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特別展「Homō loquēns 「しゃべるヒト」~ことばの不思議を科学する~」の開会式・特別内覧会挨拶

2022年8月31日に特別展「Homō loquēns 「しゃべるヒト」~ことばの不思議を科学する~」の開会式・特別内覧会がおこなわれ、館長が冒頭のごあいさつを致しました。

挨拶をする館長

「みなさん、今日は。本日は、コロナ禍のなか、ようこそ、この特別展「Homō loquēns 『しゃべるヒト』―ことばの不思議を科学する」の開会式・内覧会にお越しくださいました。有り難うございます。
新型コロナウイルス感染症の地球規模での拡大の下、わたくしたち民博の特別展の開会式・内覧会も、こうして、ご招待の皆さまと直接お目にかかれる形式で開催させていただけるのは、3年ぶりということになります。本日はこうして多数の皆さまにご参集いただき、少し大げさですが、感無量の思いがいたしております。
さて、わたしたち現生人類は、学名で、ホモ・サピエンスHomo sapiensと呼ばれます。ラテン語で「ヒト属の知恵をもった種」の意味で、カール・フォン・リンネが考案した呼び名です。「賢いヒト」「知恵のあるヒト」「考えるヒト」とも訳されます。
現生人類については、このほか、ホモ・ファーベル、ホモ・ルーデンス、ホモ・シンボリクスなど、人類の特定の活動に、他の動物とは区別されるヒトの本質を見てとり、その見方に基づいたいくつもの呼び名が提唱されてきました。
ホモ・ファーベルは、アンリ=ルイ・ベルクソンによって提唱されたもので、「道具を作る人」。
ホモ・ルーデンスは、ヨハン・ホインジンガによって提唱された呼び名で「遊ぶヒト」。
ホモ・シンボリクスはエルンスト・カッシーラーによって提唱された呼び名で、「象徴を操るヒト」の意味です。
それぞれ、モノを作ること、遊びの中から文化を生み出すこと、言葉を含む象徴を操って他者や外界に働きかけることに、ヒトの本質を認め、ヒトの呼び名としたものです。
今回の特別展のタイトルは「Homō loquēns 『しゃべるヒト』―ことばの不思議を科学する」です。ホモ・ロクエンスという語を前面に出したこのタイトルは、「しゃべる」こと、つまり高度な言葉を用いて、相互にコミュニケーションをはかることこそ、他の生物にはない人類の特徴だという考え方に基づいています。
展示の中では、
「人間のことばと動物のコミュニケ―ションの違いは何?」
「そもそもヒトはどうやってことばを身につけているの?」
「言葉をはなすとき、ヒトの脳はどうなっているの?」
「機械は人間のことばをどう操るの?」
「手話言語と音声言語はなにが同じでなにが違うの?」
など、私たちが日ごろ気にかけずに済ませていることばの仕組みやことばの多様なありかたに改めて目を向け、言語学をはじめ、文化人類学、工学、教育学、脳科学、認知心理学等の120名を超える国内外の研究者が協力して、その不思議を解き明かしていきます。
そこには、ヒトの操ることばについて、そしてヒトについて、いくつもの新たな「発見」があるはずです。
この特別展では、手話も音声言語とならぶ、ヒトの生み出す多様な言語のひとつだという考えから、すべての展示に、手話の動画による解説が、モニターを使って提供されています。
見渡す限り、動画のモニターが並ぶ展示室の光景は、壮観ですらありますが、それは、今、博物館や美術館に求められている多言語対応のひとつのあるべき姿がそこで実現していると言えるようにも思います。
この特別展で、ことばの不思議を振り返ることを通じて、ヒトの言語についての理解が深まり、多様な言語のあり方についての共感が広がることを願っています。
今回の特別展の開催にあたりましては、さまざまな言語の発話をはじめ、展示装置の開発や展示映像の製作など、数多くの機関や個人の方々から多大なご協力をいただきました。
この展示は、分野を超えた 協働・共創の賜物です。
あまりに多くの皆様のお力添えをいただいておりますため、そのお名前をここで申し上げられないのが残念ですが、お力添えを賜りました皆さまに、この場をお借りして、心より御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。」

参列された皆さまには、その後、特別展の展示をご覧いただきました。

挨拶をする館長

沢山の皆さまにご参列いただき、ありがとうございました。

館長の活動の一端を館長室がご紹介します

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