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特別展「先住民の宝」内覧会挨拶

皆さん、こんにちは。館長の吉田ございます。今日は、ようこそお越しくださいました。
大変、長らくお待たせしました。
当初、今年の3月19日にオープンする予定でしたこの特別展「先住民の宝」は、新型コロナウイルス感染症の拡大のため、開幕を延期し、明日10月1日から開幕となりました。3月の段階ですでに展示は完成し、いつ皆さんにご覧いただいても良い状態になっていたのですが、ようやく、皆さんにご覧いただけることになりました。
コロナウイルス感染症の収束がまだ見えない中で、内覧会は、いつもと違い、このように報道関係の皆さまだけを対象にしたものになりましたが、明日から、来館者の皆さんにご覧いただけるということを、今、素直にうれしく思っております。

今、世界の「先住民族」と呼ばれている人びとのあいだで、古くから継承されてきた文化や言語が消滅の危機にさらされる一方で、それらの「伝統」を集団のアイデンティティの核として改めて見直し、あるいは復興することで、民族としての誇りを育んでいこうという活動が活発化してきています【写真1挿入】。

私たち国立民族学博物館(みんぱく)が蓄積してきた標本資料の総数は34万5千点を数えます。これは、20世紀後半以降に築かれた民族誌関係のコレクションとしては、世界最大の規模のものとなります。そのなかには、世界の先住民族が、自らの「宝」と位置づけるような資料も多く含まれています。今回の特別展は、そうした、「先住民の宝」を広く日本の皆さまにご紹介するとともに、世界各地の先住民コミュニティの人びとにむけてもみんぱくのコレクションの情報を発信し、いわばこのコレクションを「共有」の財産として、将来の共同研究や共同作業に向けた礎(いしずえ)にしようとして、企画されました。

現在、世界各地で、「先住民族としての権利」の主張が拡がりを見せています。日本においても、昨年2019年4月に、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」が成立し、そのなかで、アイヌ民族が日本の「先住民族」と初めて明記されました。また、本年2020年4月には、その法律に基づいて、北海道・白老に、国立アイヌ民族博物館と民族共生公園から構成される「民族共生象徴空間」(ウポポイ)が、こちらも開幕が延期されていましたが、7月12日に開業しています。今、世界の先住民族が誇りをもって生きることのできる社会を、どう実現し、維持していくかが、地球規模で問われています【写真2挿入】。

皆さんのすぐ左手には、当初の予定では、この特別展の春の開催時期に合わせて、立ち上げる予定であった新しいトーテムポールがそびえています。この特別展を会期中見守ってくれることだと思います。製作してくれたアーティストのビル・ヘンダーソン三も、ひときわこのトーテムポールを気に入り、誇りに思っているようです。このトーテムポールも、カナダ先住民の宝のひとつと言って良いでしょう。

今回の特別展「先住民の宝」が、世界の先住民族の歴史と現在に改めて目を向けるとともに、それぞれの社会で継承されてきた「宝」の豊かさと未来に向けた可能性について考える契機となることを願っております。

今回の特別展の実現に向けては、さまざまな形で、多くの機関、多くの皆さまからご助力をいただきました。ご支援を賜りました皆さまに厚く御礼を申しあげますとともに、この特別展が一人でも多くの皆さまにご覧いただけることを願っております。どうぞよろしくお願いいたします。

館長あいさつ
写真1:館長あいさつ
特別展「先住民の宝」のポスター
写真2:特別展「先住民の宝」のポスター

館長の活動の一端を館長室がご紹介します

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