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日本版みんぱっくをマレーシアへ

Let’s みんぱっく!!-活用例-

奈良県香芝市立鎌田小学校

番外編「日本版みんぱっくをマレーシアへ」

山田幸生先生

「Let’sみんぱっく」―番外編―として、当館の「みんぱっく(アラビアンナイトの世界)」をモデルに奈良県の小学校が独力で「日本版みんぱっく」を作成し、マレーシアに持参された例をご紹介します。本取り組みは2006年(小学3年生)から2008年(小学5年生)にかけて、約3年間にわたり実践されました。
2006年から2年間、担任をされた山田幸生先生にお話を伺いました。先生のインタービューを中心に、日本版みんぱっく作成の経緯から結果についてレポートしたいと思います。

  • 学習期間:2006年~2008年
  • 学年(担任):3~4年(山田幸生先生)、5年生(中島大輔先生)
  • 人数:37名(単学級)
  • 利用したパック:「アラビアンナイトの世界」
    *パックの利用期間
    (2007年11月13日~26日)
  • 実践の目的:
    ・「日本文化」を再発見する。
    ・異なる文化を持つ他者へ日本文化を発信する。
  • 協力:文教大学 今田研究室

学習の流れ

日程 学年 活動内容 目標・結果など
2006年 3年 社会科にて日本文化を学習 コマ・ビー玉・けん玉など日本伝統の遊びを経験。
目標:日本の昔のくらしにふれることにより日本文化の良さを知ることができるようにする。
2007年5月 4年 遠足で民博を見学 総合的な学習の時間(国際理解教育)の導入で訪れた。
目標:興味を持ったテーマをみつけ、自分の課題に対して、意欲的に追究することができる。
結果:ほんものにふれたことで、世界と日本の比較ができた。
2007年11月13日~26日 みんぱっく「アラビアンナイトの世界」借用 →日本版みんぱっくのアイデアがでる。
2007年3学期中 「日本版みんぱっく」の製作 2006年に香芝西中学校が「日本版みんぱっく」を作成した例に基づいて実施。
目標:「日本版みんぱっく」を作成することにより、自文化を再発見することができるようにする。
2008年8月9日~11日 5年 山田先生が「日本版みんぱっく」をマレーシアに持参。 発表先:国民小学校の男子校(小学校5年生)、及び女子校(当初は5年生のみだったが、全校生に)
紹介後、アンケートを実施した。
目標:マレーシアでの評価を受けて、よりレベルアップした「新日本版みんぱっく」を主体的に作成することができる。
2008年2学期 マレーシアでの結果を子どもたちに報告 アンケート結果などを踏まえ、「日本版みんぱっく」の中身を再考し、追加を行った。
2009年2月21日 クマラグル先生来校の際「新日本版みんぱっく」を贈与 マフラーなどを巻き、実践しながら、1つ1つ手渡しした。

山田先生インタビュー

なぜ「日本版みんぱっく」を作ることになったのでしょうか?

「アラビアンナイトの世界」を借用した時は、世界を知ることが目的でした。でも、以前に日本文化(伝統のあそびなど)を勉強していたこともあり、子どもたちからの「世界の勉強も大事やけど、わたしら日本のこともあんまりわかってないんちゃうん?」という意見がきっかけです。
「アラビアンナイトの世界」にした理由は、みんぱく見学の際に調べていた子どもがいて、アニメや絵本で身近な題材だったので「アラビアンナイトの世界」を借りました。
そして、「せっかく作るのだから、他の国の人にみせたい!」という声から、以前より交流のある文教大学の今田先生に協力していただき、当時文教大学に留学していたマレーシア工科大学のクマラグル・ラマヤ先生を紹介してもらいました。いろんな方々の協力を得、日本版みんぱっくをマレーシアに送ることを計画しました。

日本版みんぱっくを作成するにあたり、工夫した点は何ですか?

作成時1絵本

とにかくマレーシアのひとに伝わるように!を中心に考えました。

工夫1.購入時の選択方法

・まず、資料を選び、そこから具体的なアイデアを出していきました。

やりとり例1.)
子どもたち:凧がいい!
先生:どんな凧がいいだろう?
子どもたち:めだまのついたやつがいい!
先生:マレーシアのひとに日本の凧ってわかりやすいかな?
子どもたち:ドラえもんなど日本のキャラクターの絵がある方がいいと思う!

・1つの資料でも複数の種類を選択することで、より今の日本らしさが伝わるようにしました。

やりとり例2.)
子どもたち:箸をみんぱっくにいれたい!
先生:どんな箸がいいだろう?
子どもたち:割りばしがいいとおもう!
先生:箸はいろんな箸があるけどそれだけでいいかな?
子どもたち:高級な箸(ぬりばし)とか、キティーちゃんの絵が描いてあるプラスチックの箸がある!

香芝西中学校の場合は、南部鉄瓶とかの伝統工芸などを選択したようですが、今回子どもたちは自分の生活になじみのあるものを選んでいました。
「ソウルスタイル」では現在の小学生が使用している勉強道具、遊び道具が入っていますよね、本来の「みんぱっく」に近いと思います。

表1. 「日本版みんぱっく」内容

学校で使用するモノ ランドセル、文房具類、絵の具、習字道具
生活に使用するモノ 扇子、うちわ、はし、花の便箋、風鈴
遊びに使用するモノ こま、べったん、めんこ、万華鏡、折り紙、千代紙(千羽鶴)、なわとび、連だこ、だるま落とし、ゲイラカイト、とび出す絵本、トランプ、ベーゴマ、野球道具、福笑い、かるた、剣玉

工夫2.ラベルの添付

マレーシアの方々に分かりやすく伝えるため、ラベル(手書きの絵付解説書)を作成しました。図画工作を強化していた経緯もあり、特にこれには力を入れました。日本語では伝わらないので、文字情報に関しては、文教大学の留学生の協力を得て、内容をマレー語に翻訳したものも添付しました。
使用例を中心に、絵で描けないこまのひもを結ぶところは写真を添付したりもしました。また、周りの様子やムードを伝えるのも大切と気付いたようで、メッセージ入りのラベルを作成した子どももいました。(風鈴の例)

↓クリックすると拡大表示します

工夫2.ラベルの添付

作成時2包装

マレーシアに送るということで、「みんぱっく」のように、エアークッションにつつんで、きちんと袋にいれ、ラベルと照合できるようにナンバリングを施しました。

【出来上がったときの子どもたち感想】

  • 日本の人々の考え出したものは、よく考えるととても便利で、知恵がすごく活かされていると思った。
  • 世界の人々が協力すれば、すごいものができそうだ。
  • 日本と他国の人々が、もっとなかよくなってくれたらいいのにな。
  • 日本のものと他国のものとはやっぱり違うね。

出来上がった「日本版みんぱっく」をマレーシアにご持参された際、現地マレーシアの子どもたちの反応はいかがでしたか?

特に遊び道具に興味津々で、剣玉などを実演すると子供たちから歓声があがりました。
大道芸人と思われたのかもしれません(笑)
「遊びはこどもの共通点」とよく私達は言うのですが、非常に実感しました。

マレーシア女子校(全校生徒)

マレーシア男子校(5年生)

マレーシア男子校(5年生)

【アンケート結果】

  • 遊び道具に関心が強かった。
  • 文化的なもの(風鈴など)は使用方法が分かった時点で興味をもった。
  • 押し花などの繊細さに日本らしさを感じる傾向がある。
  • マレーシアの児童が紹介しようと考えたものはボードゲームのチョンカやマレー凧(ワウ)などが多数あげられた。なかにはテレビゲームなどもあり、日本との共通項もみられた。

帰国後、マレーシアの様子を伝えた時、子どもたちの反応はいかがでしたか?

直接現地に届けたことにより、「日本版みんぱっく」の結果だけでなく写真や話で風土まで伝えることができました。子どもたちも大変興味を持って、聞いていました。国際理解教育の学習としては理想的かもしれません。

その後マレーシアでの結果を踏まえ、「新日本版みんぱっく」を仕上げることになったのですね。

この学習から中島先生にバトンタッチしました。ワークシート.pdf:3.0MB]を作成し、それに基づき、インターネット検索なども兼ね、さらにマレーシアのことを詳しく調べて、追加する資料を選定しました。
マレーシアに関する知識がより深まったことにより、ラベルを作成する際にメッセージを多くするなどの工夫もさらに上達していたと思います。

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新日本版みんぱっく 追加全資料

表2.「新日本版みんぱっく」内容

1.木でできたもの 竹とんぼ、羽子板、木のおもちゃ
2.日本の技術を伝えられるもの 新幹線(模型)
ハイブリッドカー(ミニカー)
日本の車【パトカー・消防車・救急車・ファミリーカー】(ミニカー)
筆ペン(カートリッジ付き)
3.冬に使うもの マフラー、毛糸の帽子、手袋、耳当て、先なし手袋、使い捨てカイロ

クマラグル先生が来校した時、子どもたちはどのような反応をしましたか?

何度も写真や話に出てきた先生なので、「やっと会えた!」というわくわく感でいっぱいだったと思います。
クマラグル先生が日本語堪能ということを秘密にしていたので、子どもたちは身振り手振りで資料について一生懸命説明していました。
クマラグル先生の話で、「マレーシアでは日本の技術を見本にしています。日本のことを誇りに思ってください。」という言葉にしっかり耳を傾けていた子どもたちの様子がとても印象に残りました。
当時マレーシアでもマレーシア版のみんぱっくを作りたいという声も聞こえていました。まだ届いていないですが、楽しみにしています。

全体を通しての子どもたちの感想

  • マレーシアのことがよくわかったけど日本のこともよくわかった。
  • 日本のものが世界中で使われていることを知り、すごいと思った。
  • 日本版みんぱっくがマレーシアの人々と仲良くなれるきっかけになっていると思うとすごいことをしたんだなぁと思う。
  • マレーシアの人は日本のことを本当にたくさん知っているんだなぁと思った。でも野球を知らないなんて、それぞれの国で好き嫌いがあるんだろうな。

先生の感想

子どもたちのやる気が継続され、どんどん膨らんできたことでこれだけのプロジェクトになったと思います。具体的な相手が見つかったことも影響はありますが、日本文化を学ぼうと言い出したのは子どもたちでした。
主体的にする学習が叶ったと思います。この学習では教師は単なるお手伝いでしたし、生きた勉強ができました。
国際理解教育の最大のねらいとしては共通点を見出すことはもちろんですが、差異点を認めるという寛容の精神に迫れました。自分からマレーシアのことを知ろうとしていく過程で、異文化に親しみを感じ、受け入れる下地ができたと思います。
机上の勉強だけでなく、主体的に学ぶことができればそれだけ異文化に対する理解がよりスムーズに、深く学習することができるのではないかと実感しました。

みんぱく担当者の感想

「みんぱっく」に出会ったことで、こんなにも充実した学習をなさったことを伺い、とても感動しました。また、「みんぱっく」を使った学習は、まだまだ様々な広がり方があると可能性を感じました。山田先生のお話のなかでも、「みんぱっく」をモデルに、各地域(都道府県)の小学校で「地域版みんぱっく」を作って、学校同士で交換できたら面白いのではないかという提案もありました。

新しいアイデアがありましたら、ぜひ担当者にお知らせいただければ幸いです。