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舟と人類―空飛ぶカヌーたち

舟やカヌーといった水域を移動する道具の本格的な利用がはじまったのは、私たちホモ・サピエンスの出現以降といわれています。もっとも原始的な「舟」としては、筏や皮舟などがあげられますが、その後の加工技術の発達とともに丸木舟やカヌーが出現しました。私たちサピエンスが、世界のいたるところに進出し、居住できるようになった理由の一つとして、人間を乗せて水域を超えることのできる舟の存在は無視することができません。

ところで本館には、世界中で収集された200隻以上もの舟資料が存在します。その多くは収蔵庫に保管され、未公開のものがほとんどでした。そこで9月4日から開催される特別展『舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし』では、主にオセアニアやアジアで収集された舟を中心に、20隻以上の資料を一挙に公開することになりました。

現在、9月4日の開催を目指し、展示される舟たちが続々と特別展会場に移動中です。中には本邦初公開となる、ニューギニアのクラカヌーやスリランカのアウトリガー式カヌー「オル」など大型のカヌーもあります。これら大型のカヌーは、どうやって展示会場に運ぶべきか。さんざんに悩んだ結果、カヌーたちの移動には大型トラックとクレーンを使い、最後は空を飛んで来てもらうことになりました!

収集地から民博までは海を渡り、そして9月開催の特別展会場へは空も飛んで、ついに公開となった舟やカヌーたち。ぜひこの機会にご覧いただき、人類の歩みと多様な舟の登場の歴史、そして舟や海のある暮らしや文化への理解を深めていただければ嬉しく思います。

小野林太郎(国立民族学博物館教授)

関連ウェブサイト

特別展「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」



関連写真

特別展で公開する舟たち(一部)(撮影:門田修(海工房)、2025年)


トラックで特別展会場前に到着したクラカヌー(撮影:小野林太郎、2025年)


空飛ぶスリランカのカヌー「オル」(撮影:小野林太郎、2025年)