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邂逅する写真たち――モンゴルの若者の100年前と今

突然だが、下の二枚の写真を見比べてほしい。モンゴルと言えば、どちらのイメージが我々にとってなじみ深いだろうか。おそらく写真1だという方がほとんどであろう。

実は、写真1は、フィンランドの探検家サカリ・パルシが1909年に撮影したゲルの前のモンゴルの若い夫婦の写真だ。一方、写真2は、現代モンゴルのドキュメンタリー写真家B. インジナーシが2017年に撮影したロックコンサートでヘッドバンキングする若者たちの姿だ。かつての遊牧民たちは、今やロックコンサートの爆音に首を縦に振り続けている。

現在みんぱくで開催中の特別展「邂逅する写真たち-モンゴルの100年前と今」(2022年3月17日-5月31日)は、その名のとおり、100年前の写真と現在の写真たちが特別展会場で出逢うというものである。およそ100年前、多くの探検家たちが中央アジアを目指し、モンゴルに到達した。探検家たちは多くの写真を残し、現在に伝えている。翻って現在、研究者はもちろん現代のモンゴルの写真家たちも自らの社会を見つめ、写真で表現するようになった。100年前の欧米を中心とした探検家たちが残した「辺境」モンゴルに対するまなざしと、現代モンゴル人の自らの社会に対するまなざし。本展示は、こうした写真をめぐる100年の時空を越えた邂逅-出逢い-をテーマに展示するものである。

この特別展では、モンゴルとの新たな「邂逅」-出逢い-もテーマにしている。写真2を見てわかるとおり、ロック少年たちは我々日本人にはあまりなじみのないモンゴル人像だといえよう。なぜなら日本では、モンゴルと言えば「遊牧民」「大草原」「モンゴル相撲」といったイメージが強いからだ。しかし現在、モンゴル国において、遊牧民の人口はもはや9%に過ぎない。そして首都ウランバートルには、この国の総人口の約半分(160万人)が集中している。

そう、我々はそろそろモンゴルイメージを更新する時期に来ているのではないだろうか。この特別展では、都市としてのモンゴルという新しいイメージとの出逢いも待っている。現地の写真家B. インジナーシのレンズを通して見る、グローバル化する首都ウランバートルの姿はきっと胸躍る体験に違いない。

島村一平(国立民族学博物館准教授)

関連ウェブサイト

日本・モンゴル外交関係樹立50周年記念特別展「邂逅する写真たち――モンゴルの100年前と今」



関連写真

写真1) ゲルの前に立つモンゴル人夫婦 
1909年 サカリ・パルシ撮影 フィンランド文化遺産庁民俗学画像コレクション© The Finnish Heritage Agency


写真2) グランジロックのバンド「ニスバニス」のライブでヘッドバンキングする若者たち
2017年 B. インジナーシ撮影 ⒸInjinaash, Bor