みんぱく創設50周年をむかえるにあたって
国立民族学博物館(みんぱく)は、本年、2024(令和6)年6月に、創設50周年を迎えます。
この50年間にみんぱくが世界各地から収集した標本資料(モノの資料)は、34万6千点を超え、20世紀後半以降に収集された民族誌コレクションとしては、世界最大の規模をもつものになりました。また、みんぱくは、現在、その施設の規模の上で、世界最大の民族学博物館となっています。
今、世界は大きな転換点に立っています。これまでの、中心とされてきた側が周縁と規定されてきた側を一方的に支配しコントロールするという力関係が変質し、従来それぞれ中心、周縁とされてきた人間集団の間に、創造的なものも破壊的なものも含めて、双方向的な接触と交錯、交流が至るところで起こるようになってきています。その動きのなかで、世界には新たな分断が生じてきています。
一方で、2020年以来のコロナ禍を経験した私たちは、私たち人類の生活が、目に見えないウイルスや細菌の動きと密接に結びついていること、言い換えれば、われわれ人類もあらゆる生命を包含する「生命圏」の一員であることを、身をもって経験することになりました。また、「人新世」(Anthropocene)などという時代の呼び方が唱えられ、人間の活動が地球環境そのものに不可逆的な負荷を与えていることが自覚されて、未来を見据えた地球規模での対応に迫られています。
このように、人類全体での協働が必要とされるにも関わらず、それを妨げる力学が働いているというのが今日の状況です。それだけに、人びとが、異なる文化を尊重しつつ、言語や文化の違いを超えてともに生きる世界を築くことが、これまでになく求められています。今ほど、他者への共感に基づき、自己と他者の文化についての理解を深めるという、人類学の知、そして民族学博物館の役割が求められている時代はないと思われます。
創設から50年という節目に当たり、みんぱくでは、現在、改めて過去50年の足跡を振り返り、現状をみきわめ、50年先、100年先のみんぱくのあり方を構想するため、『みんぱく50年史』の編纂・刊行や一連の国際シンポジウムの開催など、創設50周年記念事業を実施しています。
この場を借りて、みんぱくへの皆さまの変わらぬご支援、ご協力を心よりお願い申し上げます。
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