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中南米地域の文化資料のフォーラム型情報データベースの構築

研究期間:2018.4-2020.3 / 強化型プロジェクト(2年以内)

八木百合子

プロジェクトの概要

プロジェクトの目的

 本館展示場のアメリカ展示では、中南米地域について、先史時代の考古資料から現代の人びとの生活様式にかかわる標本資料までを展示している。各資料には地域や民族名を記したキャプション情報のほか、既に展示案内等に掲載された資料については解説文が付されているものの、詳細情報は一部の資料のみにとどまっている。フォーラム型としてのデータベースの機能を高めるためには、さらなる情報の追加と共有化の基盤を整備する必要がある。そこで本プロジェクトでは、本館展示場の中南米地域に関する標本資料を中心に個々の資料にまつわる背景情報の追加をおこなう。これをもとに日・英・西の多言語によるデータベースと地域・民族分類に即した閲覧・検索のシステムをととのえることで、より汎用性の高いデータベースの構築を目指す。また、このデータベースには、アクセス権限を有するユーザーが書き込んだコメントを反映する機能も持たせるようにし、現地の関連機関からの情報追加を促すことで資料のさらなる充実をはかる。

プロジェクトの内容

本プロジェクトは、以下のような手順と方法で実施する。
(1)情報の高度化:アメリカ展示場は5つのセクションから構成され、それぞれに中南米の標本資料が分散配置されている。それら中南米の資料に関して、各地域をフィールドとする本プロジェクトの担当者が分担し資料への情報の追加をおこなう。データベース作成にあたってはまず展示標本の精査をおこない、現行の基本情報に追加項目を立てる。これをもとに、必要に応じて情報を付加する。そのうえで、各標本資料にまつわる背景情報として画像・文献情報等を加える。そのさい、館内教員が所有する現在のフィールド写真に加え、草創期に収集等にあたった共同研究員(本館名誉教授)が所有するデータや写真も可能なかぎり活用する。またこの作業については、南山大学に所蔵されている友枝啓泰氏の写真コレクションも利用する。
(2)多言語化:従来の日本語の情報に加えて、英語およびスペイン語を加えることで、現地からの情報閲覧・追加に向けた基盤をととのえる。当面は汎用性という観点から、現地の公用語を含めた3言語にとどめる。
(3)アクセシビリティの強化:中南米地域の多様な民族の標本資料を有するものの、情報へのアクセスおよび従来のキーワードのみの検索は初学者や現地の人びとにとり必ずしも容易とはいえない状況である。そこで、上記のデータベースをもとに、標本資料を「地域(国)」、「民族」、「標本名」で分類し、その窓口となる検索画面には、検索ワードを並べるだけでなく、地図や民族写真を用いることで知りたい情報に簡単にたどり着ける閲覧・検索システムを構築する。これにより、小中高生の学習支援の機能を持たせることが可能となる。
(4)フォーラム化:本プロジェクトの最終段階では、フォーラム型情報データベースとしての機能をととのえるべく、国内外の関連機関や専門家の意見を取り入れ、情報の共有化とさらなる追加作業を行っていく。データベース構築の段階では、メキシコ国立人類学博物館、国立人類学考古歴史博物館(ペルー)およびペルー・カトリカ大学の専門家らと協働した作業をおこなう。将来的にはその他の中南米地域の主要博物館にもアクセス権限を与え、相互に情報のやりとりができるようにする。

期待される成果

 本プロジェクトにより構築されるデータベースは、従来の目録情報に加えて、背景情報となる画像や文献データなどを組み込むことで、より学術的な詳細情報を提供できるものとなる。また、多言語化に加えて、文字入力のみにたよらない検索・閲覧のシステムを取り入れることで、アクセシビリティを高めることが可能となる。これにより、研究者にかぎらず一般市民や学生など、利用対象者やその活用の幅を大きく広げることが見込める。さらに、外部からの情報追加機能を加えることで、本データベースを中心に中南米の主要な研究拠点がつながるフォーラム型ネットワークを形成できることが期待される。

成果報告

2019年度成果

1. 今年度の研究実施状況

 プロジェクト最終年度にあたる本年度は、以下の作業をすすめた。
(1)昨年度から進めてきたアメリカ展示場の中南米関連の標本資料を中心にした400点の資料のデータベースに、追加資料としてアンデスの民族資料を395点の情報を加えた。
(2)情報の高度化の一環としておこなっている制作者による資料情報の付加作業として、新たに35点のコメント情報を追加した(中米9点、南米26点)。
(3)南山大学および民博に所蔵されているアンデス民族学関連の画像コレクションのなかから選別した、各資料にまつわる地域や制作に関する画像を紐づけることで、背景情報を強化した。
(4)資料の基本情報等については、日本語のほかに、英語とスペイン語への翻訳をおこない、3言語対応のデータベースを構築した。
(5)アクセシビリティを強化するために、データベースには、資料名や地域、民族での検索のほかに、制作者名とその関連する家系による検索等、本データベース内容に特化した検索機能を追加するなどの工夫を加えた。
(6)試験版のデータベースをもとに、民芸資料の制作にたずさわる現地コミュニティの人びとを集め「ワークショップ:ペルーの民衆芸術(Taller sobre la Artesanía Peruana)」(2020年1月13日)を、カウンターパート機関である文化芸術社会協会(Instituto Cultural Teatral y Social)の関係者の協力のもとペルーで実施した(参加者:職人32名、関係者6名)。その際、現地の人びとの活用を促すために、操作性・利便性等について確認をおこなったほか、資料に関する新たなコメント等も聴取した。
これらの結果を踏まえ、試験版データベースの修正と補填作業をおこない、正式な公開・運用に向けたデータベースの構築を実現した。最終年度は、資料の整理や画像の取り込みに加えて、多言語に及ぶ内容の整合性のチェックなど膨大な作業があり、多くの手が必要となるため、RAやアルバイトが常時つくことで作業の効率化につながった。特に語学堪能な留学生や若手の研究者に作業に加わってもらうことで機動力が高まった。

2. 研究成果の概要(研究目的の達成)

 (1)本プロジェクトでは、当初予定していた展示場の関連資料のほかに、アンデス関連の民族資料の情報も追加し、目標を上回る点数の作業を完了した。特に、アンデスの情報については、現地のコミュニティとの協働により、資料の制作者である職人たちから資料の情報のみならず、制作や使用、モノに込められた世界観等に関する情報を集め、民族誌的に厚みのあるデータベースの構築を実現した。また、日本語と英語のほかに、現地の公用語であるスペイン語にも対応した多言語型のデータベースの構築を実現した。
(2)本プロジェクトと同時期に「地域研究画像デジタルライブラリ」プロジェクトで整理した画像資料(本館の名誉教授が1960年代~2000年代に撮影したアンデスの民族学調査の画像コレクション)を活用し、収集当時の情報、使用、制作に関する画像を背景情報として加えることで、アンデス地域の民族学研究のさまざまな資料を集約するプラットホームを築きあげた。また、画像を多用することで、一般のユーザーの理解促進に向けたさまざまな情報も取り込み、初学者にも現地の状況や制作状況などが分かるように仕上げ、今後、学生のアクティブラーニング等でも活用してもらうことを想定して文献情報等も可能なかぎり加えた。
(3)プロジェクト期間内には、資料の制作にたずさわる種々の職人を集めたワークショップを現地機関の協力のもと実施した。その際、実際にデータベースを試験的に活用してもらい、意見等を聴取することで機能強化をおこない、フォーラム型情報データベースとしての基盤を整備することができた。
(4)上記の作業によって、当初の計画で予定していた、情報の高度化、多言語化、アクセシビリティの強化、フォーラム化についてすべて達成することができた。また、特に、フォーラム型の観点からは、研究機関だけでなく、ソースコミュニティの人びとや実際の資料の制作者である民衆芸術家たちから積極的な支援も得ることができたことは大きな成果である。今後、資料(作品)に関する一次情報の提供者でもある彼らから、コメント機能を活用してさらなる情報を得るだけでなく、ワークショップなど相互交流の機会を通じて、彼らの実際の語りや制作場面について、映像撮影等を視野に、新たな情報も追加していくことが可能になると期待できる。

3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

◇口頭発表 Yuriko Yagi “Utilización del Recursos Culturales Andinos: Construcción de Base de Datos Interactivos” Simposio Internacional “50 años de Antropología Japonesa en el Sur de los Andes: Recorridos, Etnografías y Valoración Cultural, (07/11/2019 Museo Histórico Regional del Cusco, Peru)
◇口頭発表 Yuriko Yagi “Base de Datos Interactivos: Colección del Museo Nacional de Etnología del Japón,” Taller sobre la Artesanía Peruana,(Instituto Cultural Teatral y Social, Peru)

4. データベースの整備実績(平成31年3月末日時点で完成が予定されているもの)

資料(標本資料、映像・音響資料)件数:標本資料398件(この他に写真画像8268件)
レコード数:約10000件(推計)

2018年度成果

1. 今年度の研究実施状況

 アメリカ展示場にある中南米地域に関連する標本資料を対象にそれらに関連する背景情報を付加することで情報の高度化をおこなった。具体的には、個々の資料の基本情報に加えて、収集、使用、製作、展示に関する情報を付けたほか、参考となる文献情報と専門家による解説の二つを加えることで、資料にまつわるより詳細な情報を加えた。これらの情報については、日本語版の整備を完了し、それをもとに英語版および西語版の基本情報の枠組みを作成し多言語化に向けた準備をおこなった。
 また、展示場に展示されている対象資料のほかに、本プロジェクトで重点的に取扱う関連品目(メキシコのアレブリヘ、アンデス関連の標本資料)のうち、アンデスの箱型祭壇、聖像、および焼物に関しては、実際に現地で制作者と面会し、資料に関するコメントを聴取した。さらに現在の製作状況に関する写真の撮影・収集もおこなった。
 このほか、収集当時の現地の状況や製作の様子を伝える情報として、関係者よりスライドを収集した。そのうち、藤井龍彦名誉教授から借りた約8000点のスライドをデジタルデータとして取り込み、関連する画像の選定作業をおこない、標本資料との紐付けをおこなったほか、故友枝啓泰名誉教授のコレクションについては、写真の管理責任者に利用の許可を申し出た。

2. 研究成果の概要(研究目的の達成)

 今年度は日本語での情報の付加作業と関連する資料の収集を重点的におこなった。本プロジェクトの対象なる標本資料として398点を選定し、それらの背景情報の付加作業を終えた。文献および専門家の解説等の詳細情報については、引き続き可能な限り収集を続けるが、各資料には最大で30件の資料情報を付加した。また、重点資料のうちアンデス関連の箱型祭壇43点、聖像21点については、それらの情報以外に制作者または専門家からのコメントを付け、制作の参考になる画像資料をそろえた。とくに、ペルーの箱型祭壇制作の二大巨匠であるフロレンティノ・ヒメネス氏とヘスス・ウルバノ氏、および聖像制作のイラリオ・メンディビル氏の資料については、本人が他界していたため、後継者となる親族と面会し、彼らから当館が所蔵する資料に関する詳細情報を収集した。

3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)

(別添に記載)
 箱型祭壇に関して、友の会講演会で「アンデス箱型祭壇が伝えるもの―農村の生活から歴史記憶まで」(2019年2月)の報告を予定しているほか、3月にペルーで箱型祭壇の制作や収集・保存に携わる現地関係者を集めてワークショップを行う予定である。

4. データベースの整備実績(平成31年3月末日時点で完成が予定されているもの)

資料(標本資料、映像・音響資料)件数:標本資料398件(この他に写真画像8268件)
レコード数:約10000件(推計)