスリの風景
1 音楽家ハリー・ルスリの評価
2 末っ子ハリー・ルスリの生い立ち
3 ハリー・ルスリの政治
4 不自由(?)のなかの「抵抗」
5 路上の社会奉仕

四 真面目に生きる、不真面目に表現する
1 ロックスターにはならない
2 ハリー・ルスリとスカルノの息子
3 反骨のなかの愛国

五 「民衆」との向き合い方
1 ダンドゥット嫌い
2 〈エリートと民衆〉の脱構築

六 死に方、行く末
1 黒くぬれ!――ハリー・ルスリの「遺書」
2 ハリー・ルスリの現在地

発火点への追憶

参考文献・ハリー・ルスリ関連年表

あとがき