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ポピュラー音楽と現代政治——インドネシア 自立と依存の文化実践

館外での出版物

書名 ポピュラー音楽と現代政治――インドネシア 自立と依存の文化実践
著者名 金悠進
出版社 発行:京都大学学術出版会
発行年月日 2023年3月15日
判型・体裁 菊上製(A5・縦組み)
頁数 320頁
ISBN 9784814004645
定価 3,960円(税込)
研究 京都大学人と社会の未来研究院若手出版助成「ポピュラー音楽と現代政治——インドネシア 自立と依存の文化実践」(2022.6-2023.3)

主題・内容

なぜ民主化を謳歌するミュージシャンが民主化の逆行に与してしまうのか。〈文化と政治〉の危うい関係に肉薄した本書は、インドネシアのポピュラー音楽の歴史から、現代政治の問題点をあぶりだす。

おすすめのポイント、読者へのメッセージ

インドネシアほど生々しく音楽と政治が絡み合い歴史が作られてきた国はない。スカルノが西洋音楽を禁じ、スハルト体制が音楽家を動員してきた。民主化以降、ミュージシャンは反権力を掲げ表現の自由を手に入れた。にもかかわらず、なぜ体制側に与してしまうのか。2019年の「音楽実践法案」の顛末を軸に、インドネシア大衆音楽史のダイナミズムをみる文化政治学。

目次

序章 「音楽と政治」の密接な関係
1 ポピュラー音楽からみる現代インドネシア政治
──民主化と非民主化のもつれあい、民主勢力による非民主化というパラドックス
2 ポピュラー音楽研究と本書の位置づけ
(1)ジャンル論
(2)ハイブリッド論
(3)音楽シーン研究
(4)音楽と政治の関係
【解説】音楽実践法案にみるインドネシアの音楽と政治

第1章 インドネシア・ポピュラー音楽史
──外来文化の受容とその影響(一九五〇年代〜七〇年代)

1 スカルノ大統領の「革命」と西洋文化の排斥
(1)「ガギゴ」演説とロックンロール
(2)地方民族文化の振興と「ジャズ」の利用
2 「革命」から「開発」へ──スハルト権威主義体制と西洋文化の流入
3 非西洋圏における文化の軋轢
(1)価値貶下の実践──ロックとダンドゥットの境界
(2)差異化の実践──ロックとポップの境界
コラム 1 冷戦下の東南アジア・ポピュラー音楽

第2章 三大ジャンルの産業化・大衆化と分断構造(一九七〇年代〜八〇年代)
1 サブジャンルの形成──「ポップ」領域の拡大と商業主義化
2 「田舎者」からの脱却──ダンドゥットの中流化と国民音楽化
3 ショービジネスの隆盛──ロックの産業化と大衆化
4 スハルト体制期におけるポピュラー音楽の権力依存構造

第3章 自主独立の理念と実践、そして創造性の政治(一九九〇年代〜二〇〇〇年代)
1 インディーズの台頭
2 地方都市の若者たちとDIY
3 アジア通貨危機がもたらす国内インディーズ・シーンへの「恩恵」
4 創造産業の隆盛
5 創造都市バンドンへ──改革派リーダーとインディーズの相互依存
6 民主主義定着期における軍権力への依存構造

第4章 越境と相互依存の政治
1 地方シーンの形成
2 縦の系譜とノスタルジアの戦略的構築
3 ジャンル・地域・世代の主体的越境
4 ジョグジャカルタの実践、インターネット戦略、そしてコラボ現象
5 運動としてのフェスティバル──越境と連帯の可視化
6 音楽を通じた「多様性の中の統一」の模索──大統領と創造経済庁
(1)多様性の中のダンドゥット
(2)創造産業の共同振興
(3)インドネシア音楽文化のナショナリズム
コラム 2 著作権と海賊版の両義性

第5章 非民主的法案の創造
1 音楽実践法案の内実──表現の自由を守る?
2 外圧による海賊版大国インドネシアからの脱却
3 国内における著作権保護運動
4 音楽シーンにおける「エコシステム」の整備
5 インドネシア音楽会議の政治的意義と音楽実践法案への影響
6 多様性の中の合意形成

第6章 自立と依存の未来
1 民主主義の質を問う──民主化以前以後の変化と連続性
2 民主主義の質的向上と市民社会の意義
3 「文化のなかの政治」を超えて
4 自立と依存のジレンマ
5 越境の主体的構築とナショナリズムへの浸透
6 文化は政治の何をどう「変える」のか

あとがき
参考文献
索引