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特別展「ユニバーサル・ミュージアム―さわる!“触”の大博覧会」開催にあたってのごあいさつ

みなさん、今日は、コロナ禍の中、ようこそ、この特別展、「ユニバーサル・ミュージアム―さわる!“触”の大博覧会」の、報道関係者向けの内覧会にお越しくださいまして、有り難うございます。

ミュージアムという装置は、その成立時から、人間のさまざまな感覚の中でも視覚だけを特権化するかたちで営まれてきました。「観覧者」という言葉づかいや、「作品に手を触れないでください」という展示場でよくみる但し書きが、そのことを明確に物語っています。

今回の特別展「ユニバーサル・ミュージアム―さわる!“触”の大博覧会」は、少し大上段に構えて申しますと、こうした視覚偏重のミュージアムという制度、あるいはそのミュージアムを生み出した近代という制度に対する挑戦であり、触覚の復権を強く訴えるものであるといえます。

ただ、ここでいう「ユニバーサル・ミュージアム」という言葉については、あらかじめお断りしておかなければならないことがあります。「ユニバーサル・ミュージアム」という用語は、英語由来の語ですが、英語では、universal museum というのはuniversal survey museum, つまり世界全体を俯瞰し探究する総合博物館・美術館をさす言葉だという点です。

とはいえ、今回の特別展の実行委員長である、本館の広瀬浩二郎准教授の活躍もあって、日本では、すでに、誰もが楽しめる、安心して利用できるミュージアムという意味でユニバーサル・ミュージアムという言葉が久しく使われ、定着してきているという状況がみられます。みんぱくの特別展のタイトルに、あえてその「ユニバーサル・ミュージアム」という語を用い、その英語名にも“”をつけて”Universal Museum”と表記したのは、日本発の「ユニバーサル・ミュージアム」という概念をこれから世界に向けて発信し、英語圏での語用そのものを転換させようという、この特別展の強い意志と熱意の表れにほかなりません。

今回の特別展には、その趣旨に共感・賛同して、多くのアーティストの皆さんが参加してくださいました。その結果、この特別展は、既成の価値観や認識の枠組みを超えて、現代における芸術の可能性を探る試みにもなっています。

図らずも、この特別展は、新型コロナウイルス感染症の地球規模での流行のもと、人と人との直接の「触れあい」が敬遠されるなかで、開催されることとなりました。この状況のもとで、「触」に焦点を当てた展示を開くことは、この特別展の挑戦の意義と重みをいやがおうにも増すとともに、開催する私どもの責任をより大きくするものと自覚しております。

感染の防止には最大限の対策を講じてまいります。ご来場の皆さまには、展示場内の各セクションでの手指の消毒や、周りの方と十分な距離を取っていただくことなど、さまざまなお願いをし、ご不便をおかけすることになりますが、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。

特別展「ユニバーサル・ミュージアム―さわる!“触”の大博覧会」を通じて、触覚をはじめとする人間の感覚のありかたを改めて問い直し、「ユニバーサル・ミュージアム」と「ユニバーサルな社会」の実現に私たちが一歩でも近づけることを期待しております。

今回の特別展の開催にあたりましては、ご参加いただいたアーティストの皆さまをはじめ、多くの機関、個人の方々から多大なご協力とご支援をいただきました。お力添えを賜りました皆さまに、この場をお借りして、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

2021年9月

国立民族学博物館長 吉田憲司

写真1:館長あいさつ

写真2:特別展「ユニバーサル・ミュージアム」のポスター

館長の活動の一端を館長室がご紹介します

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