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特別展「復興を支える地域の文化―3.11から10年」 内覧会挨拶

3.11、東北地方太平洋岸を巨大津波が襲った東日本大震災から、ちょうど10年が経ちました。被災地では、海岸の土地のかさ上げや住宅の再建などインフラの整備は最終段階に入ったようです。ようやく、復興の実が見えてきたと言えるでしょうか。

震災の直後、地域コミュニティそのものの存続があやぶまれるなかで、被災地では例年以上に祭りや芸能の奉納が活発に行われました。それは、人間の「生」にとっての、有形・無形の文化遺産の価値を改めて認識させられる出来事でした。

震災からの復興にあたっても、地域の文化は、人びとの結束のよすがとなり、また新たな地域コミュニティを立ち上げていく上での原動力の役割を果たしました。自らが住む土地とその文化に愛着と誇りをもててこそ、人はその地を襲うさまざまな困難に立ち向かっていくことができるのでしょ。

写真1:館長あいさつ

一方で、こうした文化遺産の復興の背後には、さまざまな形の復興支援がありました。私たち国立民族学博物館も、同じ人間文化研究機構に属する国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、総合地球環境学研究所などと連携し、復興の支援に関わってきました。

この特別展「復興を支える地域の文化―3.11から10年」では、復興とその支援のプロセスを振り返りながら、人びとの生活復興、コミュニティの存続と再生にとっての有形・無形の文化遺産の重要性をみつめなおすと同時に、災害の経験を、次の世代にいかに継承し、より安全な社会をいかに築き上げていくのかを考えます。

写真2:特別展「先住民の宝」のポスター

世界は今、うち続く災害にみまわれています。この災害の経験と、災害からの復興の経験を、次の世代に伝え、安全な社会を築き上げる礎にすることは、この時代に居合わせた、私たち一人ひとりに課せられた課題だと思われます。
今回の特別展「復興を支える地域の文化―3.11から10年」が、私たちにとっての文化遺産の意義を改めて確認するとともに、未来に向けた地域の文化の継承のあり方を考える契機となればと願っています。

この特別展の実現にあたっては、東北地方の岩手、宮城、福島の三県をはじめ、熊本県、和歌山県などの多数の機関、団体、個人の方々から、資料の提供を含め、多大なご協力を賜りました。また、展示の企画においては、東北歴史博物館や人間文化研究機構の構成諸機関をはじめ、幾多の機関と研究者の方々にご尽力を得ました。あまりに多くの方がたのお力添えをいただいたため、ここにそのすべてのお名前を申し上げることができません。ご協力いただいた皆さまを改めて想起しつつ、ここに深甚なる感謝の意を表させていただきます。ありがとうございました。 

2021年3月3日

国立民族学博物館長 吉田憲司

館長の活動の一端を館長室がご紹介します

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