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津波の記憶を刻む文化遺産―寺社石碑データベースのフォーラム型情報ミュージアムへの改良

研究期間:2020.4-2022.3 / 強化型プロジェクト(2年以内)

日高真吾

プロジェクトの概要

プロジェクトの目的

 本データベースは、2017年11月に国立民族学博物館(以下、民博)で公開された「津波の記憶を刻む文化遺産-寺社石碑データベース」をフォーラム型情報ミュージアムのデータベースとして改良することを目的としたものである。本データベースの改良では、現在日英併記で運用している画面を日本語ページ、英語ページに切り分け、より海外からアクセスをしやすい環境にするとともに、データベースの項目で表示されている内容について、自動翻訳機能を用いて日本語から英語、英語から日本語へと変換させるシステムを導入する。このことによって、海外の研究者が情報を加えやすい環境を整える。また、公開後2回に渡って実施してきたワークショップでだされた改良ポイントをデータベースのシステムに組み込み、より利用しやすいデータベースへと発展させることを目的とする。

プロジェクトの内容

 本プロジェクトで改良する内容は、現在、以下の点を計画している。
1)管理機能の利便性の向上
管理画面から寺社・石碑を登録する際に、住所の入力を支援する機能として、①市区町村をリストから選択することで都道府県から市区町村までの住所を登録出来るようにする、②登録した写真画像ファイルに含まれているGPS情報をもとに、国土地理院のジオコーディングサービスを利用して住所を取得・登録する。ただし、国土地理院のジオコーディングサービスについては、国土地理院と協議しながらその可能性を模索する。
2)公開画面の二カ国語(日・英)対応
一般向け公開画面を、英語併記の日本語版サイトの1サイト構成から日本語版サイトと英語版サイトの2サイト構成にする。なお、本対応にあわせてシステムの再構築を実施することで、システムの内部構成を一新し、システム寿命の延長を図る。なお、二カ国語(日・英)対応一般向け公開画面について、サイト構成と掲載データは同じで説明書きやボタン、見出し等が日本語で表記されているサイトと、英語で表記されているサイトの2サイトを開設し、相互に切り替えが出来るようにする。また、入力された内容は自動翻訳機能を用いて、日英、英日の翻訳がおこなわれるシステムを開発する。この際、すでに入力されている内容について、441件9702データのデータを精査し、記入ミス等のチェックをおこなう。
3)システムの再構築
現行システムの機能やユーザーインターフェイスはそのままで、システム内部のシステム構造を全面的に改修し、システムを構成する各種コンポーネントのバージョンアップをすることで、各種コンポーネントのセキュリティサポート期間の延長を図る。また、対応するバージョンは作業時点で運用されているサーバのOSのバージョンや各種コンポーネントのバージョン状況をもとに判断する。

2021年度成果

1. 今年度の研究実施状況

 研究の最終年度となる令和3年度は現在の入力データを精査し、記入ミス等の修正をおこなった。昨年度に全件の点検をおこなう予定であったが、想定以上に記入ミスや課題が散見したことで全体の3分の2程度の精査にとどまっていたところ、今年度、すべてのデータの点検がおこなえた。また、国土地理院、東北大学災害科学国際研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構と研究会を開催する予定であったが、新型コロナウイルスの影響もあり、今年度も個別の意見交換をおこなうにとどめた。一方、申請者が主催する基幹研究「日本列島における地域文化の再発見とその表象システムの構築」、また分担者となっている特別推進研究「地域歴史資料学を機軸とした災害列島における地域存続のための地域歴史文化の創成」とは研究会等で意見交換がおこなえるとともに、特別展「復興を支える地域の文化-3.11から10年」の第4章において、スタンドアローン型のPCを用いたDBの展示をおこなった。

2. 研究成果の概要(研究目的の達成)

 今年度は、昨年度に改修した管理画面から寺社・石碑を登録する際に、住所の入力を支援する機能として、①市区町村をリストから選択することで都道府県から市区町村までの住所を登録出来るようにする、②登録した写真画像ファイルに含まれているGPS情報をもとに、国土地理院のジオコーディングサービスを利用して住所を取得・登録するシステムについて、これまで共同研究をおこなってきたセカンドブレーンのサーバーから民博サーバーへの移行がおこなえ、来年度早々に館内公開、続いて一般交換がおこなえる環境が整った。

3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

口頭発表
・「国立民族学博物館における研究情報の可視化・高度化の取り組み」(現代民俗学会第59回研究会「民俗学のデジタル・ヒューマニティーズ的展開」、オンライン開催)2021年12月19日
・寺村裕史 「津波の記憶をつなぐ文化遺産-寺社石碑DBの概要」(国際研究集会「被災文化財を通した地域文化の継承モデル−博物館の視点から」、オンライン開催)2021年5月1日
・和髙智美 「津波の記憶をつなぐ文化遺産−寺社・⽯碑 DBの登録方法について」(国際研究集会「被災文化財を通した地域⽂化の継承モデル−博物館の視点から」、オンライン開催) 2021年5月1日

2020年度成果

1. 今年度の研究実施状況

 研究の初年度となる令和2年度は現在の入力データを精査し、記入ミス等の修正をおこなった。今年度は全件をおこなう予定であったが、想定以上に記入ミスや課題が散見したことで全体の3分2程度の精査にとどまった。また、国土地理院、東北大学災害科学国際研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構と研究会を開催し、本データベースの改良の方向性、災害の記憶に関するデータベースとの連携について協議する予定であったが、新型コロナウイルスの影響もあり、個別に意見交換をおこなうにとどめた。一方、本データベースの改修の基礎となる管理機能の利便性の向上については予定通り、改修を進めることができた。なお、次の展開として、申請者が主催する基幹研究「日本列島における地域文化の再発見とその表彰システムの構築」、また分担者となっている特別推進研究「地域歴史資料学を機軸とした災害列島における地域存続のための地域歴史文化の創成」とは研究会等で意見交換がおこなえ、来年度は特別推進研究「地域歴史資料学を機軸とした災害列島における地域存続のための地域歴史文化の創成」の研究会で発表することとした。

2. 研究成果の概要(研究目的の達成)

 本年度のプロジェクトの最大の目標は、フォーラム型情報ミュージアムに適合したデータベースに改修することであった。このなかで、管理画面から寺社・石碑を登録する際に、住所の入力を支援する機能として、①市区町村をリストから選択することで都道府県から市区町村までの住所を登録出来るようにする、②登録した写真画像ファイルに含まれているGPS情報をもとに、国土地理院のジオコーディングサービスを利用して住所を取得・登録するシステムを整えることができた。

3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

・寺村裕史、2020、「津波の記憶を刻む文化遺産―寺社・石碑データベース」『復興を支える地域の文化―3.11から10年』国立民族学博物館、pp. 94-101、2021年3月2日、ISBN: 978-4-906962-90-7
・特別展「復興を支える地域の文化―3.11から10年」において、改良版をスタンドアローンで公開