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島世界と海のあるくらし――ヒトと魚の知恵比べ

みんぱくでは、9月8日から企画展、『海のくらしアート展―モノから見る東南アジアとオセアニア』が開催中です。

東南アジアやオセアニアの島世界には、海と密接に関わりながら生きてきた人びとのくらしが営まれてきました。その長い歴史のなかで、漁具や舟は日常的に利用され、洗練されてきました。この企画展では、本館が所蔵する多彩な釣り針や網具、あるいは美しい貝製装飾品や櫂、カヌーを加工する石斧や貝斧、そして本邦初公開となる龍や鷲の姿をした舟たちを紹介しています。

この企画展の楽しみ方は色々ありますが、一つ注目してもらいたいのは、様々な漁具を映像や実際にその漁具で捕獲できる魚や海洋生物と一緒に展示している点です。たとえば釣り針のコーナーでは、主に釣り漁でよく捕られる南の魚たちを実寸大で観ることができます。一方、オセアニアのユニークな漁法ではサメ釣り漁やトビウオ漁、タコ漁などについて、その独特な捕獲法を映像やパネルで分かり易く紹介しています。

釣り糸と釣り針、そしてココヤシの殻で作ったガラガラと音のなる道具。そんなシンプルな漁具とカヌーだけで、全長2メートルを超えるサメをあっさりと捕獲するおじさんや、ネズミに似せた貝の疑似餌でタコを捕るおじさん。映像を観ることで、オセアニアの人びとが、いかにサメやタコの習性にあわせてこうした漁具や漁法を生み出してきたかが理解できる仕掛けになっています。

今回ご紹介したのは、企画展の中のほんの一例。龍や鷲の姿をした舟の秘密やお金としての価値も持っていた貝の装飾品など、それぞれのモノが持つエピソードや魅力とともに、本企画展を楽しんでもらえると嬉しいです。

小野林太郎(国立民族学博物館准教授)

関連ウェブサイト

企画展「海のくらしアート展――モノからみる東南アジアとオセアニア」



関連写真

企画展の入り口風景


ユニークな漁法を捕獲される海洋生物とともに展示


竜頭舟と鳥の神様ガルーダを模したマレーシアの舟