みんぱっく開発の経緯 ふれてはじまる知の営み

学習風景「みんぱっく」という言葉をはじめて聞いた人は、その音の響きからあたらしい宅配便かなにかとおもうかもしれない。じつはこれは民博が製作した、貸し出し専用の学習キットのことである。博物館がモノを貸すというのも奇異におもわれるかもしれない。しかしながら、もはや博物館がたんにふるいものやめずらしいものをしまっておくためだけの場所でないことは、世界中の博物館で常識となっている。これからの博物館は、その収積された知の財産を保全すると同時に活用していくための場所である。「みんぱっく」もそんなおもいをこめてつくられた。

「みんぱっく」が企画されるきっかけとなったのは、1998年度より民博で開始された学校への標本資料の貸し出しであった。モノを貸すということはそれほど簡単ではない。民博に収蔵されている標本資料は、いずれも現在の民族文化を物語る貴重な学術資料である。博物館や美術館といった専門家が常駐する施設に貸し出しをおこなうさいには、綿密な計画がたてられ、不測の事態にいつでも対処できるような準備がとられる。しかしながら、学校や一般のかたを相手にそうした煩雑な手続きをとるのはひじょうにむずかしい。

さらに、標本資料にはそれに関する情報、ソフトの部分がなければ、それを活用して異文化を理解するという作業の効果は激減する。しかしながら、民族の資料がもつ情報はそれぞれの地域の専門家や物質文化の専門家でなければ読みとれないようなたぐいのものもすくなくない。実際、標本を貸し出した先の学校の先生方や生徒の父兄からは、なんだかよくわからなかったという声がすくなからず寄せられた。貸し出す側と利用する側の双方にとって最善の形をとるひとつの方法として、触れて活用することを前提としたキットを企画するにいたったのは、こうした状況下では自然の流れであったといえる。

インターネット民族学研究開発センターでは、基礎的な調査をふまえて学習キットの試作品の開発と実験的運用に着手した。試作キットの製作に先立ち、トピックならびに地域の選定をおこなった。中学校の社会科の教科書に掲載されている地域をもとに、いくつかの候補地を選び、その地域を専門とする館内の研究者にキット製作の監修を依頼した。こうしていくつかの学習キットができあがった。そして、これらを「みんぱっく」と名づけたのである。

「みんぱっく」は基本的に、モノとそれに関する情報が書かれたカード、モノをとりまく社会に関する本やパンフレット、そして監修した研究者がみずから調査地で撮影した写真紙芝居で構成されている。つかい方のマニュアルははいっていない。これは、モノにまず触れて、そこから疑問や興味、関心を抱き、そしてみずからその疑問を解いたり、関心を深めてもらう道筋を、製作者側が規定したくなかったからである。「みんぱっく」はそうした知の営みのきっかけをあたえる道具であって、けっして教えること、学ぶことを強制するためのものではない。今後、「みんぱっく」を大いに利用していただくことによって、わたしたちは逆に、先生方や指導者の方々から、効果的なつかい方を教わり、それをほかの先生方と共有し、さらに内容を充実させていきたいとかんがえている。

野林厚志(民族学研究開発センター)