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『スーホの白い馬』を中心とした総合的な学習

Let’s みんぱっく!!-活用例-

東京都立鹿本学園

今回は一つのパックを複数の単元で利用された学校をご紹介します。それぞれの単元ごとにテーマや使用する資料を変えて、うまく活用されています。
【この記事は学校からいただいたレポートと写真をもとに構成しています】

パック利用期間 2020年9月23日~9月30日
利用したパック モンゴル 草原のかおりをたのしむ
学年 肢体不自由教育部門 小学部5年生
利用科目 国語・算数、生活単元学習、音楽、体育

学習単元とねらい

国語・算数/ 物語『スーホの白い馬』

物語の中に出てくる楽器に興味・関心をもち、聴いたり鳴らしたりすることにより、物語の理解を深める。

生活単元学習/「モンゴルの民族衣装を身に着けてみよう」

モンゴルの民族衣装を身に着けて、みんなの前で披露することで、外国の文化を体験する。

音楽/「馬頭琴にチャレンジ!」

外国の弦楽器に触れる、鳴らす、聴く等を通じて、外国の音楽を感じる。

体育/「(モンゴル)相撲を見よう、やってみよう!」

モンゴル相撲を模したものを見たりおこなったりすることにより、相撲を体験し楽しむ。

授業全体のながれ

全体の授業数・・・13回(1回45分)

  • 国語・算数/物語『スーホの白い馬』(全10回)
  • 第1~3回 木馬に乗ろう

    第4~6回 馬頭琴を体験しよう

    第7~9回 模擬競馬で競走しよう

    第10回  まとめ

  • 生活単元学習/「モンゴルの民族衣装を身に着けてみよう」(全1回)
  • 音楽/「馬頭琴にチャレンジ!」(全1回)
  • 体育/「(モンゴル)相撲を見よう、やってみよう!」(全1回)

授業の内容

国語・算数:物語『スーホの白い馬』(全10 回)

みんぱっくを活用する中心となる教科です。物語にからめて使用します。

物語『スーホの白い馬』を題材に、全10回の授業を7名の児童で行いました。
絵本『スーホの白い馬』の内容から抜粋した文章の朗読をタブレット端末で録画し、毎時間大型モニターで映しました。子どもたちがストーリーを理解しやすくするため、以下のように工夫しました。

 録画をパートで区切って視聴する。
 「モンゴル」「スーホ(男の子)」「白い馬」「競馬」「馬頭琴」など、物語を理解する上でポイントとなるいくつかのキーワードを提示する。
 再現遊び(木馬にまたがり揺れる、馬頭琴を鳴らす、競馬を模して競走する、など)をおこない、体験をとおして学ぶことを重視する。

また、馬の走る様子を「ぱっぱか、ぱっぱか、ぱっぱか」と擬声・擬態語で表現して繰り返したり、童謡『お馬はみんな』を聴いたりして、子どもたちが楽しく学習できるようにしました。前項の「授業全体のながれ」で記したように、単元『スーホの白い馬』全10回を、4つの小単元に分けて実施しました。その中の第5回と第6回で、馬頭琴を使用しました。その前の第4回の授業において、YouTubeで馬頭琴の演奏動画を視聴し、予習をしてから臨みました。
実物の馬頭琴は、おおよそ以下のような流れで子どもたちに提示しました。

 ①見る  ②触る  ③指や手で弦を弾く  ④弓を使って弦をこする、弾く

モンゴルの楽器

子どもたちは馬頭琴を見つめたり、手を伸ばして触れたりするうちに、初めての楽器に対してゆっくりと親和性を感じていくようでした。本体の空洞になっている部分を手のひらで軽くたたいたり、上部の馬の頭の彫刻部分を手で触ったりと、その子どもなりにどのような物か確かめているようでした。
「手指で弾く」では、指を弦に対してひっかけるようにしたり、指を伸ばして平らな手で弦をなでたりして、実際に弦を振動させて音を出すことにチャレンジしました。「弓でこする、弾く」では、弓を握って弦の上から軽くたたいたり、なかには弓をスライドさせて弦をこすり、上手に音を鳴らすことができる児童もいました。
単元の第1回から4回の学習の中で『スーホの白い馬』のストーリーを学び、馬と馬頭琴という楽器のつながりについて学習をしてきたことも、スムーズに実物の馬頭琴の学習につながった要因のように思います。

生活単元学習:「モンゴルの民族衣装を身に着けてみよう」(全1 回)

モンゴルの民族衣装を着てファッションショーをおこないました

モンゴルの国旗

まず初めに草原やゲル、馬などモンゴルの象徴とも言えるものを大型モニターに映し出し、モンゴルへの期待感を高めました。次にモンゴルの国旗を子どもたちに提示しました。大きな布製で提示しやすく、色彩もはっきりしていたので子どもたちも興味をもって見ることができました。
ファッションショーの始まりには、教員が民族衣装を着用して登場しました。きらびやかで鮮やかなデザインの衣装はこれまで目にしたことがなく、子どもたちは皆釘付けでした。たくさんある衣装の中から自分たちが気に入ったものを選び、実際に着用する場面は、子どもたちだけでなく教員も楽しい時間でした。一人ずつモンゴル国旗の前で記念撮影をしました。
授業の後半では、一人一人の記念写真を大型モニターに映し出し、みんなでファッションショーを振り返りました。大小さまざまな衣装や小物があり、子どもたちと相談しながら好きな物を選ぶ過程は素晴らしいコミュニケーションの場となりました。また、普段滅多に目にすることのない外国の民族衣装を実際に着用できる機会は、子どもたちにとって大変貴重な経験となりました。

モンゴルの衣装

音楽:「馬頭琴にチャレンジ!」(全1 回)

馬頭琴を見て、触れて、自分の力で音を鳴らす活動を中心におこないました

モンゴルの楽器

まず初めに馬頭琴を一人一人の前に提示しました。初めて見る楽器に興味をもつ子どもたちがたくさんいました。特に馬の頭の彫刻部分は「何だろう?」と考えた表情でじーっと見続ける子もいました。教員が弓を使って馬頭琴を演奏すると、その音や音の響きが心地よく、表情で好きな音色であることを伝えてくれる子どもたちもいました。
そして一人一人が馬頭琴を体験しました。まずは弦を指先で弾いて音を鳴らしました。子どもたちのわずかな力でも、簡単に音が鳴るので、自分で鳴らすことができた達成感を味わうことができました。
次に弓を使いました。弓を使うと、さらに大きく、長い音を出すことができました。先生と一緒に弓でこすりながら動かしていくと、最後には自分の力で馬頭琴を演奏できるようになった子どももいました。初めて体験した楽器でしたが、初めて見た楽器、初めて聴いた音にみんなが興味をもって活動ができたことが本当に良かったと思います。友達が演奏する音や演奏する姿にも、いつもより興味深く注目している姿もたくさん見られました。外国の本物の楽器を体験することで、子どもたちが新たな発見やおもしろさに気付くことができたと感じました。

モンゴルの楽器

体育:「(モンゴル)相撲を見よう、やってみよう!」(全1 回)

モンゴル相撲の雰囲気を味わうことをねらいに活動しました

モンゴルの相撲

日本の相撲との違いが子どもたちに分かりやすいように、今回みんぱっくでお借りしたユニフォームを参考に、教員が着られる大きさの簡易ユニフォームを作成しました。モンゴルの曲をBGMに流しながら、モンゴル相撲の選手に扮した教員が登場してデモンストレーションをおこなうと、子どもたちがとても注目して見ている姿がありました。迫力満点の試合を見て、「やってみたい!」と興味津々な気持ちを伝えてくれる子もいました。
そして、子どもたちも選手になりきってモンゴル相撲を体験しました。選手に扮した教員相手に、それぞれの子どもたちができる方法で戦いました。相撲はこれまでも体育の授業で取り組んだことがありますが、モンゴル相撲は今回が初めての子どもたち。モンゴル相撲の特徴を取り入れ、見事勝利できると、帽子を被ったり負けた教員がわきの下をとおったりしました。満足気な様子や不思議そうな様子など、いろいろな反応が見られました。普段の生活では体験できない経験をすることができ、子どもたちにとって刺激的な時間になったと思います。

先生の感想

都立鹿本学園/ 市川智道先生

国立民族学博物館のサイトから、みんぱっくを知りました。「モンゴルーー草原のかおりをたのしむ」は、物語『スーホの白い馬』のテーマである馬頭琴の実物が入っているものでした。また、モンゴルの衣類、国旗などが入っていて、子どもたちが実物を触ったり、聴いたり、着用したりすることができ、物語の舞台であるモンゴルという国を知る点でも、大変効果的でした。
子どもたちは実物に出会うことを通じて、言葉だけでは分からないことを体験をとおして感じとっているようでした。文字や話し言葉、あるいは映像などによっても伝わるものはありますが、実物のもっている雰囲気は独特のものがありました。授業をおこなう教員の方でもそういったことを感じた感動が子どもたちにも伝わり、相乗効果もあったように思います。
今回は、国語・算数の授業で単元『スーホの白い馬』を先行して学習し、途中からみんぱっくを借用しました。その借用期間である約1週間の間に、生活単元学習や音楽、体育などほかの教科も連携して単元を設定し、総合的に学習を進めました。
子どもたちも、多様な教科で集中してモンゴルという外国の異文化に触れることができ、笑顔がたくさん見られてよかったです。どうもありがとうございました。